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2006.10.14

シュガー&スパイス~風味絶佳~

ワーナー・マイカル・シネマズ広島。中江功監督。柳楽優弥,沢尻エリカ主演。

高校を卒業した志郎(柳楽優弥)は大学に行く必要を感じず,”とりあえず”クルマ関係の仕事がしたいという理由で,ガソリンスタンドで働いていた。仕事にもようやく慣れてきた頃,新しいバイトとして乃里子(沢尻エリカ)が入ってくる。乃里子は年上の大学生に失恋した痛手を負っていたが,次第に志郎の優しさに癒され,二人の距離は近づいていく。そして,お互いの心は通じ合い,付き合うようになる。彼女との幸せな時間。志郎は生まれて初めて他人が自分の全てになったと感じた。そして,乃里子から『志郎が19になったら一緒に暮らそう』と提案される。これが『本当の恋』なのか。志郎は幸せの絶頂だったのだが,乃里子の心には変化が…。

柳楽君が実年齢16歳で19歳の役を演じるという難しい作品となった。自分の人生を振り返っても,高一で大学一年生の気持ちや考えは分からない。そういう意味では,彼は脚本から感じ取るイメージとスタッフからのアドバイスだけを頼りに19歳の志郎を演じ上げたのだと思う。原作の志郎は21歳の設定だが,柳楽君のために若干設定が変えられている。『高校を卒業して初めての恋,そして失恋…そして,男としての成長』とした方がインパクトがあるし,柳楽君が演じるにしてもぴったりの設定だ。そして,弱冠16歳の柳楽君は,いかにも彼らしい役作りでシャイで優しい19歳の志郎を作り上げ,不安定に振れながらも作品の中で志郎と同じように成長し,見事に演じきっている。これがこの作品の最大の見所だ。乃里子役の沢尻エリカは20歳なので,精神年齢を下げずに柳楽君に合わせ,志郎に寄り添う乃里子を演じるのはとても難しかったと思うが,年上の強気を抜いた控え気味の演技で,スタッフの演出協力もあり,うまく乗り切っている。二人が恋人に見えたこの時点でこの作品はある程度成功の域に達していると思う。鑑賞後の感想は『なんかテレビの2時間ドラマみたいなテイストやったなあ』だが,それを何とか映画作品に引き上げたのは柳楽君の存在だ。やはり柳楽君にはテレビタレント等とは違う彼独特の特別な存在感があり,柳楽君あっての志郎だし,柳楽君が主役を張る時点でそれはもう一本の立派な『映画作品』なのである。

原作では,志郎は何の前触れもなく,乃里子の心変わりの前に突然フラれる。詳しい理由の説明の描写は全くない。わざと淡々と描くことで,作者の山田詠美は『女の子の恋心に理由なんてない。そんなふうに移ろい易いものなのよ』といった感じでさっぱりと割り切って書かれている。映画では,グランマ(夏木マリ,怪演)の大昔の失恋と絡めて,乃里子の心変わりの理由の提示を用意しているが,それは映像化するために万人に乃里子の心変わりにもちゃんとした理由がある,と納得させるための作品としての演出だ。確かに物語に広がりと繋がりは出たが,僕は原作のように説明がましくなく,さっぱり描いてくれた方が,女の子の気持ちの本質,そして本当の恋に必要なもの,がもっと鮮明になってよかったのではないか,と思っている。さすがの沢尻エリカも,この乃里子の心変わりの心理表現については巧くできてなかった。演出不足のせいもあろうが,この辺がちょっと安易で『2時間ドラマ的なテイスト』になっている原因なのではないだろうか。

だから,『二人が幸せ絶頂の時まで』と『キャラメルの箱に書かれてあった文字(滋養豊富 風味絶佳)を見て,志郎がフラれた理由に気付き,本当の恋とはどんなものかを悟るラストシーン』の場面の描き方はとてもよかった。どちらもグランマの存在が絶妙のスパイスになっていた。そして,ラスト近くの最後に乃里子を自転車で追いかけるが追いつけず,自分が失ったものの大きさに気付いて声にならない声で泣き叫ぶ切ない志郎の姿にはジンときた。僕も恥ずかしながら,19歳の時に同じような経験をしたことがある。十代の恋とはそういう風に甘酸っぱく,切ないものだ。柳楽君に自分に重ねることができて,グッと作品に引き込まれたシーンだった。そして男は一歩大人への階段を上がれるんだよ。真に恋とは『シュガー&スパイス』。好きな気持ちだけじゃだめなんだ。大人の恋って,難しいねえ。

そう,『優しいだけ』の男は最終的には選ばれずに『返品』されるのだ。初めての失恋という代償を払い,そのことを体験した志郎の次の恋が素晴らしいものになることを祈りたい。

この作品は,主演者達と同年齢近くの男女が観れば,それなりに共感が得られる作品に仕上がっているのではないだろうか。または僕と同じように,十代後半や二十代前半に失恋の痛手を負った人向け。素直に感情移入できる。ただの失恋映画ではなく,最後にちゃんと救いが用意されていて,元気づけてくれる。しかし,それ以外の世代の人には,やはり『2時間ドラマ』的な印象で,感情移入しにくいのではないだろうか。

柳楽君は16歳で19歳の役を演じられるなんて,本当にいい経験積んでいる。これからどんな役者さんに育っていくんだろう。これからが本当に楽しみ。この作品は彼のいろんな表情,演技が観れて,そしてそれがどれも魅力的だったのが収穫だった。これからも応援していきたい。

ちなみに原作『風味絶佳』は6編の短編集。山田詠美が,女性心理の本質を絶妙の表現で描いており,奥が深く読み応えたっぷりの作品。特に僕みたいに恋愛経験の少ない男性の方にはとても女性心理の勉強になるので,是非読んでみてほしい(笑)。映画では,作品中の名台詞が各所で絶妙に使用されて,真に風味絶佳な味を出している。

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Comments

月の風さん,どうも。
特にTB制限はかけてませんが,どうも環境的に繋がりにくい時間帯があるようです。この記事にTBされている方もいるので,大丈夫だと思いますが…。ご面倒かけてすいません。(って,ココログになんとかしてほしいんですけどね)

Posted by: たつし | 2006.10.17 at 12:01 AM

たつしさん、こんばんわ。
そうそう、確かに夏木マリのグランマはツボですよ。
個性があって良かったです。
それと、TBを入れているのですが、ダメみたいです。
何か、制限かけられてますか?

Posted by: 月の風 | 2006.10.16 at 10:27 PM

>月の風さん,いつもどうも。
柳楽君,いい俳優に育ってますね。まだシャイで無口な役しか観れてないので,真反対の弾けた役柄も観たいです。柳楽君なら出来ると信じてます。
それに,確かに夏木マリのグランマはツボでしたねえ。原作のグランマとはちょっとイメージが違うんだけど,完全に独自のモノにしてました。『ガールズトーク』って言葉の響き,男にとってはちょっと魅力的でしたね。

>更紗さん,TB&コメントありがとうございます。
そうかあ,『必需品』に目をつけましたか。さすがです。相当なジェントルマンに描かれてましたね。単なる『ヒモ男』とは次元が違いますよね。だからグランマに魅かれるのだし,グランマも『必需品』と呼んでいるのだし。

『初恋はほろにがい』…そうですね。フラれた時点では分からないものですけどね。僕はいまだに勉強中です。いつまで続くのかなあ(泣)。

Posted by: たつし | 2006.10.16 at 12:45 AM

たつしさん、こんばんは

私としては、グランマの必需品が素敵だったなー。と
うーーーんと年下の男で、遊びって感じでありながらも
グランマを理解しようとしている様など、グッときちゃいました(笑)

初恋は結局「ほろにがい」もののような気がします。
こうやって経験知積んで、女も男も自分磨いていくんですね~

Posted by: 更紗 | 2006.10.14 at 08:32 PM

16歳で、19歳を演じてしまっている柳楽は凄いですよ。
それも、非常に自然体で、違和感がない。
この映画は彼の力によるとことが大きい。(個人的に夏木マリが捨てがたいところですが)

Posted by: 月の風 | 2006.10.14 at 08:15 PM

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