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2005.10.27

シンデレラマン

新宿ピカデリー1。ロン・ハワード監督。ラッセル・クロウ主演。

前途有望なボクサーでタイトル奪取も目前であったジム(R・クロウ)は試合中の右手の骨折が原因で,勝利に見放され,ライセンスも剥奪,引退を余儀なくされる。折りしも時は,アメリカ大恐慌時代。愛する妻と3人の子供達のために,港湾労働者として日銭を稼ぐジム。そんな仕事にもありつけない日々が続き,収入がなくなると家賃も滞納し,ガスや電気も止められてしまう。苦悩の末,子供を預けようと言う妻・メイ(レネー・ゼルウィガー)の決断にも彼は耳を貸さず,家族がいっしょにいることに固執する。全てを失った今,家族だけが彼の全てで生きる理由であったからだ。そんな彼に転機が訪れる。昔の彼のマネジャーが,一夜限りのカムバック試合をマッチメイクしたのだ。ジムは再びリングに立つ。それが,奇跡の序章の始まりだった…。

破綻のない見応えのある作品だった。ストーリーは真にボクシング映画の王道。頂点に手が届きかけながらも,挫折し,そこから復活し,再び頂点を目指すという王道のプロットも無理がなく,重厚だ。ここに家族との愛情物語が絡んでくる。こちらのドラマ路線もしっかりと描けており,単なるボクシングファイトを楽しむ映画とは一線を画す。

主演のラッセル・クロウの演技が上手いのはもちろんのことで,安心して観れることは間違いないのだが,妻・メイ役のレネー・ゼルウィガーの演技が素晴らしい。弱々しく不安性のだが,芯は強く,夫と子供達を心から愛する妻役をじんわりとだが,絶妙に演技しているのが素晴らしい。こんな嫁さんなら,確かに守りたくなる。

(以下,ネタバレ)

だが,奇跡のカムバック後に勝利を重ね,ついにタイトルマッチに挑戦するまでの過程での,家族の絆がもっとしっかり描かれていたら,もっと感動して涙も出たかもしれない。家族は父の勝利を信じて家で待つだけである。タイトルマッチも,子供達が地下室に隠れて持ち込んだラジオを介して不安気に応援するだけなのだ。ここには伏線がある。ジムが試合前に妻に約束した言葉,『必ず帰る』だ。この言葉が,シンプルな演出だが,ラストシーンの達成感に満ちた感動に繋がっていく。このラストシーンの演出がシンプルだったのは,明らかに,ほのかなじんわりと心に響く感動を狙った確信犯だ。僕は,ジムはチャンピオンになったのだから,もっと盛大に盛り上げても良かったと思うのだが。まあ,ボクシングは感動的にするためのエッセンスで,主軸のテーマはこちらの家族愛の方なのだろう。

話としては,アメリカの大恐慌時代に,何の希望もなかったアメリカの人々の希望の象徴としてもジムは描かれているわけだが,ここら辺は少し工夫が欲しかった。マジソン・スクウェア・ガーデンの大観衆のカットとか,確かにお金をかけた見せ場はあるわけだけれど,アメリカの多く人々がなぜ彼を『シンデレラマン』として受け入れ,希望の糧として応援していたのかは,その繋がりがやや軽く印象が薄いので,このプロットでは感動できなかった。

良くできた脚本に,役者の名演技。それだけで鑑賞の価値のある作品ではある。だが,僕は,この作品中の『シンデレラマン』に100%感情移入できなかった。彼を応援した妻や家族,一般社会の人々の思い入れといっしょになって,作中の彼を応援できなかったからである。鑑賞後の感動の重さは,同じボクシング映画でも,『ミリオンダラー』の方が重かった。あちらは主人公がタイトルマッチに事故で敗れて,死を選択するという重いストーリーだったので,当たり前ではあるのだが。この作品は良い映画だけど,プロットがありふれているのが,最大のマイナス点だと感じる。良い映画を観た気にはさせてくれるが,人生に残る1本ではない。そんな感じかな。

しかし,ラッセル・クロウは本当に良い役者だ。いろんな役柄でいろんな味わいを魅せてくれる貴重な俳優の一人だ。次の作品も楽しみだ。

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Tracked on 2005.12.25 at 12:03 PM

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