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2009.01.28

青い鳥

サロンシネマ2。中西健二監督。阿部寛主演。

いじめ問題に真正面から斬り込んだ社会派作品。同じ『いじめ』をテーマとしていても,『リリイ・シュシュのすべて』と比べると,こちらの方がよほど本道である。主張もはっきりしている。『実際のいじめのシーンは一切ない』にも関わらず。ここがこの作品の素晴らしいところだ。

物語はいじめによって生徒が自殺未遂を起こした中学校の新学期から始まる。自殺未遂を起こした生徒はもう転校してしまっていない。クラスの生徒達は『事件を忘れよう』としている。そこに現れた吃音の代理教員。彼は生徒達を諭す。『忘れるなんてひきょうだ』,『本気の言葉は本気で聞くべきだ』と。

吃音で話される断片的な言葉,単語がそれ故に余計に心に突き刺さる。例えば,『責任』という言葉。『生きていく上で人が負うべき責任』の大切さをこの代理教員は問う。それはもう単なる『いじめ』問題ではない。大人にも通ずる社会全体への問題提起だ。

事件を過去のこととして封印しようとする他の教師達と代理教員とを対峙させることで,どちらが『人』と向き合う上で正しいことかを鮮やかに浮かび上がらせている。その手法は技法的にはやや下手かもしれないが,正統派であり,王道のようにどっしり構えていて,その主張はゆるぎないものになっている。

その吃音の『本気』の言葉の真意が届いた生徒,教師がいる一方で,届かなかった生徒,教師がいたことにも注目したい。これが社会の縮図なのだ。気付かなかった生徒達も間違いなく大人になる。そして,気付かなかった教師のような大人になって,都合のいい方便を使うのだ。そういう意味ではこの作品の問題提起はとても奥深い。

そして,この代理教員も,おそらく『本気の言葉』の意味に気付けなかった暗い過去を持つことも。それ故に『本気の言葉』を話し,『本気の言葉』を聞き取れるようになったであろうことも。

主演の阿部寛も凄いが,それと正面切って堂々と演じる本郷奏多も凄い。二人の演技にも魅せられる作品になっている。

低予算でも,こんなにメッセージ性の深い,凄い作品ができるのだ。だからミニシアター通いは止められない。この作品に出会えた幸運に感謝したい。

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