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2004.12.01

雨鱒の川

アミューズCQN。
磯村一路監督。玉木宏,綾瀬はるか主演。

小学生の心平は母と二人暮らし。今日も大好きな魚捕りに川へ向かう。幼馴染の小百合は耳が聞こえないが,不思議と心平とだけは心が通じ合い,いつも二人で遊んでいた。ある日,心平は川で大きくて綺麗な魚,雨鱒に出会う。雨鱒は逃げずに心平の心に語りかけてきた。すぐに雨鱒と友達になった心平は,小百合といっしょに毎日川で雨鱒と遊ぶようになる。するとある日,雨鱒がメスの雨鱒を連れてきた。結婚して上流の方に行くのだという。そんな雨鱒達に心平と小百合は自分達も結婚することを約束し,雨鱒にさよならをする。そして月日は流れ…。

この作品には実は結構期待してた。まだこれから観ようという方は読まないで下さい。

この心平の少年時代の物語と並行して大人になった心平と小百合の物語が描かれるのだが,この二つの物語が心の中でさっぱりシンクロしてこない。子供時代のエピソードでは,心平も小百合も元気で明るく,瑞々しい魅力でいっぱいなのに,大人になってからの心平と小百合はそんな子供時代の雰囲気はまるでなし。重く暗い。同じ人物が成長した姿とはとても思えない。だから素直に感情移入出来ない。大人になった心平が寡黙で絵を描くことに没頭するようになったのは,母の死という重大な事件があったから,と理解出来なくもないが,それにしては画での説明が足りなさすぎる。これは明らかに演出の失敗だ。子供時代と大人時代の二つのプロットは全体のストーリーの中で隔絶しており,その切り替えのテンポも悪いので,続けて観ていると退屈になってくる。子供時代の心平と小百合の純粋ゆえに結ばれる心の交流や雨鱒との出会い,母との思い出,幼い二人の結婚の誓いの純潔さ等,せっかく子供時代のプロットはとても魅力的に仕上がっていたのに,大人時代のプロットがこの程度の絡みでは厳しい。間違いなく脚本の構成力不足。大人になった二人にとっての,子供時代の雨鱒との結婚の誓いの重要性が描ききれていないので,心平が壁一面に雨鱒達の絵を一気に描き上げる際のほとばしる感情の高まりが伝わってこない。二人が川を筏で『駆け落ち』する,っていう展開もどうよ。川にこだわるところの説明が明らかに不足。クライマックスで『雨鱒』が重要なキーワードに(突然!)なってくるのだが,これも前述のとおり雨鱒との誓いの重要性が描ききれていないため,感動すべきところが不発に終わってしまうのである。
本当にもったいない作品だ。心平の母役の中谷美紀の熱演(僕的には中谷美紀が小学生の母役をやって,それが違和感なくハマっているのを観て,俺間違いなくオヤジになってしまったと思い知らされ冷や汗が出た)もあって,子供時代の物語だけ観ればとても良い魅力的な作品なのに,出来上がった一本の作品としてはどうしても評価は低くならざるをえない。とても残念な気持ちで映画館をあとにした。

追記。アミューズCQNは東京でいちばん新しいミニシアター。渋谷駅近くのお洒落なビルの中にあり,ちょっと贅沢な気分で鑑賞する2時間を堪能できる。東京という街では映画を観ることもひとつのファッションになるんだな。でも,冷静になってみると,たかが映画(本来,大衆娯楽たるべきもの)にそこまでの『雰囲気』や『気構え』が必要なのかと考えてしまう。僕がまだ幼かった頃,まだ町毎に残っていた小さな映画小屋達(これが本当に小さくて小汚いんだ)がとても懐かしく,またその幼少時代の思い出が愛おしく思えた。

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Comments

月の風さん,コメントありがとうございます。
丁寧にフォローしていただけて,自分の中で整理がやっとできつつあるような気がします。
北海道の雄大な大自然(夏・冬)をとても美しく観せてくれて,それが物語によくマッチしていたと思います。子供時代の瑞々しい物語。大人時代の玉木宏と綾瀬はるかの演技も悪くない。でも,どうしてもそのふたつの物語の隔絶感は拭えないんですよね。やっぱり脚本の構成力不足だと思います。作り手側にこだわりのある作品だと感じたので,もうひと工夫欲しかったですねえ。

Posted by: たつし | 2005.01.14 at 10:10 PM

こんちは。

子供から大人へなる過程がすっぽり抜けてますから、唐突な感じはどうしてもありますね。
なぜ、明るかった子供が寡黙なってしまったのか。

いつまでも、無邪気に遊んでいられない。
親はいないし、一人で生きていかなければならない。
まして、自分の好きな人は耳が聞こえないし、話せない。
という状況であれば、寡黙なるのも考えられなくはない。

恐らく、ここら辺が抜けてたのと、大人になってからの子供時代の関わりが薄かったから、この作品が退屈に思えてしまったのでしょう。
でも、そこをまで描いていくとただダラダラとした話になってしまうような気がします。
全体的にゆったりした話ですからね。
だから、あれはあれで良かったのでは。

Posted by: 月の風 | 2005.01.13 at 09:56 PM

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Tracked on 2005.01.13 at 10:05 PM

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