ヴィタール
アミューズCQN。
塚本晋也監督。浅野忠信主演。
交通事故で記憶をなくした博史は,なぜか医学書だけには興味をしめし,大学の医学部に入学する。やがて人体解剖の実習が始まり,博史は若い女性の遺体を解剖することになる。その遺体の解剖に没頭する博史だが,解剖を進めるにしたがってなくしていた記憶の断片が蘇ってくる…。
肉体と記憶をめぐる壮大な愛の物語。この作品はとても深く,マニアックで観る人を選ぶ作品だと思う。でも,観て損した気にはならなかった。『人体解剖』というとても魅力的なテーマがもたらす崇高で神秘的な世界にすっかりと引き込まれてしまった。浅野忠信があの独特のアクを全く排した演技で,記憶喪失になった男の『透明感』をよく引き出していてびっくりするほど感心した。この博史に同化していく自分を感じた時点で,この作品の世界観に完全にハマってしまっていたわけだ。
(以下,ネタバレです)
とは言え,人体解剖を通じて生命の尊厳と神秘を問うというテーマは理解できる。自分のかつての恋人の遺体を解剖していくことで,博史が『自分探し』をして,失われていた『愛』という感情を取り戻す,ってところまでは。で,そこから博史は何を得たのか。結局,この作品は最後に何を言いたいのか。その一番大切な主張はさっぱり伝わってこない。いや,伝わっている人には伝わっているのかもしれない。でも,僕には分からなかった。とても丁寧な作りに独特の演出。それだけに最後の説得力のある『ピリオド』が足らなかったと思うなあ。ま,もともと万人向けの作品ではないので,これでもよいかもしれないのだが。でも,なんだかんだ言っても見応えのある大人向けのとても出来の良い作品だと思う。


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