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2005.09.12

タッチ

新宿ジョイシネマ1。犬童一心監督。長澤まさみ,斉藤祥太,斉藤慶太主演。

達也(斉藤祥太)と和也(斉藤慶太)は双子の兄弟。隣に住む浅倉家の一人娘,南(長澤まさみ)とは同い年で,小さい頃からの幼馴染。南の夢は自分の高校が甲子園に行くこと。『南を甲子園に連れてって』という大好きな南の願いを叶えようと,和也は小さい頃から野球を続け,明青学園高校に入学,1年生ながらエースピッチャーとして活躍,地区予選も順調に勝ち進む。そんな弟の姿を見ながら,兄の達也(斉藤祥太)は自分も南のことが好きだという気持ちが次第に強くなっていく。そして,明青は勝ち進み,ついに決勝戦を迎えるが,その大事な試合にエースの和也が現れない。それは…。

他のレビュー一切見ずに,大阪帰りのその足で映画館に向かった。まず,最初に言っておかなければいけないのは,僕は『タッチ』の連載をリアルタイムで体験し,自分の中・高の青春時代に重ね合わせて成長してきた世代である。そして,『タッチ』はそんな僕にとっての,生涯一番の不朽不屈の名作漫画である。その思い入れは激しく,当時大人気だったアニメ版すらも,否定・嫌悪していた。あだち充の漫画の最大の特長は何と言ってもその『間の美学』である。吹き出し・台詞・擬音のないコマが語りかけてくる登場人物の溢れ出るような心の言葉達。本でいうと『行間を読む』,あの感覚。台詞がなくても,その思いが心にストレートに伝わり,素直にその人物に感情移入できる。あだち充の作品は本当にこの技巧が素晴らしいが,それに登場人物のキャラの強さや物語の魅力も加わり,『タッチ』はあだち充の最高傑作(あくまで僕評)となっているのである。

単行本は全26巻。これをまともに2時間に収めようとしたら,もうその時点で失敗だ。アニメが映画化された時だって,3部作だった。先に観た『NANA』は原作に忠実に映画化することで,作品的な魅力を出していたが,『タッチ』は原作に忠実に映画化したら,間違いなく失敗する。『浅倉南』みたいな神秘性のあるアイドルを実写化するのなんか不可能だし,達也のつかみ所のない性格と相反する底知れぬ才能を持つ奥の深いキャラを演じれる役者なんていないだろう。アニメですら裏切ってくれたのだから。映画館で配られているチラシで,達也が甲子園を目指すまでを描くと知った時から,この不安が増大。下手したら今年のワーストに入るかも,という恐れを抱きながら,映画館の席に着く。

で,感想。鑑賞後,裏切られた気持ちにはならなかった。感動とまでは言わないが,爽やかな気持ちになれた。台詞だけだけれど,ラストでちゃんとあの名台詞,『上杉達也は浅倉南を愛しています。世界中の誰よりも。』,これで締めてくれたことで,いろんなことに目を瞑れる。そう,この映画版『タッチ』はポイントは原作をリスペクトしているシーンはあるが,物語の構成としては,登場人物の設定以外は,原作には忠実ではない。なんと言っても,南ちゃんは新体操をしないし,何よりも達也は2年生の夏に新田に勝って甲子園の切符を勝ち取るのだから。原作ファンに言わせれば,めちゃくちゃな作りだが,2時間に纏めるために,割り切ってわざとやっていることなので,そういうものだと理解して観れば,裏切られた気はしない。その辺の割り切り感がとても潔いので,『こんなのタッチじゃないやい』などと怒る気にはなれない。そう,これは原作『タッチ』とは全く別の世界観を持つ実写版『タッチ』なのだ。ちなみに上演後,劇場のあちらこちらから拍手が起きていた。僕はもっと自分と同じ世代(三十代後半~四十代前半)がいると思ったが,意外と二十代前半のカップルが多かった。彼らはこの作品を観て,感動したのだろうか。彼らは原作を読んだことがあるのだろうか。裏切られた気分はしなかったし,ワーストに挙げる作品だとも思わない。しかし,拍手する作品だとは,リアルタイム世代としてはどうしても思えないのだけれど。

この作品は,浅倉南(長澤まさみ)が主人公だ。長澤まさみは,セカチューから1年半経つけど,あれからすごく綺麗になった。決して美人じゃないのに,手足が長くて,その雰囲気がとてもキュートで可愛らしい。今クールのドラマ,『ドラゴン桜』でも感じていたのだが,セカチューの時にはなかったオーラのようなものを感じる。この実写版『タッチ』が救われたのは,彼女の功績が大きい。原作の浅倉南になりきろうとせず,等身大の自分の魅力で勝負して,見事観衆のハートを射止めている。あえて南に似せなかった製作サイドの意図が成功している。

斉藤兄弟は野球経験者らしく,それぞれの投球フォームなどはなかなかなものだった。少なくとも,冬クールのドラマ『H2』の比呂役の山田孝之の投球フォームと比べれば,素人目には本格的に写る。出番も少なかったせいか,慶太の芝居の粗はそんなに目立っていなかった。自分の気持ちに潔く真っ直ぐな好青年・和也をそれなりに上手く演じていたと思う。問題は,達也役の祥太だ。達也はただでさえ複雑な分かりづらい性格設定だし,原作ではこれに『間の美学』が加わるのである。達也を演じるのはどんな役者でも至難の業。彼なりには頑張ったと思うが,『間の美学』までは表現できなかった。これは脚本や演出面での影響もあり,単純に祥太を責めるわけにはいかない。ただ,達也が和也に負けないくらい,底知れない才能を持っていたということと,和也に負けないくらいの努力を経て,決勝戦のマウンドに上がり,新田に投げ勝ったという過程をもっと丁寧に描いてほしかったと思う。これができていないので,達也のスーパーマン感がかなり薄まって,普通の人とほとんど変わらない印象なのはいただけないと思う。

実は,新田との最後の勝負の場面は,原作とは違う。達也は『達也として』,新田に渾身のストレートを投じ,三振に打ち取る。これは原作ファンにとっては賛否分かれるところだとは思うが,こちらの解釈を否定はしない。きっと亡き和也も,和也のコピー=達也が南を甲子園に連れていくのではなく,達也自身として南を連れていってほしかったと思うから。

僕にとって,やはり原作『タッチ』は不朽不屈で至高のものだ。だから,その感動に亜流である実写版が届くはずがない。この実写版に少したりなかったのは,原作が持つ『清純さ』と『ひたむきさ』と『思いやる心』だろうか。どれも,描こうとはしているが,描ききれていないのが,この作品に素直に感動した,と言えないところだろうか。でも,何度も言うが,裏切られた気分はない。原作を意識しなければ,爽やかな鑑賞感を味わえる作品だと思う。

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Comments

>ペンフレさん,更紗さん
了解です。でも,更紗さん推薦なので,是非観てみようと思います。

Posted by: たつし | 2005.09.17 at 07:20 PM

>ペンフレさん
 そうでした。派谷恵美でしたね。
手足の長さのイメージでダブってました(^^ゞ

>たつしさん
 長澤まさみは出ていませんが、いい映画なんでぜひ(笑)

Posted by: 更紗 | 2005.09.16 at 04:46 PM

ちょっと失礼。
非・バランスに長澤まさみは出演していないような…。
見落としだったらごめんなさい。

Posted by: ベンフレ | 2005.09.15 at 10:42 PM

>月の風さん
そうですねえ,達也のキャラが全然立ってなかったですね。それにしても,汗の匂いが全くしない野球の物語になってしまったのが残念です。

>更紗さん
万博ではどうもでした。アジアの大砲さんに感謝です。これからもよろしく。
さて,本作ですが,『駄作』かそうでないかと問われると,ブログではこう書いてますが実は難しいです。原作とは似て非なるもの,と念じて観た方がよいでしょう。しかし,長澤まさみのこの伸びシロには驚いています。『非バランス』,観てみようと思います。

>通りすがりさん
ご指摘ありがとうございます。変換ミスに気付きませんでした。ファンとしてお恥かしいかぎり…。

Posted by: たつし | 2005.09.13 at 08:15 PM

朝倉× 浅倉○
じゃないでしょうか?

Posted by: 通りすがり | 2005.09.13 at 07:01 PM

こんにちは、万博ではどうもm(__)m

ところで見に行こうと思っていながらも
パスってテレビ待ちにしたんですけど
駄作ではなかったようですね。

長澤まさみを初めて見た映画が
「非バランス」という映画でした。
このときから、楽しみな女優になりそうだと思っていましたが
ここに来てぐーんと伸びているのが嬉しいです。
もし未見でしたら、ぜひ「非バランス」ご覧になってみて下さい。

Posted by: 更紗 | 2005.09.13 at 12:29 PM

> この実写版に少したりなかったのは,原作が持つ『清純さ』と『ひたむきさ』と『思いやる心』だろうか。
時間的にやはり厳しかったのでは。
原作をマテリアルとして、新しく物語を作り上げていたのは認めますが、達也のキャラが...です。

Posted by: 月の風 | 2005.09.13 at 06:31 AM

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