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2006.11.04

夜のピクニック

品川プリンスシネマ。長澤雅彦監督。多部未華子,石田卓也主演。

年に一度,全校生徒1000人で一緒に24時間夜を徹して,80kmを歩きとおす高校最大のイベントであり,伝統行事である『歩行祭』。それは,生徒達にとっては体力的には辛い行事でもあったが,高校生活を彩る絶好のイベントでもあった。3年生となり,今年で最後の歩行祭を迎える貴子(多部未華子)はこの歩行祭の間に密かな賭けをしていた。それは,一度も話したことのないクラスメイトの融(石田卓也)に話しかけること。そんな簡単なことがこれまで出来なかった秘密が二人にはあった。貴子と融は,同じ父親を持つ血の繋がった異母兄妹だったのだ。この最後の歩行祭で,なんとか融と話がしたい…そんな貴子との想いとは別に,一歩一歩進む毎に歩行祭は終わりに近づいていく。果たして,貴子の賭けの行方は…。

第2回本屋大賞を受賞した恩田陸のベストセラー青春小説の映画化。そして,主演の多部未華子は,去年公開の『HINOKIO』で好演した映画界期待の若手映画女優。期待しなかったわけがない。しかし,広島では不入りで,公開2週目にして朝1回の上映に縮小されるという映画館もあった。つまり,結論として面白くないのである。

元々,貴子と融の,父親の不倫のせいで異母兄妹になってしまったという回避しがたい事実と,そのことに対する長年の内面での葛藤が,歩行祭というかけがえの無いイベントを媒介として浄化されていく物語である。原作でも,二人の心理描写がポイントとなっている。つまり,二人の主役は,難しい貴子と融の心の揺れ,ズレを台詞なしで表現しなければならない。この二人の心の葛藤を乗り越えて浄化させていくステップの表現がこの作品では未消化で物足りなく,説得力がない。これが感動に繋がらない理由だ。正直,多部未華子演じる貴子は原作の貴子とは少し合ってなかった。一方で,融役の石田卓也はまあまあイメージは合っている。しかし,台詞のないシーン(心理描写のシーン)での演出が下手だ。特に,多部未華子はダイヤの原石のような素晴らしい魅力を持った素材。これだけの素材を演出力不足で殺してしまったのは本当にもったいない。演出の仕方次第ではいかようにも輝いたであろうに。彼女が輝かないから,作品に魅力が出なかったのだ。それが残念でならない。

しかし,良いところもあった。まずは,歩行祭をなんとか『特別なイベント』として描き出そうとした努力。大勢がぞろぞろと力なく歩くバックに雄大に広がる自然を捉えたカットの数々。特に秀逸だったのは,海辺の堤防を列をなして生徒が歩くシーンで,クレーンを使った高い視点からの遠望で,生徒達の長い列の向こうに光る海を見事に捉えていた。こういう,おっ,と思わせるカットがあるのだが,単発的で繋がってなかったのが残念だ。この作品のもうひとつの軸である歩行祭のスケールの大きさを描ききれていなかった。

そして,一番良かったのは,なんと言っても終盤,やっと貴子と融が打ち解けて,二人きりで並んで歩きながら語り合うシーンだ。長回しで撮られたこのシーンでは,お互いのわだかまりや葛藤を乗り越えて,ついに話しができたという二人の喜び,汚れなき心の高揚,開放感がスクリーンの隅々まで溢れていて,素直に心が引き込まれ,感動できた。このシーンの二人の演技には文句のつけようがない。この作品の良心と,真に目指したかったものも分かった。だからこそ,それまでの二人の心の葛藤の描き込み不足が残念でならないのだ。脚本と演出の稚拙さ…全くダメ作品ではなく,魅せるものもあっただけに,本当にもったいなく感じた。

それにしても,,多部未華子。透き通った瞳がとても美しく,笑顔が素晴らしい。存在感も抜群だ。これから間違いなく旬を迎える女優さんだ。今作では失敗したが,演出次第で演技ももっとできるはずなので,これからどんな魅力的な映画女優に育っていくか本当に楽しみだ。次回作に期待したい。

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多部未華子(たべ みかこ、タベ ミカコ 生年月日1989年1月25日)は、東京都出身でヒラタオフィス所属の女優さんです。多部未華子カルビー”夏ポテト”や読売新聞”yorimo”のcmが話題になり、映画でも活躍している女優さんです。ここでは多部未華子の情報について紹介してい...... [Read More]

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