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2009.01.26

ぐるりのこと。

シネツイン本通り。橋口亮輔監督。木村多江,リリー・フランキー主演。

久々の邦画の傑作だと思った。それくらい自分の口に合った作品だった。鑑賞感がとてもよく,2時間20分の尺の長さを感じさせない作り込み。僕は完全に主人公の翔子とカナオに感情移入していた

木村多江演じる翔子は,子供を亡くしたことで精神を病んでしまう役柄。リリー・フランキーは,そういう病んだ妻をただそばに寄りそうことで力強く支えていく法廷画家の役柄。物語は,夫婦の絆を描いたパートと,その時代(90年代)の病んだ社会の法廷シーンのパートとを相対して描いている。このコントラストも絶妙。カナオの仕事が法廷画家というのも効いている。被告と被害者の心情をくみとりながら,それを消化し,客観的に法廷画にする仕事。この仕事をしているから,カナオは翔子の気持ちを理解し,支えることができたのだと思う。木村多江とリリー・フランキーの演技はまるで素の本人を観ているような錯覚を感じるほど自然で良かった。おかげで作中にぐいっと引き込まれた。

一番の見どころは,中盤の,お互いの心の内をぶつけ合い,その結果,ようやく深いところでお互いを理解し,心を通わすシーン。これはおそらく10分くらいの長回しで撮られており,真のこの作品中のキモであった。このシーンがとてもよく撮れていたので,その二人の再生していく姿に素直に感情移入できた。この後,二人が特に翔子の病気について格闘する姿は意図的に省略されている。ただ,お互いの心の壁を乗り越えて二人が深い絆に支えられて,信頼感を深め,次第に翔子の病気も快方に向かっていることは,『カレンダーの×印』(二人の約束事のサイン)が増えていくことで隠喩されている。ここまでたどり着くのに,二人は相当の苦労をしたのだろうと予想する。僕はあえてそこを説明くさく描写していない手法がとても好きだ。『お互いのことが好きだから』,『当たり前にすぐそばにいる』ことで支え合って病気を乗り越えた二人に拍手したい気分だ。翔子が絵を描くことに希望を見出し,再生していく姿は素晴らしく瑞々撮れている。翔子がい笑顔で絵画に取り組んでいる姿と,書きあげた天井画を夫婦で寝そべって見上げるシーンがとてもいい。観ているだけでこちらも元気な気持ちになるし,夫婦の深い幸せを感じることができる。

『ただ寄り添い生きていくことでお互いの愛を確かめ合うことができる二人』の純粋な絆と愛を過剰な演出を図ることなく,さりげなく描ききった橋口監督の力量は称賛ものだ。本当にこの鑑賞感の良さは特筆もの。観た後に幸せな気持ちに素直になれる作品だ。是非多くの人に観てもらいたいお薦めの作品である。

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