2005.02.06

世田谷パブリックシアター

土曜日に観劇に三軒茶屋の世田谷パブリックシアターに行ってきた。松たか子主演の『コーカサスの白墨の輪』を観てきた。思ってたほど大きくなく,直径20mくらいの円形の舞台を600人くらいの観客が舞台の表と裏の関係で半分に分かれて,サンドイッチの具(=舞台)とパン(=観客)のような関係になり,舞台を眺めるという形。結構面白い造りの劇場だと思った。舞台の感想はいろいろ思うところがあるのと,パンフレットも買ったので,それを読んでから書きます。でも,映画ももちろん面白いのだが,これくらいの中規模の劇場での生の舞台鑑賞もなかなか魅力的だな。
今週末はこの舞台を観に行ったりしたため,映画は『約三十の嘘』しか観にいけなかったので,来週金曜で終わる『カンフーハッスル』には行けないことがほぼ確定。やむなしかあ。他の行きたい映画も諦めなければならないか。しかし,本当に僕は来週の連休からスキーに行けるのか。かなり不安(まだ板とかブーツとか倉庫から出してないよお)。

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2004.11.03

見よ,飛行機の高く飛べるを

シアタートラム。
作:永井愛,演出:アントワーヌ・コーベ,主演:井川遥
今日は,三軒茶屋のシアタートラムに舞台を観に行ってきた。広島時代を含め,演劇は何回か観たことがあるし,ここには書かなかったけど,東京に来てからは8月末に帝国劇場でやっている『ミス・サイゴン』に行っている。ミス・サイゴンを観に行ったのは,僕が松たか子のファン(笑→『ロングバケーション』の頃からのファンだし,広島では彼女のコンサートにも行っているし,舞台も観た)だったから。チケットが『13,500円!』した。涙出るほど高かったけど,セットは超豪華だし,初めて生で観る本格ミュージカルだし…。本当は堪能せねばならなかったんだけど,役者に感情移入して芝居に入り込むタイプの僕は,台詞の代わりに流れっぱなしの『歌』にどうしても馴染めず途中で退屈してしまい,松たか子が出てるにもかかわらず,なんと途中で寝てしまった。起きたらラストシーン近くで呆然としてしまったという苦い経験だった(だからブログにも書けなかった)。
そんな失敗を経て今日のこの舞台。チョイスした理由は,僕が井川遥のファンだから(爆)。舞台育ちの松たか子の舞台でも寝てしまう僕は,たぶん松たか子より演技が下手であろう井川遥の舞台を最後まで見届けることができるか,というのが今日の最大のポイントだった。
シアタートラムは考えていたよりずっと小さい劇場だった。帝国劇場の次に来たのがここなので,受けた感覚的には真に『芝居小屋』といったもの(定員248人で最前列は撤去されていたから230人ほどか)。おまけに席は前から2列目で舞台との距離は1.5mほどだ。物凄い臨場感。芝居が始まる。役者さんの息遣いも聞こえそうだ。これなら寝ることもないだろう。一安心。
物語の舞台は1911年のある女子師範学校。将来の良妻賢母を育てることを一番の教育目標に掲げ,言論・思想すらも統制しようとする学校教育に異を唱え,自由な教育と女性にも開かれた未来を求める女学生達の友情と挑戦の物語。
舞台も小さいが,セットもものすごくシンプルで女子寮内の壁を背景に椅子が並んでいるだけ。その分,舞台から花道が引いてあり,座席の部分も含めて劇場全体を『ひとつのセット』として物語は進んでいく。この仕掛けは,この規模の芝居を初めて観る僕にとっては驚きで惹きつけられた。服装も現代風にアレンジされており,時代設定を気にせずに物語に入ることができる。また照明もろうそくの明かりだけというシーンが多々あり,自然と役者の表情や動きに集中させられる。この辺の演出は巧い。
井川遥は,師範学校で一番の優等生の光島役。光島は成績も優秀だが,明るく人望もあり,学校のリーダー役で,まさしく未来の良妻賢母という設定。そんなどちらかというと保守的な光島が今の学校教育と女性のあり方に疑問を抱く後輩の杉坂(魏涼子)に出会い,彼女の斬新な思想に共感し,強い友情が芽生えていく。二人の考えに共感し,仲間が増えていく。
前半の井川遥,なかなか良い。2回台詞をミスしたが,あとは長い台詞まわしも無難にこなしている。『大根』にはなっていない。ただ,やはり声量はちょっと足りない。周りの役者も皆舞台慣れして上手いので後半はどうなるか…。
やがて,仲間達で学内誌を作ろうと盛り上がる。しかし,『学内で異性と二人きりで会ってはいけない』という校則違反から,仲間の一人が退学処分を受けてしまう。仲間達は,退学処分の撤回と教育方針の見直しを掲げ,校長にスト宣言する。学校中の生徒の同意を得て結束したように見えた仲間達。しかし,信頼していた女性教師にまさかの裏切りを受け,一人,二人と仲間は離れていく。結局,最後まで残ったのは,光島と杉坂だけだった。
ここまではよい。シーン毎に照明の明暗を上手く使い,奥行きのある表現が出来ている。しかし…。
運動会の日。光島と杉坂だけがストを続け,寮に残って学内誌を作っている。今後についてお互いの苛立ちから言い争いになるものの,仲直りをして学校を退学することになっても女性の解放に向けていっしょにやっていこうと誓い合う二人。
このあたりから井川遥の芝居が『大根』がかってくる。というか,杉坂役の魏涼子がとても上手いので,二人芝居になるとその圧力にどうしても押されてしまう。頑張れ,井川遥。
杉坂が舞台から降りて光島が一人残る。そこに現れるのが,序盤から顔を出している(女生徒達の憧れの的とおぼしき設定の)男性教師・新庄。そして唐突に新庄は光島に愛を告白し結婚を申し込む。舞台暗転。
なんか変な話になってきたぞ。しかし,新庄先生,それまで全然格好良く描かれていなかったので,少々このプロポーズには無理があるんじゃないか。まさか,まさか…。
照明がつく。出演者全員が舞台に広がり,客席に背を向けている。そこに杉坂が戻ってくる。実質的には,光島と杉坂の二人芝居。光島は告白する,『もういっしょにやっていけない。新庄先生に結婚を申し込まれたの』と。しばらく口論の二人。
この辺りの二人のやりとりは,ほとんど棒読み状態。これは意図的な演出と見たのだが。しかし,あんなにさえない新庄先生に求愛されたくらいで,自分の思想や友人をこんなにもあっさり切ることが出来るものか。急に情けない女に成り果てる光島。ここはもっと苦渋の選択というような芝居をさせても良かったのではないか。あっさりしすぎている。
舞台から客席に降りる杉坂。『飛行機が見える』と突然空を指差す。『どこ?見えないわ』と応える光島。『ほら,あそこ』と空を指差し,なんと観客の間をつたってどんどん空へ(劇場的には客席の後方に)上っていく杉坂(これには驚き)。学内誌も自分一人で作ると言う杉坂。『見えない』杉坂が言う飛行機が見えず繰り返すばかりの光島。二人の進む道は大きく分かれてしまったのだ…。

ここでおしまい。最後の杉坂が観客の間を割って上がっていくのにはびっくりした。観客までセットにするか~と。なかなか面白かった。でも,これじゃあ杉坂が主役の物語じゃん。光島,情けないままでおしまいかよ~。
なんでこの話をここまで引っ張ったかというと,なぜああいうラストにしたか,と書きながら考えていた訳で。なぜ杉坂じゃなく,光島が主役なのかと。う~ん,よく分かんないけど,たぶん高い理想を持ちながら,愛情や結婚という世俗に流されてしまう光島=世間一般の人々と位置づけてわざとアンチテーゼとしたのではないだろうか。アンチテーゼたるにはできるだけ情けなくならなければ,世間一般の人々=我々は自戒しない。理想を追い求め続ける杉坂が対照的にマイノリティーとしてヒーロー然として終わるのもそのためだろうか。『理想=飛行機』ということか。それなら光島に飛行機は見えない。
ラストで主張が分からなくなったのは,やはり終盤の井川遥の演技力が足りないと言わざるをえないか。もともと杉坂役の魏涼子の方が上手いのだ。上手い役者によりインパクトある演出(観客の間を割って進んでいくという)で芝居をやらしたら,やっぱりそっちの方が印象に残ってしまうのは当たり前。特に終盤はわざと演出で感情を排して棒読みさせているふしがあるだけに,この辺は演出の難しいところだ。この芝居は今日で二日目であと3週間ある。井川遥には,是非このラスト部分の芝居をもっと咀嚼してもらって,魏涼子のインパクトに負けない芝居を目指して毎日演技してほしい。思ってたよりずっと芝居は出来ていた。だからこそ出来るようになってほしい。

はあ~,長くなったあ。でも,それだけ今日の小劇場での芝居からいろんな意味で感ずるものが多かったわけで。普段はお手軽に毎回が特上席の映画(アングルやアップは自動的に切り替わるわ,注釈のコメントとか入ったりする)ばっかり観てるだけに,『失敗のきかない』生の芝居を前から2列目という極上の席で観られたことは本当に幸運だったと思う。なんか面白そうなものあったら,また観にいこっと。でも,チケット取るのが大変なんだよなあ,東京ってところは…。

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