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2009.01.03

リリイ・シュシュのすべて

DVD鑑賞。岩井俊二監督。市原隼人主演。

ずっと観たかった作品だったのだが,やっと観れた。作品に関する前知識は全くない。が,思い入れが深かった分,正直,この作品をどう評価していいのか分からない。

思春期の,壊れやすいガラス細工のような繊細な心を持つ若者達の心情を描いたものなのか。それとも,思春期の少年少女の立ち位置の危うさ自体を訴えたかったのか。

ネットでの繋がり,万引き等の少年犯罪,援助交際,いじめ,等,思春期の子供達の存在する世界に実際に起こりうることが,シビアに長々と描かれている。では,岩井監督は2時間半にも及ぶこの作品で何を訴えたかったのか。そこが分からない。生き残った者と死を選択した者,そして突然生を閉ざされた者。この三者が描かれるのだが,それぞれの役割というか,メッセージというものが今ひとつストレートに伝わってこない。そういう意味では難解な作品である。

それとこの作品を観て思うのは,『大人目線』で描かれていることだ。実際の思春期の少年少女達はこの作品を観て自分達の物語だと共感できるのだろうか。僕にはとてもそうは思えない。そんな『目線』のブレが,この作品の評価を難解にしているのかもしれない。

主人公にとっての『リリイ・シュシュ』が果たす役割自体もピンとこない。ネットで心を交わしていたはずの相手が,実は自分のリアルな生を脅かしていた人物だったというくだりは初めから読めたのだが,それでなぜあんな衝動的な行動に主人公が最終的に走ったのか。それと『リリイ』との関係はどうなのか。そこが全く上手く描き込まれておらず欠落している。DVD鑑賞という集中できない環境で観たという点を差し引いても,人の生と死をテーマとして扱うならば,この作品を思春期の少年少女達に観てほしいと考えて作った(もちろん意図的に大人向けに作ったとは考えられるが)のならば,そこには理解しやすい解答がなければならないと僕は考える。思春期の少年少女達の持つ問題だけをバラまいて,それがパズルとしての解答がないというのでは,全く救いがないではないか。

とは言え,ラストシーンでは,『生を選んだ者』同士が対峙しそうな予兆を漂わせながら終わっている。そこから解答を探せということかもしれないが,僕はこの終わり方が今ひとつ理解できない。というか,この中途半端な終わり方が嫌いだ。何度も言うが,『解答』が示されるべきだったと思う。意味のない『生』も『死』もないと考えるからだ。そういう意味ではこの作品は2時間半も使いながら中途半端な作品である。

この作品も,市原隼人や蒼井優など,今の二十代前半で活躍中の俳優・女優が,ダイヤの原石の煌きを魅せてくれる作品であるので,そういう意味では貴重な作品だと言える。ただ,この作品の魅力は唯一その一点だけとしか考えられないのが,観る前の思い入れが深かった分,惜しいところだ。

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一気に読みました。おもしろい。そして考えさせられます。 ラストは、衝撃のクライマックス。是非、読んでみて。 [Read More]

Tracked on 2009.01.27 at 11:43 PM

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