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2008.12.30

フツーの仕事がしたい

横川シネマ。土屋トカチ監督。

過酷,いや過労死寸前の労働条件の中,労働組合に助けを求めた一人のセメント運送運転手が『フツーの仕事』を労働争議の末,勝ち得る過程を追った迫力満点のドキュメンタリー作品。

下請のまた下請で働くこの主人公の労働条件は最悪で,月552時間にも及ぶ労働(仕事以外の一日当たりの時間は5.7時間)による過労が原因で瀕死の重病にも侵され,真に命懸けで働いて月給は30万円,社会保障無しという信じられない労働条件である。

映像は多重下請構造による数々の法違反や影の暴力をあぶり出していく。それがリアルを超えたリアルさで,恐ろしいくらい。淡々と事実を撮影してそれにナレーションとインタビューを重ねているだけなのだが,題材のリアルさがとてつもない迫力を作品に与えている。

この主人公は度重なる凶悪な会社側の脅迫にも屈せず,闘い続け,それを労働組合がバックアップして,その結果,『労働条件の改善』という勝利の報償を勝ち取るわけだ。この主人公の人が,どこにでもいそうな気弱そうな普通の人というのがミソである。決して,会社と闘う姿勢を前面に押し出したパワフルな人ではない。だからこそ,僕らのすぐ近くで起こっている問題だというリアリティが生まれるのである。

映像にインパクトと迫力があり過ぎて,これはとてもテレビのドキュメンタリーでは使えない。映画だからこそ実現できた企画と言えよう。本来ならこれをテレビで流すくらいの気骨のあるテレビ局があってもいいような気がするが,スポンサーの顔色を伺わなくてはならない民放では無理,NHKでも無理だろう。

ちなみに限られた条件と予算内で作られた作品であり,フィルムではなくビデオ作品である。ビデオカメラ一台で世相をバッサリ斬り捨てるのだから,そのポテンシャルの高さを改めて思い知った次第である。

世の中の矛盾,本当,たくさん他にもあるよね。こういったドキュメンタリー作品もたまには観なければと肝に銘じた作品になった。

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