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2005.11.07

この胸いっぱいの愛を

シネフロント。塩田明彦監督。伊藤英明,ミムラ主演。

2006年,30歳の比呂志(伊藤英明)は出張で,小学校時代を過ごした思い出の街・門司を訪れる。懐かしさに浸る比呂志の前にひとりの少年が飛び出してくる。その少年を見て驚く比呂志。それは『20年前の自分=ヒロ』だった。彼は自分が20年前にタイムスリップしたことに気付く。彼にはひとつ心残りの思い出があった。それは,近所に住んでいた『和美寝姉ちゃん(ミムラ)』のことだった。ヒロの友達だった和美は難病にかかっていたが,手術を拒否し,まもなく亡くなってしまったのだった。そんな比呂志の前に和美姉ちゃんが現れる。比呂志は和美姉ちゃんの命を救おうと決意する。

『黄泉がえり』のスタッフが二匹目のドジョウを狙った作品。『黄泉がえり』は,確かにバカ正直なくらい純粋な男を,いかにも人柄の良さそうな草なぎ剛が等身大で素で演じたため,それが思い人役の竹内結子の清純さと上手く融合され,少し甘酸っぱいラブストーリーに仕上がっていて,それが観た者に期待以上に爽やかな感動を呼び起こし,スマッシュヒットになったわけだ。今回もそのテイストを引き継いでおり,大好きな『和美姉ちゃん』を救おうという純粋な気持ち一本で,ヴァイオリンを弾けなくなり,病気の恐怖に犯され,半ば人生を諦めている和美にぶつかっていく。その必死さ,和美の人生を変えたいという直向さには素直に感情移入できる。ミムラも,今までの役にない,影を背負ったどちらかというと男っぽい性格の和美を好演。この作品で最大の発見は,いつもニコニコ笑顔の印象が強いミムラにこういう演技ができるのだということ。あの深みのある『目』が物凄く良かったし,印象的だった。彼女はこの役を経験して,演技の幅が広がったんじゃないかな。彼女のチャレンジは成功したと感じる。

しかし,肝心の物語の方は,プロットが薄っぺらで,全く重みがない。せっかく『生と死』の狭間に生きる人々の心情を語る話を描いているのに,その命に全く重みがないのだ。上っ面だけで,『感動させよう』,『泣かしてやろう』というのがミエミエで,その手には乗らないぞ,と逆に構えてしまう。それに,比呂志と和美のエピソード以外に,同じ飛行機に同乗していた3人のエピソードを加えたのも,そのプロットがペラペラで全く感動できない。逆にごちゃごちゃしてしまって,比呂志と和美のエピソード一本に絞った方がずっと良かったと思う。

(以下,ネタバレ)

比呂志の心の訴えは,和美を生の世界へと引き戻し,彼女は障害が残る恐れの高い手術を受けてでも生きようと決心する。そして,30年後の和美がラストで描かれ,彼女は障害で自由の利かない右手でも,必死でヴァイオリンを弾いて生活する姿。それは2006年,比呂志が門司へ向かう飛行機事故で亡くなったことを知った和美は未来から来た比呂志の想いの全てを理解し,比呂志の分も再び強く生きていこうと誓う…というラスト。これ,どうなんでしょう。和美の人生を変えたなら,比呂志の人生も変わってもよいはず。比呂志も飛行機事故を回避して,和美と結ばれる,というラストの方が万人に受け入れ易いし,素直に感動できると思う。それは,夢の世界で果たされるというのが,この映画のラストシーンであるのだが…。どう思いますか?ちなみに,帰りに本屋で原作本のラスト数ページを流し読みしてみると,ちゃんと比呂志が和美にプロポーズ?しているシーンで終わっている。やはりこっちのエンディングの方が良かったなあ。

ぐぐっと感動させてくれる作品と期待していただけに,このハズレ感は大きい。『愛』って言葉を安直に題名に使ってほしくないなあ。

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Tracked on 2005.11.07 at 11:45 PM

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