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2005.07.23

HINOKIO

渋谷シネパレス2。秋山貴彦監督。本郷奏多,多部未華子,中村雅俊,原田美枝子,牧瀬里穂他出演。

ある日,クラスに転校生がやってくる。その転校生はなんとロボットだった。折りしも,不登校に対する新たな試みとして,本人が自宅からロボットを遠隔操作して登校する代理登校が始まったばかりだった。そのロボットの転校生は『岩本サトル』(本郷奏多)と名乗るが,ロボットの部品に檜が使われていることから,クラスメイトから『ヒノキオ』と呼ばれるようになる。サトルは『ヒノキオ』を介して,ガキ大将のジュン(多部未華子)達と仲良くなり,遊ぶようになるが…。

この映画のターゲットは大人ではなくて,主人公達と同世代の小学校高学年や中学生なのだと思う。この物語は彼らに語られる『お伽噺』である。少々,大人向けと認識するには,ストーリーの繋ぎに難があるし,脚本の詰めが甘い。だが,大人が観ても,作品中の現代の少年達はノスタルジックに描かれており,大人も引き込む普遍的な魅力を持っている。そういう意味では,『子供の頃の感情や考え方を見失っていない大人』や『子供を持つ大人』,または『小・中学生の子供と家族で観る大人』ならば,割と楽しめ,感動できる作品ではあると思う。そのどれもにあてはまらない僕は,確かに感動はできたが,少々この作品が持つ幼さが気になって引っかかってしまった。やはりもう少し,脚本が丁寧に作られていたら,もっと素直に感動できたのかもしれない。

さて,この作品の物語とは別のもうひとつの見所。それはVFX。とにかく,HINOKIOのCGを組み込んだ画面構成が素晴らしい出来栄えなのである。CGロボットというと,ハリウッド大作『アイ,ロボット』のダニーを思い出すが,その画と比べても何の遜色もない。むしろ,HINOKIOの方が立体感・材質感が際立っており,本当に隣に存在しているような親近感を覚える。実際,ジュン達との絡みのシーンでも全く違和感はない。実際の撮影はCGとコンピュータ上でデザインしたHINOKIOのデータを複雑な局面までを忠実に再現したプロップ(造形物,人形)を組み合わせて行っていたそうだが,普通に観ているだけでは,どれがCGでどれがプロップかは全く見分けがつかない。そのクオリティは相当に高い。最後にHINOKIOがサトルを背負って街中を走るシーンがあるのだが,どのような工夫をしてあのような画が撮れたのか,不思議でならない。この作品のような子供向け映画に最新の技術を投入している。この贅沢感,日本のVFX技術,なかなか恐るべし。

ジュン役の多部未華子が素晴らしく魅力的。最初はツンとしたガキ大将(もちろん男)と思っていたら,あるきっかけがあって,サトルはジュンが実は女であることを知る。観ているこちらもサトルと同様にドギマギで,少女を意識してしまう。そこからはジュンが美少女に見えてしまうから不思議だ。友情から初恋の芽生えへ。誰もが経験したこの懐かしい純粋な想いをこの作品では鮮やかに描き出している。ジュンがHINOKIOを抱きしめて,『サトルは俺のことが好きか?』と問いかけるシーンは秀逸。そうして,引きこもりのサトルは『人と接してみたい』と初めて望むようになり,少しずつ心情変化が起こり,成長していくのである。

(以下,ネタバレ)

しかし,終盤の,サトルがHINOKIOを介して自殺未遂を謀り,臨終の床で最愛の母と再会するシーンをなぜゲームの世界を背景にしたのか。ジュンは瀕死のサトルを救うために,ゲームの世界で起こる奇跡を信じてお化け煙突に登るが,なぜそれでサトルが救われるのか,大人には説明が足りず理解しがたい。ジュンがお化け煙突に登って,サトルを救うこと自体にはじーんとくるのだが。それに,あんな高い煙突からジュンは落ちるわけ(落ちる姿は天に向かって手を差し伸べ,救いを求めているように見えるが)だが,助かった理由が,友人達が『奇跡』と一言ですましてしまうのも,ちょっといかがなものか。サトルもジュンも第三者の力によって,命を救われたはずで,それをゲームのバーチャルな世界に繋げただけだとしたら,少し残念である。そこにある本当の深い意図が掴み辛かった。

この物語は,引きこもり少年の父親との隔絶と再生の物語でもある。転校することになったジュンを見送りにいくべく,昔の事故の後遺症で歩くことができないサトルをHINOKIOが背負って街中を走り,ジュンの乗った電車を追走して,サトルとジュンはさよならを言うことができたのだが,そのHINOKIOを操縦していたのが,父・薫(中村雅俊)というのは,父子の信頼関係の再生をシンプルに上手く描いている。

そして,エンディング。リハビリを終え,中学に進学したサトルは,HINOKIOを介してではなく,自身の足で登校し,クラスメイトの前できちんと自己紹介する。引きこもりからも卒業だ。きっとまた仲良しができることだろう。そして,校門で彼を待っていたのは…長い髪が綺麗ですっかり魅力的なセーラー服姿の少女に成長したジュン!改めてお互い自己紹介して握手する二人。見詰め合う二人の瞳に映るサトルとジュン。二人の気持ちの高揚感と,これから起こる素晴らしい出来事を連想させるかのように,二人から離れてカメラはどんどん空へ上がっていき,地球を離れ,そして遥か宇宙へ…。少年・少女達の無限の可能性を最高に上手く表現していた未来を感じてワクワクするエンディングだった。

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Tracked on 2005.07.23 at 08:29 PM

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