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2005.02.15

パッチギ!

アミューズCQN。
井筒和幸監督。塩谷瞬主演。

1968年の京都。高校2年生の康介は,敵対する朝鮮高校にサッカーの親善試合を申し込みに行き,そこで在日朝鮮人のキョンジャに一目惚れしてしまう。彼女のもてたい一心で,彼女が音楽室で演奏していた『イムジン河』をフォークギターで演奏できるようになろうと必死で練習する。だが,彼女の兄は朝鮮高校の番長のアンソンだった…。

W杯最終予選,北朝鮮戦を観戦した翌日の木曜日に,これ以上ないでしょっ,ってタイミングで旬の映画を観にいった。

まず,このレビュー書く前に,他の人のレビューは一切シャットアウトしてます。ぴあの公開日アンケートで1位だったのは知っているが,ほとんと素の状態で感想書きます。間違っていたらごめんなさい。

本作の監督は,井筒監督。TVや雑誌の毒舌批評でありとあらゆる映画を斬りまくっている人だ。僕は今まで井筒作品は観ていない。いわゆる平均点的作品すらも含めてボロクソに叩きのめすこの人の批評が好きになれなかったからだ。ほんなら自分はどれくらい立派な映画を撮れるのか,と。伸竜やらナイナイやらが主役の映画を撮っているとは知っていたが,その作品自体には食わず嫌いで全く興味がなかった。だから,まず井筒監督に謝らなければいけない。今までの食わず嫌い,すいませんでした。この作品は,いわゆる『王道』の作品だ。老若男女を問わず,鑑賞後に十分に満足できる出来栄えにきちんと作り込めてる。毒舌たれるだけの才能があることは十分理解できた作品だった。

(以下,全部ネタバレです)

確か予告編では『日本版ロミオとジュリエット』が謳い文句だったのだが,その本筋となるべき日本人の康介と在日t朝鮮人のキョンジャとの関係はそれほど大切ではない。日本の中での『在日』との共存関係というテーマは投げかけてはいるが,深くは掘り込んではいないし,答えを出しているわけでもない。いや,もちろんクライマックスシーンでは涙が出たし,素直に感動した。だが,なんか中途半端なエンディングを迎えたような鑑賞直後の印象だった。でも,そうではなかった。この作品はラブストーリーではないのだ。『1968年』,『フォークギター』,『在日』,『イムジン河』,『ケンカ』等のキーワードは掲げながら,政治的なメッセージを持った作品でもない。これは,世代を超えた普遍的な『十代の圧倒的なパワー』を崇拝した単純明快なプロットの作品,それを狙った作品なのだと思った。
作品名の『パッチギ』とは朝高の番長アンソンの必殺技の『頭突き』を意味するが,本来は『突き破る,乗り越える』という意味を持つらしい。なるほど!作品名から狙いが明確なのだ。
はっきり言って,普通の高校生で在日の人々の苦難の歴史も知らない(知らないことは罪ではない)康介にとっては,日本人も在日も関係ない。たまたま好きになったコが在日だっただけで,そのコにもてたいがためだけに,彼女が演奏していた『イムジン河』をフォークギターで演奏できるようになろうと必死で練習するし,彼女に会いたいがためだけに見ず知らずの在日の人々の宴の輪の中にいきなり飛び込んでいけるのである。少しでも彼女のことが知りたいためにハングル後も独学で勉強するし,彼女のかなりおっかない兄やその友人達とも交流を深めていくのである。そこには日本人と外国人との間の『壁=河』はない。なんだ,意外と簡単に乗り越えられるじゃん。確かに劇中で康介はキョンジャの前で鴨川を渡りきって告白する。しかし,さにあらず。そう思わせておいて,キョンジャに一言,『朝鮮人になれる?』と言わせて梯子を外す(実は康介はこの問いかけには答えていないのだが)。せっかく仲良しになった在日の友人の通夜の席で,年配の朝鮮人に在日の人々が乗り越えてきた苦難の過去と日本人の非を責め立てられる。康介の知らないところで『壁=河』はあったのだ。現実に打ちひしがれる康介は大切なギターを鴨川に捨ててしまう。どうすればいいのか分からなくなった康介は出演を依頼されていたラジオ番組で『イムジン河』を歌うようプロヂューサーから勧められる。戸惑いながらハングル語で歌いだす康介。歌い進むにつれて次第に不安が確信に変わる。『イムジン河』を日本語でも歌う康介。そして康介は決心する。『僕はこの河を越えてみせる』と…。その姿に素直に感動できるし,涙を誘うのだ。この独唱シーンに,アンソンの日本人の恋人の出産シーン,日朝混血の赤ん坊の誕生をかぶせる手法は,真に『王道』と言える。とにかく誰が観ても分かりやすい。単純だけど,これを実際やれ,と言われたら難しいだろう。井筒監督はかなりの高いレベルでそれを達成できている。そして,そのメッセージは普遍的だ。現代にシュチュエーションを置き換えても問題ない。だから素直に共感できるのだ。高校生や実年齢が康介達とかぶる世代,更にその上のおじいちゃんまで,誰が観てもそのメッセージを受け止めることができるだろう。エンディングは数年後の仲睦ましい康介とキョンジャの姿を軽く描いて終わる。とても軽やかで『河は簡単に越えられるよ』といった希望的なラストシーンだ。作品としてこの終わり方は悪くない。ただ現実問題として,約40年経った今も,あの頃と在日の人々をめぐる状況はあまり変わっていないという現実は忘れてはならない。『河を越える』のは,僕達の世代に託された使命なのだ。そういうメッセージも含まれたエンディングと捉えることにする。
あと,忘れてはならないのが,朝高のアンソン達と日本人高校生達との抗争の数々。繰り広げられるケンカ,ケンカ,ガチンコ対決の迫力とリアリティ。やったりやられたり,良い具合に日朝の関係を投射して物語のスパイスになっている。ボコボコにのした相手にコンクリ浴びせるという凝りようには拍手。結局,最後の鴨川でも集団乱闘でも,勝敗はつかなかった(台詞で仕切りなおしとなったことが明かされる)が,欲を言えば,台詞だけの説明ではなく,ボロボロになった両者が再戦を約束するシーンができれば画でほしかった。康介が歌う『イムジン河』により一層説得力を持たせたろうに。ここだけちょっと残念。

とにかく観てみてください。良い悪いを越えて,細かなこだわりを随所に感じさせながら独特のインパクトがあるなかなかの力作です。

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