2008.03.18

Once ダブリンの街角で

取り急ぎ感想だけ。いつものスタイルではありません。

とても瑞々しい感性に溢れた小さな小さなラブストーリー。その趣はまるで純文学のようで,詩的ですらある。だが,ラブストーリーだからと言って主人公の男女が飾った愛の言葉を連ねるわけではない。その辺りは割りとシンプルに描いている。なぜか?この作品がラブストーリーであることをガンガンに感じさせるのは台詞なんかの1000倍くらい情熱的な『唄の力』なのである。そこはこれでもか,というほど攻めてくる。その技法が新しく,ミュージカルで台詞を唄的に聴かせるのではなくて,唄そのもの(歌声+台詞ではない歌詞)で愛を語るって感じ。とにかく素晴らしく情熱的で,僕も自作の唄で愛を語ってみたくなるほどだった(笑)。現実の世界で二人の愛が成就するのではなく,『ひとつの曲を完成させる』という過程で二人の心がシンクロする繊細な『かすかな振るえ』が見事に描かれており,その技法はシンプルながら新しいもので,新鮮な感覚に心地良さを感じる。ラストも単なるハッピーエンドではないが,『愛の唄を作り上げた二人はそれぞれの幸せを掴む』という微笑みたくなるようなご褒美が待っている。このラストシーンも心地良い。もちろんこれを締めるのもとても心地良い『唄』なのである。

超感動作というわけではない。なんとなく誰もが心地良い鑑賞感に浸れる不思議な味のある作品である。このピュアさを,今の複雑な世の中に生きる若いカップル達に是非観て頂きたいと思うなかなかの佳作。映画と音楽好きの作り手のメッセージがガンガンにハートに突き刺さってくる作品であった。実は劇場の最終日に観に行ったのだが,観ておいてよかったと思った。僕が帰りにサントラを買って帰ったのは言うまでもない。

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2008.02.26

映画好きにオススメの雑誌

本日2本目。 昨日買った雑誌が良かったので紹介します。 AERAムック『ニッポンの映画監督』(朝日新聞社)です。現代邦画の旬の監督と作品を特集していて,なかなか読み応えのある内容になってます。一般の映画評雑誌とは少し違う『ミーハーな観点』から見ている編集方針は『さすがAERA』(笑)と思わせるもの。読み終わった後,『ちょっと邦画通になったかも』と錯覚させてくれます。この雑誌の中で『映画のプロが選ぶ21世紀の日本映画ベスト10』という特集があったので紹介します(この『21世紀』というのが軽薄なAERAらしい)。 (作品名の後の,○×は僕が観た作品かどうかを参考までに書きます)

1位:『EUREIKA』→×
2位:『誰も知らない』→○
3位:『ゆれる』→○
4位:『下妻物語』→○
5位:『それでもボクはやってない』→○
6位:『ハッシュ』→○
7位:『いつか読書する日』→×
8位:『パッチギ!』→○
9位:『血と骨』→×
10位:『フラガール』→○

なんと1位の『EUREIKA』を観てないわけです。観たいけど,僕は基本的にレンタルは観ない人なので難しいかも。リバイバルしてくれ~。僕的には評価の高い『GO』が24位というのは低すぎるような気がする。 僕がこの10本でベスト3を並べるとすると,

1位:『ゆれる』
2位:『それでも僕はやってない』
3位:『パッチギ!』

かなあ。『ゆれる』は生涯邦画ベスト30くらいにも入ってきそうなくらいの傑作でとてもお気に入りです。さて,皆さんはどうでしょうか。

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2008.02.24

好きだ、

DVD鑑賞。石川寛監督。宮﨑あおい,西島秀俊,永作博美,瑛太主演。

17歳のユウ(宮﨑あおい)とヨースケ(瑛太)はお互い好意を持っているのに『好きだ,』の一言が言えない。二人は近づき,もつれ,すれ違う。そして,二人に悲しい出来事が…。それから17年,34歳のヨースケ(西島秀俊)とユウ(永作博美)は音楽を通して再会する…。

やっとこさ,DVDで鑑賞。
大きく『17歳のユウとヨースケ』のパートと『34歳のヨースケとユウ』のパートに分かれるわけだが,出来栄えとしては『17歳』の方が良い。それはやはり『17歳』の方がノスタルジックで,少し青い演出もOKなので料理しやすいということが言えるからかもしれない。ここで宮﨑あおいの『隣にいそうだけど,こんな可愛いコは実際はいない』不思議な魅力爆発。瑛太も飾り気のない少年を好演しており,それが『17歳』の方が魅力的に映る要因。そして,この世代の時誰もが感じた『やり場のない異性への想い』=『好きだという想い』を少々鋭角的に大人目線で石川監督は斬る。そうでないと,『自分の姉に好意を抱いている思い人の前に姉のセーラー服を着て登校する』なんてユウの青いけど,突拍子もないエピソードを織り込むことができるだろうか。実際にこんな女子高生いたらビックリ仰天だよ。しかし,それだけ『必死に好き』というどこへも行けないユウの想いが明確に表現されたエピソードだと言える。こういうユウとヨースケを長回しでひたすら追いかける技法はマニアックで確かに魅せるし,後半への布石ともなっている。空を印象的に切り取るカットの多様が目に焼きつけられる。

これに比べて『34歳』のパートは意外と普通。これは34歳のヨースケを演じる西島秀俊が押さえた演技をしているためだと言える。しかし,これはおそらく演出上の作り込みだろう。しかし,それだからこそ『34歳のユウ』を演じる永作博美を強烈なほど魅力的に作品に刻み込む。この作品の永作博美は前半の宮﨑あおいでも吹っ飛ぶくらいに魅力的。真に『怪演』である。その圧倒的な存在感は主役を務める4人の中で飛び抜けている。それは,前半の長回しを多用したカットから一転,ユウのアップとやや引いたカットを短い時間で交互に切り替えていくことで印象に刻み込む。しかし,前半の長回しが効果的に処理できていただけに,この短いカットの切り替えは観ている側にとってはややしつこく,気に障る。これがこの作品の技巧上の最大の欠点。なぜ,ユウのアップを切り替えで押さえていくかというのは,真にこの作品のキモとも言えるラストカットを強烈に印象付けるための伏線であり,そこを技巧的に作り込んでいくという作り手側の思いもよく分かるのだが,ちょっと技に溺れすぎた感がある。あと,ヨースケと酔っ払いの女性のエピソードはもっと短く仕込んで欲しかった。これは,永作博美があまりにも魅力的に撮れているから余計にそう思うのだろうけど。

こういう作品は劇場で思い入れたっぷりに浸って観たいものだ。ちょっと技巧に懲り過ぎた部分を意図的にシンプルに描けていたら,なかなかの傑作となったと思う。それにしても,永作博美,恐るべし。この作品は宮﨑あおいの作品と思って観たのだが,これは永作博美の作品である。こんな『怪演』が出来るなら,彼女の今後の映画女優としての地位はかなり面白いものになると思う。早く『人のセックスを笑うな』を観てみたいものである。

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2008.01.09

アイ・アム・レジェンド

この作品を観て思った。なんでも高画質なCGで表現する手法はどうかと。『ロード・オブ…』3部作では感動できたこの手法も,そろそろあきてきた。なんせ『キモ』が全部CGなので(この作品の魅力も含めて)余計にそんな思いになってしまう。このハリウッドのこの流れが正しいのかまだ判断できない。でも,基本的に映画ってものは『アナログ』な魅力を堪能するものではないだろうか。脚本・映像・演出…どれも本来はアナログなものが基本であるはずだ。去年末に観た『ベオウルフ』もそう。アンジーのヌードでさえCG処理。完璧すぎて全く魅力的に見えない。

その想いを強くしたのは,本作の前の予告編上映で『マッハGO GO』のハリウッドリメイクの予告編を初めて観た時。『なんだ,期待してたのにただのCGアニメじゃん』って。僕はオリジナルを知っている世代だが,この予告編を観る限りはオリジナルの方がよほど魅力的で面白そうである。

もうCG(オンリー)映画は見飽きた。これなら,TVチックな邦画作品の方がまだ『アナログ的』(これは,古い,という意味も含むが)で面白い。去年,僕が本来好きなはずの洋画をあまり観なかった遠因もそこにあるのではないだろうか。

もし,この流れが今年も続くようなら,僕がアメリカ発の洋画を観る機会は激減するだろう。『アナログな脚本・映像・演出』でかまわない。その工夫で唸らせ楽しませてくれる映画が観たい。CGアニメなら,日本の作品の出来栄えの方が圧勝だから。日本では,アニメは今でもアナログな部分を意識的に残している。実写との住み分けを作り手がよく分かっているからだ。

そんなこんなを考えながら,劇場を出て駐車場でクルマを乗り,帰路に発ったところで,僕はこの作品のパンフを買ってないことに気付いた。社会人になって以来,売切れの時以外は必ず買っていた鑑賞作のパンフを…。

だんだんハリウッド大作に飽きてきた自分を発見した作品となった。

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2008.01.08

07年邦画ベスト5発表

去年は洋画は『ベスト云々』を語れるほど観てないので,邦画について書きます。これ,世間の評判は別にして,自分の思い入れがものすごく入っているので,観る人によって感じ方はもちろん違うと思います。以下,僕の選ぶ去年の邦画ベスト5。

第1位:『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』
去年観た映画の中で一番エンターテイメントに溢れた傑作です。僕はこれまでエヴァを観たことがなかったのだけれども,そんな僕でも面白いと思う圧倒的な説得力を持つ作品。続編が楽しみ。絶対にDVD BOXを買いたい。

第2位:『Little DJ 小さな恋の物語』
これこそ神木くん好きの僕の思い入れの1本です。別に泣ける作品が評価が高いわけではないが,この作品は映像(照明)が素晴らしかった。神木くんの相手役が福田麻由子ちゃんではなく,大後寿々花だったら,本当に凄い作品になっていたと思う。

第3位:『秒速5センチメートル』
これも僕の好みだけの作品ですね。でも,ラストの山崎まさよしの曲をバックにバンバン畳み掛ける迫力は感動モノ。僕はこういう切ない恋の物語が大好きなので3位にランクインです。これはここでレビューを書けた去年最後の作品になったのでそれも印象に残ってます。

第4位:『それでもボクはやってない』
リアリティ溢れる作品。面白くもあり,一方で考え込ませるプロットは素晴らしいし,それを絶妙の味付けで演出した作り手の意気込み・真意がスクリーンに溢れている作品。現実的には(他の人が選べば)去年NO.1の作品。

第5位:『アヒルと鴨のコインロッカー』
原作ミステリーの面白さを十二分に映画化できた作品。確かに突っ込みどころはあるが,3重構造のプロットが素晴らしい。配役もGood。切ないラストが印象的。一般的には去年のミニシアター系のNO.1の作品。


次点は『しゃべれどもしゃべれども』かなあ。あと,僕的に評価の高い作品は『きみにしか聞こえない』と『キサラギ』ですね。

ちなみに07年の傑作のうちの一本『転々』は,僕が観たのは先週なのでここには入ってません。さて,08年はどうなるのでしょうか。邦画が元気なのはいいのですが,どうも2時間ドラマとの差異を見分けられない作品もあって難しい感じ(それなりに面白かった『HERO』とかは典型)。劇場で魅せるツボをもっと考えてほしいと思います。

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2007.05.02

秒速5センチメートル

サロンシネマ2。新海誠監督。

東京の小学校に通うタカキとアカリは同じ時期に引っ越してきた転校生同士だった。性格も合い,すぐ心を通わせた二人はすぐに仲良しになった。二人でいることが日常の毎日。だが,小学校卒業と共にアカリは引っ越していってしまう。そうして一人中学校へ進学したタカキに半年後,アカリから一通の手紙が届く…。

タカキとアカリの別れとつかの間の再会が描かれる『桜花抄』。タカキが転校した地,種子島での高校の同級生から見た視点で描かれる『コスモナウト』。そして,タカキが社会人になって,どうしようもない自分の人生へのわだかまりを感じつつアカリのことを想う『秒速5センチメートル』。この3編の短編からなるアニメ作品。

まず,この作品が優れている点として,アニメとしては詳細なディテイルまでこだわったその画質を挙げよう。本当にそのひとコマひとコマが細かく美しいのだ。ここまで来るとアニメの域を超えている。本当にひとつの映像作品。この点だけ取っても素晴らしい作品である。

そして3編に分かれるストーリーが,それぞれ独立して深い味わいをもたらしてくれる点。少年時代に恋をした少年少女なら,必ず通過したであろう切なく甘酸っぱい想い。そして,大人になっても捨てきれないその想い。それを嫌味なく,十二分に表現している。

例えば,『桜花抄』で描かれるタカキが東京から栃木の田舎町まで電車で移動する長さの大人が感じる時間感覚との差だとか。初めての好きな女の子とキスする瞬間の想いとか。『コスモナウト』で描かれる女の子の側から見た,好きな男の子が自分のことを好きにはならないと直感する瞬間とか。『秒速5センチメートル』で,踏切でアカリとすれ違ったことに気付いて,電車が通り過ぎる間,アカリがいてくれ,と念じるタカキの想いとか。

もうそのどれもが直球で,僕の胸に突き刺さりまくり。なんて純粋で真っ直ぐな物語なんだろう,と。

特に,ラスト5分,『秒速5センチメートル』のタイトルがバンとスクリーンに広がった瞬間から,山崎まさよしの曲をバックにフラッシュバックのように観客の目に突き刺さる,タカキの12歳から大人になるまでの全3編のインパクトの強いシーンの数々。大波のようにバンバン押し寄せるその迫力と畳み掛ける力強さ。本当に素晴らしい。そしてラストシーン。タカキが電車が通り過ぎる踏切を振り返り,アカリが立ち止まっていることを祈るシーン。電車が通り過ぎたその踏切の向こうにはもう誰もいなかった…というラスト。

切ない。確かにとても切ない。でも,僕はこれをタカキの大人への脱皮の瞬間ととらえたい。この瞬間,タカキは少年時代の過去の呪縛から解き放たれ,真の大人になれたのだ。『失くしたものと大切な得たもの』。その対比がいろんな場面でこの作品には示されている。この作品を観る人にはそういうメタファーにも気を配りながら観てほしい。それくらい深みのある傑作だと僕は思う。

ちなみに『秒速5センチメートル』とはアカリがタカキに言った,桜の花びらが落ちるスピードのことだ。この速度が速いと感じるか,遅いと感じるかは,観るあなた次第だ。

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2007.04.30

東京タワー オカンとボクと,時々,オトン

サンフがボロ負けしてるので現実逃避です。でも,心配はしていません。ミシャを信じましょう。

さて,今日は『東京タワー』を観たので,それをアップします。あらすじは省略。

僕は,先に本を読もうとしたが,映画化されると知り,買わなかった。SPドラマも連ドラも観なかった。先入観が入るのが嫌だったから。オダジジョーがいかにリリーさんを演じるか。しかし,冒頭の病室でのシーンでやややつれた表情のオダジョーが,『全く似てないのにリリーさんに見えた時』に,この作品は成功した,と確信した。しっとりとした観応えのある作品だった。意外と演技ができ,存在感のあった内田也哉子に驚き。見た目も似ている親子で一人の『オカン』を演じる贅沢なキャスティングに唸る。樹木希林の自分の色を前面に出しつつも押さえた演技がいい(息を引き取るシーンにヨーダの死に際を重ねてしまったのは僕だけではあるまい,って話は置いといて)。映画らしい豪華な脇役・カメオ出演陣に支えられ,オダジョーが入魂の演技を魅せる。それだけに,要所に彼女役の松たか子に突然の割り込みのように重要な台詞を言わせ,アップカットで抜く,その芸のない軽い演出が際立って下手糞な技法に観えた。この映画の欠点は真にこの一点である。こんな役をやらされる松たか子がかわいそうだ。泣ける映画を目指しつつも,『泣け泣け』の過剰演出はなく,自然と涙がこぼれ落ちる作品になっている。母への親不幸への懺悔とそれ以上の愛情の念に溢れるなかなかの佳作であった。エンドロールに流れる福山雅治の主題歌とのマッチングも秀逸。是非,エンドロールが終わり,劇場の照明が点くまで席を立たないで余韻に浸っていただきたい。

リリーさんと同年代から,僕の年代(30代後半)までの人が観れば,真にツボの映画になってます。是非,劇場の大画面で観ていただきたい一本です。

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2007.04.10

蟲師

広島バルト11。大友克洋監督。オダギリジョー主演。

サンフの試合を観てなく,記事が書けないので,お茶濁しに久しぶりに映画のレビューを書きます。あらすじ省略。しかも,お決まりのネタバレですいません。

感想。映像はとても綺麗。VFXの使い方が邦画にしては自然で巧く処理できており,これが木々の緑の色とよくマッチしている。しかし,それをぶち壊すくらいプロットがハチャメチャ。ひとつひとつのエピソードや登場するキャラクターは発想が面白いし,とても魅力的なのだが,これが作品にストーリーとして組み込まれるとなぜか消化不良で…魅力大半減。ギンコ(オダジョー)の過去も掘り返したつもりでも,全く解明されてないわけだし(原作読んでから観に来い,とか言われる?)。導入部の話は蟲師の個性的なキャラを際立たせるにはまあOKだが,もっとテンポよくできたはず。次の淡幽(蒼井優)の話が画も含めて一番面白いのだが,ブッツリ終わってしまう。次の虹の蟲を探す話も中途半端。それで終わりかい,って感じ。虹郎はなぜ虹の蟲を探してたの?誰か教えて。そして極めつけが,全編に渡って少しずつ明らかになるギンコの過去と謎の女蟲師の正体の真相が明らかになる話だが,これが本当に謎。映像と話の筋があまりにもかけ離れてしまって,観ている方はラスト近くになって迷子になることに。そしてラストシーン,川原を歩くギンコが突然…(驚愕),そしてエンドロール!!おいおい,そんなのわかんねえよ。エンドロールが流れる間,ずっと自分を責めていた。何か見逃したシーンや聞き逃した台詞はなかったか。う~ん,やっぱりわかんねえや。一本の作品として2時間も観て来た観客にこんな思いをさせていいわけ?結局,何が言いたかったわけ?作り手のメッセージが全く伝わってこない。何の感動もない。大友監督に特別の思い入れがある人やオダジョーファンや蒼井優ファン限定の作品。デートムービーになんかで使ったら,帰りに結末の解釈で相方と絶対喧嘩になります。ご注意を。

オダジョーは確かにこういう役もできるけど,個人的には『時効警察』の主人公のようなちょっと三枚目入った役の方がいい味出ると思うなあ。蒼井優は本当にノってるねえ。役毎に何色でも染まりながら,しっかりと自分の核は守っているところは凄い。もう少し歳をとった彼女の悪女役が観てみたいなあ。江角マキコはあんなに熱演したのにあんな使われ方で可哀想な感じ。

映像はとても良いが脚本が全くダメな映画の典型的な作品でした。オリジナルがあるんだから,もっと上手く本書けよな。

あ,役者さんは脇役の方も含めて皆さんとても良い演技をしてたと思う。それがこの作品の唯一の救いかな。

(パンフレットを読んだら,ちゃんと解釈できたかもしれないけど,『売切れ御礼』だったので…すいません)

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2006.12.09

未レビュー作品を纏めてアップ

いつまで経っても鑑賞後のレビューが書けないので,仕方ないので短評に纏めてみた。
僕は批評する上で,採点するのはあまり好きじゃないけど,短評なので,視覚で出来具合を理解していただくために,五つ星=満点,で評価してみた。

『マッチポイント』…★★★★
『運』,『勝者と敗者』,『野心と愛欲』について,絶妙のウィットを効かせながら描いた作品で,引き込まれる。ラストの展開とオチが最高。S・ヨハンソンが絶品に色っぽい魅力的な女性から全く不快な女性へ堕ちていく姿が男には怖い。

『紙屋悦子の青春』…★★★★
戦時下でも日常の生活に溢れているユーモアと敗戦が迫る厳しい世相を対比させ,どちらも殺さずに絶妙のバランスで描いた反戦映画。『大切な人のために生きていく』という当時の人々の人生の選択に感動。役者がみんないい味出している。急逝された黒木監督にご冥福を申し上げます。映画職人の魂を感じた。

『涙そうそう』…★★
妻夫木聡が大熱演。本当巧くなったねえ。長澤まさみも頑張ってた。兄妹が別れる場面では泣けた。しかし,その後の脚本が最悪で,それまでの役者の努力を全てぶち壊し。おまけに『泣け,泣け』の超過剰演出。逆にどん引き。これがヒットしてるなんておかしいよ。

『フラガール』…★★★★★
笑いと感動と涙に溢れたとてもベタな作りの作品。でも,演者の熱は伝わる。後半はもう蒼井優の演技に泣かされっぱなし。彼女は天才だ。ラストのダンスシーンも素晴らしく,感動。今年の邦画では『ゆれる』と並んでお気に入りの作品。

『イルマーレ』…★★
ラストは予想していたオチと良い意味で裏切られ,ハッピーエンドなラブストーリー。キアヌはこういう誠実な役が似合うね。プロットは好感持てたんだけど,サンドラ・ブロックにあまり魅力を感じないので,★ひとつ減らした結果に。

『トンマッコルへようこそ』…★★★★
ファンタジックに描いた珍しい反戦映画。山奥の平和な理想郷を舞台に利益相反する敵国の兵士達が,戦争の道具としてではなく,次第に人間として大切なもの,国を超えた信頼関係を築いていく姿を感動的に描いた作品。素晴らしいのは,最後の戦闘シーンでさえ,どこかファンタジックな画で仕上げてあるところ。戦争なんてものは本当に不毛だという人間の愚かさを再認識させてくれる作品。

『カポーティ』…★★★★★
重厚な演出に彩られた主演のフィリップ・シーモア・ホフマンの演技が絶品。カポーティが自分の執筆欲のために,人格を偽りながらひとつの事件に深く関わっていくうちに,次第に人格が崩壊していく様を丁寧に,丹念に,残酷に描いている。相当にヘビーな仕上がりだが,映画好きにはたまらない鑑賞感。文句なしの五つ星。

『かもめ食堂』…★★★★
ヘルシンキののんびり感とかもめ食堂の雰囲気がたまらなく良い。小林聡美が背筋がピンと伸びた自立した女性を好演。片桐はいりももたいまさこも強烈なスパイスで効いている。鑑賞感がとても良い。女性に人気があるのも納得。

『手紙』…★★★★
邦画には珍しく重厚な作りの作品。犯罪者ではなく,その家族に対する差別がテーマになっているのだが,安易に差別から逃げずに『向き合えって生きていけ』ときっぱり言い切る作り手のメッセージに拍手したい。泣きの演技をさせたら山田孝之は絶品。玉山鉄二がとても頑張っていた。この作品では沢尻エリカも良かった。差別に負けず,幸せな家庭を築いてほしいと祈らずにはいられないラストだった。

『ただ,君を愛してる』…★★★★★
作品としての出来は星二つくらい。途中で不要なシーンやだるいシーンもある。しかし,クライマックスの写真展でのシーンが僕のツボにハマりまくり。もう泣いた,泣いた。一枚の写真の持つ力を存分にスクリーンで表現していた。そこだけのオチにころっとやられてしまった。玉木宏がこんなに演技ができると思ってなかった。そして,宮﨑あおいの演技が最高。可愛い少女から大人の女性へ脱皮する瞬間を演じきっていた。素晴らしい。他人にはお奨めできないけど,僕的には満足度の高い作品。

『虹の女神~Rainbow Song』…★★★★★
『ただ,君を愛してる』と比べれば,こちらは正統派でしっかりした作り。脚本も演出もこちらの方が上。ストーリー自体も引き込まれるものがある。これも僕のツボにハマった作品。文句なしの五つ星。上野樹里がもう抜群にいい。こういう女の子を男は好きになりやすいのに,市川隼人演ずる智也は最後の最後まで自分の気持ちに気付かない。告白できない想いと気付かない本心のすれ違いが切なくて,いい味出している。そして,妹役の蒼井優の存在がとても効いている。こういう演技も出来るのか。本当に彼女は天才だ。またしても,岩井俊二ワールドに魅せられたなあ。

『父親たちの星条旗』…★★★
戦闘シーンは『プライベート・ライアン』とは違ったアプローチで,迫力ある,悲惨さも前面に出した映像になっている。しかし,英雄に仕立て上げられた主人公達の内面の描き方が不十分で感情移入できなかった。やはり戦勝国側から描かれた物語になっていて,日本人には受け入れ難い。ラストシーンで,年老いて臨終の床にある主人公は,息子に硫黄島での戦闘のことは一切語らず,星条旗を立てた後,仲間と海で遊んだ話をする。それがラストシーン。これがイーストウッドの反戦メッセージだと理解したい。

本当は1本ずつ丁寧にレビューしたかった。自分でも残念。

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2006.11.04

夜のピクニック

品川プリンスシネマ。長澤雅彦監督。多部未華子,石田卓也主演。

年に一度,全校生徒1000人で一緒に24時間夜を徹して,80kmを歩きとおす高校最大のイベントであり,伝統行事である『歩行祭』。それは,生徒達にとっては体力的には辛い行事でもあったが,高校生活を彩る絶好のイベントでもあった。3年生となり,今年で最後の歩行祭を迎える貴子(多部未華子)はこの歩行祭の間に密かな賭けをしていた。それは,一度も話したことのないクラスメイトの融(石田卓也)に話しかけること。そんな簡単なことがこれまで出来なかった秘密が二人にはあった。貴子と融は,同じ父親を持つ血の繋がった異母兄妹だったのだ。この最後の歩行祭で,なんとか融と話がしたい…そんな貴子との想いとは別に,一歩一歩進む毎に歩行祭は終わりに近づいていく。果たして,貴子の賭けの行方は…。

第2回本屋大賞を受賞した恩田陸のベストセラー青春小説の映画化。そして,主演の多部未華子は,去年公開の『HINOKIO』で好演した映画界期待の若手映画女優。期待しなかったわけがない。しかし,広島では不入りで,公開2週目にして朝1回の上映に縮小されるという映画館もあった。つまり,結論として面白くないのである。

元々,貴子と融の,父親の不倫のせいで異母兄妹になってしまったという回避しがたい事実と,そのことに対する長年の内面での葛藤が,歩行祭というかけがえの無いイベントを媒介として浄化されていく物語である。原作でも,二人の心理描写がポイントとなっている。つまり,二人の主役は,難しい貴子と融の心の揺れ,ズレを台詞なしで表現しなければならない。この二人の心の葛藤を乗り越えて浄化させていくステップの表現がこの作品では未消化で物足りなく,説得力がない。これが感動に繋がらない理由だ。正直,多部未華子演じる貴子は原作の貴子とは少し合ってなかった。一方で,融役の石田卓也はまあまあイメージは合っている。しかし,台詞のないシーン(心理描写のシーン)での演出が下手だ。特に,多部未華子はダイヤの原石のような素晴らしい魅力を持った素材。これだけの素材を演出力不足で殺してしまったのは本当にもったいない。演出の仕方次第ではいかようにも輝いたであろうに。彼女が輝かないから,作品に魅力が出なかったのだ。それが残念でならない。

しかし,良いところもあった。まずは,歩行祭をなんとか『特別なイベント』として描き出そうとした努力。大勢がぞろぞろと力なく歩くバックに雄大に広がる自然を捉えたカットの数々。特に秀逸だったのは,海辺の堤防を列をなして生徒が歩くシーンで,クレーンを使った高い視点からの遠望で,生徒達の長い列の向こうに光る海を見事に捉えていた。こういう,おっ,と思わせるカットがあるのだが,単発的で繋がってなかったのが残念だ。この作品のもうひとつの軸である歩行祭のスケールの大きさを描ききれていなかった。

そして,一番良かったのは,なんと言っても終盤,やっと貴子と融が打ち解けて,二人きりで並んで歩きながら語り合うシーンだ。長回しで撮られたこのシーンでは,お互いのわだかまりや葛藤を乗り越えて,ついに話しができたという二人の喜び,汚れなき心の高揚,開放感がスクリーンの隅々まで溢れていて,素直に心が引き込まれ,感動できた。このシーンの二人の演技には文句のつけようがない。この作品の良心と,真に目指したかったものも分かった。だからこそ,それまでの二人の心の葛藤の描き込み不足が残念でならないのだ。脚本と演出の稚拙さ…全くダメ作品ではなく,魅せるものもあっただけに,本当にもったいなく感じた。

それにしても,,多部未華子。透き通った瞳がとても美しく,笑顔が素晴らしい。存在感も抜群だ。これから間違いなく旬を迎える女優さんだ。今作では失敗したが,演出次第で演技ももっとできるはずなので,これからどんな魅力的な映画女優に育っていくか本当に楽しみだ。次回作に期待したい。

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2006.10.14

シュガー&スパイス~風味絶佳~

ワーナー・マイカル・シネマズ広島。中江功監督。柳楽優弥,沢尻エリカ主演。

高校を卒業した志郎(柳楽優弥)は大学に行く必要を感じず,”とりあえず”クルマ関係の仕事がしたいという理由で,ガソリンスタンドで働いていた。仕事にもようやく慣れてきた頃,新しいバイトとして乃里子(沢尻エリカ)が入ってくる。乃里子は年上の大学生に失恋した痛手を負っていたが,次第に志郎の優しさに癒され,二人の距離は近づいていく。そして,お互いの心は通じ合い,付き合うようになる。彼女との幸せな時間。志郎は生まれて初めて他人が自分の全てになったと感じた。そして,乃里子から『志郎が19になったら一緒に暮らそう』と提案される。これが『本当の恋』なのか。志郎は幸せの絶頂だったのだが,乃里子の心には変化が…。

柳楽君が実年齢16歳で19歳の役を演じるという難しい作品となった。自分の人生を振り返っても,高一で大学一年生の気持ちや考えは分からない。そういう意味では,彼は脚本から感じ取るイメージとスタッフからのアドバイスだけを頼りに19歳の志郎を演じ上げたのだと思う。原作の志郎は21歳の設定だが,柳楽君のために若干設定が変えられている。『高校を卒業して初めての恋,そして失恋…そして,男としての成長』とした方がインパクトがあるし,柳楽君が演じるにしてもぴったりの設定だ。そして,弱冠16歳の柳楽君は,いかにも彼らしい役作りでシャイで優しい19歳の志郎を作り上げ,不安定に振れながらも作品の中で志郎と同じように成長し,見事に演じきっている。これがこの作品の最大の見所だ。乃里子役の沢尻エリカは20歳なので,精神年齢を下げずに柳楽君に合わせ,志郎に寄り添う乃里子を演じるのはとても難しかったと思うが,年上の強気を抜いた控え気味の演技で,スタッフの演出協力もあり,うまく乗り切っている。二人が恋人に見えたこの時点でこの作品はある程度成功の域に達していると思う。鑑賞後の感想は『なんかテレビの2時間ドラマみたいなテイストやったなあ』だが,それを何とか映画作品に引き上げたのは柳楽君の存在だ。やはり柳楽君にはテレビタレント等とは違う彼独特の特別な存在感があり,柳楽君あっての志郎だし,柳楽君が主役を張る時点でそれはもう一本の立派な『映画作品』なのである。

原作では,志郎は何の前触れもなく,乃里子の心変わりの前に突然フラれる。詳しい理由の説明の描写は全くない。わざと淡々と描くことで,作者の山田詠美は『女の子の恋心に理由なんてない。そんなふうに移ろい易いものなのよ』といった感じでさっぱりと割り切って書かれている。映画では,グランマ(夏木マリ,怪演)の大昔の失恋と絡めて,乃里子の心変わりの理由の提示を用意しているが,それは映像化するために万人に乃里子の心変わりにもちゃんとした理由がある,と納得させるための作品としての演出だ。確かに物語に広がりと繋がりは出たが,僕は原作のように説明がましくなく,さっぱり描いてくれた方が,女の子の気持ちの本質,そして本当の恋に必要なもの,がもっと鮮明になってよかったのではないか,と思っている。さすがの沢尻エリカも,この乃里子の心変わりの心理表現については巧くできてなかった。演出不足のせいもあろうが,この辺がちょっと安易で『2時間ドラマ的なテイスト』になっている原因なのではないだろうか。

だから,『二人が幸せ絶頂の時まで』と『キャラメルの箱に書かれてあった文字(滋養豊富 風味絶佳)を見て,志郎がフラれた理由に気付き,本当の恋とはどんなものかを悟るラストシーン』の場面の描き方はとてもよかった。どちらもグランマの存在が絶妙のスパイスになっていた。そして,ラスト近くの最後に乃里子を自転車で追いかけるが追いつけず,自分が失ったものの大きさに気付いて声にならない声で泣き叫ぶ切ない志郎の姿にはジンときた。僕も恥ずかしながら,19歳の時に同じような経験をしたことがある。十代の恋とはそういう風に甘酸っぱく,切ないものだ。柳楽君に自分に重ねることができて,グッと作品に引き込まれたシーンだった。そして男は一歩大人への階段を上がれるんだよ。真に恋とは『シュガー&スパイス』。好きな気持ちだけじゃだめなんだ。大人の恋って,難しいねえ。

そう,『優しいだけ』の男は最終的には選ばれずに『返品』されるのだ。初めての失恋という代償を払い,そのことを体験した志郎の次の恋が素晴らしいものになることを祈りたい。

この作品は,主演者達と同年齢近くの男女が観れば,それなりに共感が得られる作品に仕上がっているのではないだろうか。または僕と同じように,十代後半や二十代前半に失恋の痛手を負った人向け。素直に感情移入できる。ただの失恋映画ではなく,最後にちゃんと救いが用意されていて,元気づけてくれる。しかし,それ以外の世代の人には,やはり『2時間ドラマ』的な印象で,感情移入しにくいのではないだろうか。

柳楽君は16歳で19歳の役を演じられるなんて,本当にいい経験積んでいる。これからどんな役者さんに育っていくんだろう。これからが本当に楽しみ。この作品は彼のいろんな表情,演技が観れて,そしてそれがどれも魅力的だったのが収穫だった。これからも応援していきたい。

ちなみに原作『風味絶佳』は6編の短編集。山田詠美が,女性心理の本質を絶妙の表現で描いており,奥が深く読み応えたっぷりの作品。特に僕みたいに恋愛経験の少ない男性の方にはとても女性心理の勉強になるので,是非読んでみてほしい(笑)。映画では,作品中の名台詞が各所で絶妙に使用されて,真に風味絶佳な味を出している。

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2006.09.26

ゆれる

シネツイン1。西川美和監督。オダギリジョー,香川照之主演。

東京で写真家として成功している猛(オダギリジョー)は,母の一周忌で久しぶりに帰郷する。実家には,地元に残り家業を継いだ兄・稔(香川照之)と父が暮らしていた。猛は稔と,二人の幼馴染の智恵子と3人で近くの渓谷に遊びに行った。そこは兄弟が幼かった頃,両親がよく連れてきてくれて思い出の場所だった。だが,稔にその記憶はない。懐かしい場所ではしゃぐ稔を置いて,猛は渓谷の吊り橋を渡って写真を撮りに行く。猛に想いを寄せ,後を追う智恵子は吊り橋を渡る。追いかける彼女に密かな想いを抱く稔。そして,遠くから吊り橋を見上げる猛は,橋の上での二人の信じられない光景を目の当たりにするのだった…。

ちょっと緩いオープニングで始まるのだが,ドラマは吊り橋の上で予想外の展開を見せ始める。相反する兄弟二人の心理描写と繊細で出来の良い脚本と見応えのある演出が魅力たっぷりに魅せる兄弟のせめぎ合い。香川照之の演技が相変わらず凄い。細かな表情から所作まで全く隙がない。真に完璧の演技でスクリーンにぐいぐい引きこまれる。オダギリジョーもこの作品では負けずに頑張っている。面会室での稔に対峙するシーンや,裁判での衝撃の告白をするシーンの曇った目の奥の輝きの鋭さには感心した。こんな演技もできるようになったのかと。裁判シーンも本格的で,本当にぐいぐい引き込まれる。果たして真実は何が起こったのか。『ゆれる』とは物語に出てくる吊り橋のことを象徴しているのかと思っていたら,そうではなく,登場人物達の心情が『ゆれる』のだ。その描き方が抜群に巧い。考え抜かれたカメラアングルとカット割り。部分的に挿入される数パターンの吊り橋上の出来事の描写。ひとつである真実が猛だけではなく,観客にも最後まで多面的に観え,観客の感覚も『ゆれる』のだ。久しぶりに娯楽という面ではなく,ドラマの部分で魅せられる最上級の仕上がりの映画を観た。映画好きにはたまらない出来上がりの作品になっている。とても繊細に,丁寧に作り込めれた作品。これぞミニシアターで観るべき作品だ。低予算でもこういう良作は出来るのだ。だから映画は面白い。上映館のシネツイン1は1回目の上映から満員の大入り。2回目を待つ行列が出来ていた。とても嬉しいことだ。そして何よりも,作品の最後に『救い』が用意されていることがより鑑賞感を高めてくれて,満足度もより一層高まる。絶対にお薦めできる,映画好きに観てほしい一本だ。

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2006.09.13

ラフ

広島宝塚1。大谷健太郎監督。長澤まさみ,速見もこみち主演。

亜美(長澤まさみ)と圭介(速見もこみち)は,同じ和菓子屋の商売敵の家に生まれたが,同じ高校に入学し,亜美は高飛び込みの選手,圭介は競泳選手として出会う。初めはいがみあっていた二人だが,学生寮生活や水泳への情熱を通し,次第に惹かれあっていく。しかし,亜美には幼馴染で年上の婚約者がいた。それは圭介の憧れ,競泳自由形日本記録保持者の仲西弘樹だった…。

公開わずか1週間で不人気のためか,広島では夜の上映がなくなってしまい,仕方なく大スクリーンで観るために,朝の9時からのこの上映一回に合わせ,前日2時まで飲んでいたにも関わらず,自宅からタクシーまで使って(笑)観にいった作品。それもこれも長澤まさみの水着姿を大スクリーンで観るため,といういかにもオヤジらしい理由だった。広島でたぶん2番目に広い映画館に,僕の他は高校生友情割引使用の女子高生達(もこみち狙い?)20人ほどしかいなかった。

作品については,あだち充作品の最大の魅力である『間の美学』が全く表現できていないし,主人公二人がなぜお互いを好きになっていくのか,という最も重要な部分がすっかり抜けていて(これがこの原作の一番魅力的なところ),原作ファンとしてはダメ出しせざるをえない出来栄えの作品になっていて残念だった。速水もこみちの圭介は,やっぱりイメージ(主に外見によるもの)が全く違って感情移入できなかった。これはもこみち君のせいではない。キャスティングの失敗だ。

但し,長澤まさみのアイドル映画と観れば,その評価は変わってくる。それはこの作品が,恐らく彼女の最後の水着姿が拝める作品になるだろうからだ。彼女はとにかく手足が長くスタイルが抜群に良い。終盤で,グラドルの市川由衣と競泳水着で並んで映るカットがあったが,両者のスタイルの差が歴然。長澤まさみの方が遥かに美しい。とにかく脚長い~。こんなビーナスみたいな長澤まさみと比べられる市川由衣が可哀想だよ。この美しい姿が今後観れないかと思うと本当にもったいない。彼女に演技力がついて,もっと大女優になった時に,違った意味で価値が上がる作品になるかもしれない。この作品のDVDを発売する時は,長澤まさみの水着シーンのみをピックアップしたメイキング特典別ディスクを付けるべきだな。てか,その方が絶対売れるって。しかし,東宝のガードは固い。『タッチ』の時は発売されていた作品のオリジナル写真集等というものは,この『ラフ』では発売されていない。 東宝としては,『まさみの最後の水着姿が観たいのなら,映画館へ来い』ということなのだろう。(今回僕はまんまとその思惑に釣られたのだが…)

その代わり,水泳と高飛び込みのシーンは,とても迫力あり,綺麗に撮れていた。カメラワークも各カットもアイデアに溢れ,この部分においては,クオリティは高いと思った。圭介と仲西の最後の対決まで描くとは思っていなかったが,この競泳シーンはとても良く撮れていた。確かに漫画では表現できない世界だと感じた。ただ,圭介の最後のガッツポーズの最終カットはいらないと思った。どっちが勝ってたかなんて,みんな原作の連載の時から分かっていたんだから…。

速水もこみちの熱狂的なファンの女の子と,長澤まさみの水着姿目当ての方以外にはあまりお薦めできない作品だ。しかし,長澤まさみの持つ今後の可能性の大きさ,伸びシロの大きさを十分に感じさせてくれる作品ではあった。『タッチ』からもグンと伸びていた。秋クールのドラマ,『セーラー服と機関銃』は絶対観なければ(当然,水着姿目当てではありません),と心に誓う。長澤まさみのファンになってしまったようだな(バカ)。

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2006.05.13

LIMIT OF LOVE 海猿

ワーナー・マイカル・シネマズ広島。羽住英一郎監督。伊藤英明,加藤あい主演。

潜水士となって2年。大輔(伊藤英明)は鹿児島・第十管区に異動となり,海難救助の最前線で働いていた。恋人・環菜(加藤あい)との結婚話も進み,彼女が鹿児島に手作りのウェディングドレスを見せに訪れてくれるが,心に引っかかることがり,素直に喜べない。そんな時,鹿児島沖で大型フェリーの座礁事故が発生。大輔も現場に急行する。フェリーには620人もの乗員・乗客が。大輔達は彼ら要救助者を救えるのか…。

一昨年に映画が,去年にドラマが製作され,その完結編として製作された映画の第2弾。映画のPART1は,潜水士を目指す若者達の青春群像を描いてなかなか見応えのある作品だったし,ドラマの方は潜水士になった大輔の成長劇を縦軸に,環菜との恋愛・信頼関係を横軸に,生と死,仲間との信頼関係の重さを丁寧に描いて高い完成度だった。そして,この第3弾は,映画らしいスケールの大きさで更に満足度の高い作品に仕上がっていて,PART1から観続けている者を失望させることのない出来栄えになっている。

海難パニックものの映画としては,なんと言っても『タイタニック』が挙げられるが,さすがにあそこまでお金はかけられないので,船内パニックと次々と襲い掛かるパニック描写はかなわないが,邦画として観れば,かなり高いレベルをいっていると思う。本当は,最初の620人が逃げ惑うパニックぶりをもう少し迫力たっぷりに描けたら,もっと重厚な仕上がりになったと思うが,大輔がたった2人の要救護者を救うために命を懸ける物語として観れば『タイタニック』と比べても失望することはない。

この作品のキーワードは,『決意』と『信頼』と『愛』である。潜水士として経験を踏んだ大輔が誓う要救護者を絶対に助けるという『決意』とどんなことがあっても仲間は助けるという『信頼』と環菜に対する深い『愛』である。この3つが非常に巧くシンクロするのが,最大の見せ場である,脱出直前の環菜への携帯電話からの愛の告白であり,この一言一言の重さが困難を経て生き抜こうとする大輔の人間としての成長を物語ってくれる。

ややパニックの作り込み方や物語の展開が唐突で突っ込みたい軽いところはあるが,それは,出来のよいCGとセット,海上保安庁全面協力による迫力ある映像に免じて見逃すこととする。終盤の見せ所はこれでもかというお涙頂戴の展開だが,これも演者とスタッフの目に浮かぶ努力に免じて緩そう。

とにかく劇場版PART1とドラマを観ている人は必見。単品で観ても十分のめり込める作品に仕上がっている。伊藤英明は格好いいとは思わないが,彼が演じる仙崎大輔は文句なしに格好いい。主人公が格好良く描かれている映画にハズレはない。特にカップルで観ることをお薦めする。

パンフを買おうとしたら売切れだった。製作の裏話が読みたかったな。原作漫画は読んでないけど,PART4があってら絶対観にいく。てか,作ってほしい。この奥の深い世界観にはハマリますわ。

ラストのキスシーンには感動とともに苦笑。僕も誰かにあんなふうに言われてみたい(アホ)。

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2006.05.10

トム・ヤン・クン!

新宿シネマミラノ。プラッチャヤー・ピンゲーオ監督,トニー・ジャー主演。

タイのある村で,象の親子を育てて生活する父と子,カーン。やがて親象を王様に献上するための審査会に参加するが,国際密輸組織に象の親子を連れ去られてしまう。国際密輸組織のアジトがオーストラリアにあるとしったカーンは象の親子を助けるため単身オーストラリアに向かう。そこではカーンと国際密輸組織との壮絶な戦いが待ち受けていた…。

『ワイヤーなし!CGなし!スタントなし!』で驚きのアクションを観せてくれた『マッハ!』のスタッフが,更なる大きな仕掛けを盛り込んで極上のアクション映画を完成。『マッハ!』の『痛い=本気度100%』のアクションにも恐れ入ったが,コイツは更に凄い。とにかく主演のトニー・ジャーのアクションが凄い。それも,ゲームのようにいろんなステージが用意されていて,それを違った技を駆使しながら,クリアしていく感覚。もちろん観客は,トニー演じるカーンになった気分で,このスリリングなゲームをクリアしていくのだ。この体験が爽快・痛快でないはずがない。

一番の見せ場は,中盤くらいにある敵のアジトでの決闘のシーン。螺旋階段を上りながらそれぞれのフロアで何十人もの敵をなぎ倒していく。時間にして恐らく10分弱。これが,なんとワンカメのワンカット,編集無しなのだ!もちろん敵を倒す技に同じものはなく,トニーは留まることなく敵を倒しながら階段を駆け上がる。カットの最後の方は,さすがに乳酸溜まりまくりなのだろう。技のキレが若干落ちていくのも目に見えて分かるが,ステージ終盤でそれがまたどんどん上昇してくるのだから凄い。このシーン観せてもらっただけで,もうチケット代でおつりがくるくらいの満足感。これでスケールダウンすることなく,アクションシーンはどんどん面白くなっていくのがまた凄い。

ややストーリーの展開がつじつまが合わなかったり,唐突だったりするが,それも『マッハ!』に比べれば,格段に進歩しているので,納得できる範囲だ。この作品は難しいこと考えずに単純に2時間の娯楽を『買う』という意味ではうってつけの作品だ。損をしたとは絶対に思わない。とにかくトニー・ジャーの『現在世界最高峰』のムエタイアクションを実際に体験してほしい。脚本次第では,もっと面白い映画に化ける可能性大の魅力あるアクションスターの新星である。

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2006.04.14

映画はどうなった?

ここは映画ブログでもあるのだが,もう1ケ月以上も映画の記事をアップできていない。3月は転勤が決まっていたせいもあり,仕事が忙しかったせいだが,それにしてもサボリ過ぎだよね。ぴあも広島に帰ってきて買えなくなったので,観る映画をチョイスできない。今週末は飲み会と磐田遠征があり,またも観にいけないのだが,来週はタウン誌でも買って次の作品をチョイスしよう。しばらくレビュー書かないと自分のスタイル忘れてしまいそう。

2月と3月初めまでで観た映画と一言コメントを。

『男たちの大和 YAMATO』…戦闘シーンの視覚効果は『プライベート・ライアン』そっくり。大型セットを使い迫力を演出したが,もっとCGを使って大和全体が見えるカットもあった方がよかったかも。この点は『タイタニック』は上手かった。しかし,これ観て泣けるかね。結構人が入っていて,多くの人が泣いていたが,俺は泣けなかったな。

『THE有頂天ホテル』…すっごい期待して行ったのに,ほとんど笑えなかった。小ネタの連続で,どこが爆笑のツボなのか逆に分からないような印象。僕の好きな松たか子のシーンではことごとく彼女が滑っていて軽いめまいがしたほど。役所広司は大奮闘だったけれど,オダギリ・ジョーにああいう役させて,それがハマっていて面白い方が印象に残った。豪華出演陣のわりには普通の出来栄え。もうひと工夫ほしかったな。

『博士の愛した数式』…爽やかな鑑賞感の作品だった。前向きな姿勢の作風が良かった。しかし,深っちゃんがついに『お母さん』ですよ。デビューの頃から彼女を知る世代にとっては超衝撃の設定。でも,彼女の素の良さが作品の中で上手い具合に料理されていた。吉岡秀隆は役にとらわれない演技が出来ていて着実にいい俳優として成長していると思う。

『フライトプラン』…ジョディ・フォスターの主演作とあってかなり期待していたが,サスペンスとしては今イチの出来。J・フォスターがもっと飛行機の設計者としての知識を駆使した活躍&謎解きを期待したが,この辺のパンチが弱い。特にラストのクライマックス(オチ)があれでは…観てる方は納得しかねる。なぜ母と娘は助かったのか?その辺が説明不足で,すっきりした気分で帰れなかったのが,この作品の評価に繋がるのかな。

『ミュンヘン』…とてつもなく重く,暗い作品。何の救いもない。だから鑑賞後もどーんと落ち込んでしまう。スピルバーグが言いたいことはなんとなく分かる気もするが,主張もクリアでなく他面的なのでどの様に解釈したらよいのかに苦しむ。このテーマで2時間44分もの大作が撮れるのはスピルバーグだからこそ?世界の不条理に悩んでいる人にだけお薦めできる作品。でも,家でDVDで観る作風ではないわな。

『県庁の星』…キタよ,織田裕二の成りきり空回り全開演技大爆発の作品。どんな作品も自分独自の『演出』で役作りしてることを観客にこれだけ押し付けがましく主張できるのは,良くも悪くも織田裕二の凄いところと言うべきか。その演技が上手いかどうかは彼の場合は関係ないか。柴咲コウがほどよくアク抜きになっていた。ラストのエピソードがやや爽快感に欠けるのも,コメディとしては今イチの評価になるか。いや,織田裕二は俺ら同世代の星かもしれない。矢田ちゃんとか柴咲コウとか,一回りも違うトップ若手女優陣といい関係になれる…そういう意味では,福山雅治と並んで尊敬するし,もう何年かその位置でいてほしいと願ってしまう。

以上,1ケ月以上溜めていた一言レビューでした。

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2006.02.14

キング・コング

北島シネマサンシャイン。ピーター・ジャクソン監督。ナオミ・ワッツ,ジャック・グラック,エイドリアン・ブロディ他出演。

大恐慌時代の1933年のニューヨーク。売れない女優のアン(ナオミ・ワッツ)はB級監督のカール(ジャック・ブラック)にスカウトされ,撮影隊と脚本家のジャック(エイドリアン・ブロディ)を乗せた船は航海の途中,深い霧に包まれ座礁してしまう。漂着したのは,カールが目指していた孤島,スカル・アイランドだった。クルー達は早速上陸するが,待ち受けていた先住民に襲われ,アンは連れ去られてしまう。彼らはあるものにアンを生贄として捧げる。やがてアンの目の前に現れたのは…。

正月に観た映画をやっとアップできます。他にも観た映画はあるけれど,これだけは絶対にアップしないと。最高級のカタルシス。映画を観て,こんなに純粋に楽しめ,感動したのはいつ以来だろう。鑑賞後に溢れる高揚感。気持ちの高鳴りに魂が震える。素晴らしい出来栄え。CGはもちろん最上級に素晴らしい。スターウォーズに匹敵する,いや凌駕してしまうかもしれない。キング・コングの体毛の一本一本の描き込みや,顔の皺,そしてトドメは,コングの目,瞳の描き込みの素晴らしさがこの作品の良否を決定してしまっている。この瞳がCGなのか。本物と見紛う瞳の輝き,曇りにコングの喜怒哀楽が120%で表現されていてもう感情移入せずにはいられない。コング対恐竜のバトル等,アイデア溢れる構図のクオリティの高い画をこれでもか,とお腹いっぱいになるまで魅せてくれる。観る前は,単なるCGアニメと実写の合体モノと思い込んでいた予想をひっくり返してくれる。ここまで完成度が高いと感動モノだ。

そして,もっと凄いのは単なるVFXモノに終わっておらず,ドラマとしてもかなり上級の仕上がりのラブストーリーに仕上がっている。ナオミ・ワッツってこんな美人だったか?この時点でもう僕はこの作品の魔法にかかっているのだ。ラスト近く,コングはエンパイア・ステートビルに上るが,それはアンと二人で朝日を見るためだったのか。そう考えると,なんともロマンティックだし,美しいプロットだ。やがて訪れる悲劇の前で,朝日を眺めるコングとアンの姿の美しさが余計に際立つ。ラスト,戦闘機とのバトルの末,コングは息絶え,ビルの下に落ちていく。アンとの別れの時。コングの表情,最高に感動させる。転落したコングの顔をあえて写さなかったのは正解だと思う。あと,コングとアンが公演の凍った池の上でじゃれあうシーンは良かった。最高の美女と野獣のデートシーン。作り手の良心が見える。

この作品は,この純粋なラブストーリーの裏側にある,人種差別や,人間でないもの,異形のものへの拒絶感の残酷さ,空しさもきちんと描いている。動物擁護を訴えながら,コングのような異形の象徴を都合のいいように扱う人間の傲慢さを見落としてはいけない。

監督・スタッフのキング・コングへの思い入れ・愛情がいっぱい詰まった入魂の一作。3時間8分,スクリーンに釘付けの驚くほどに完成度の高い作品に仕上がっている。生涯ベストの何位かには絶対に入れたい作品。ピーター・ジャクソン監督,恐るべし。『ロード・オブ・ザ・リング 王の帰還』のような素晴らしい作品に続いて,これほどの作品を観せてくれるとは。次回はどんなマジックで僕らを驚かせてくれるのか,今から楽しみだ。

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2006.01.04

年末と年始の映画

明けましておめでとうございます。

ここはサンフの話題がない時は,映画ブログになるはずなのですが,去年は週末に体調が悪かったりしたことが多くあったせいもあり,一昨年の100本強と比較してはるかに少ない40本弱で終わってしまいました。週1本の最低ノルマも達成できていない…ちょっとへこんでます。11月と12月は,『アワーミュージック』と『イン・ハー・シューズ』と『大停電の夜に』と『Mr.&Mrs.スミス』を観ていますが,レビューをアップできていません。『アワーミュージック』は衝撃的な作品だったのですが,僕には難解すぎて理解できなかったのでレビューは書きません。その他の作品は,公開が終わっていたりしますが,サンフがオフの間にレビューを書いていこうと思います。

さて,2006年の1本目は『キング・コング』をチョイスしました。帰省先のシネコンで観ました。これが大当たり。いきなり素晴らしい作品に出会えました。映画好き必見の作品です。後日,詳細なレビュー書きます。絶対に観て損をしない作品だと思いますので,是非鑑賞して下さい。作り手の作品に対する愛情が溢れているこだわり深い作品でした。

さて,今年は何本観れるのか。50本~100本の間を狙って鑑賞することにします。もちろん残りの休みの時間はサンフに全力投球で今年も行きますぜ。

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2005.11.30

ALWAYS 三丁目の夕日

品川プリンスシネマ。吉岡秀隆,堤真一,薬師丸ひろ子他出演。

昭和33年,東京タワーが完成するこの年,東京下町の夕日町三丁目の自動車修理工場,鈴木オートには,短気な頑固親父の則文(堤真一)と母親のトモエ(薬師丸ひろ子),小学生の一平(小清水一揮)が暮らしていたが,集団就職で上京してきた六子(堀北真希)が住み込みで働くようになる。一方,鈴木オートの向かいにある駄菓子屋の店主の竜之介(吉岡秀隆)は,作家を目指しながら,今は少年誌に子供向けの冒険小説を執筆しつつ,細々と生活している。そんな竜之介が恋心を抱く一杯飲み屋のおかみ・ヒロミ(小雪)のところに引き取り手のない少年・淳之介(須賀健太)が連れてこられるが,竜之介は酔った勢いでヒロミに言いくるめられ,淳之介を預かることに…。

鑑賞前は実は全く期待していなかったのだが,これが意外や当たりの作品だった。ホームランとは言わないまでも,イチローのクリーンヒットのような爽快感が残った。たくさんの人に観てほしい,ほんのり温かい良心的な作品に仕上がっている。

昭和33年の東京の町並みを忠実に再現したセットと程ほどに出来栄えの良いCGを駆使して僕らをその時代へタイムスリップさせてくれる。CGは少し安っぽさが残るがそれがまた時代を感じさせ,雰囲気を出している。この雰囲気作りに成功した時点で,この映画は成功の鍵を手に入れたと言っていい。あとは役者がそれに乗っかるだけ。吉岡秀隆は,滅多にみないダメ男役だったが,彼らしい誠実さと相まっていい味だしていてとても良かった。堤真一はこの時代の頑固親父にはズマートすぎて残念ながら見えなかった。が,彼もメリハリの効いたいい演技で物語を締めてくれた。僕的には,中・高校時代の最強アイドル・薬師丸ひろ子が見事に『おばちゃん役』を演じていて,違和感が全くなかったのにちょっと軽く脳震盪が…。でも,今放送中のドラマ,『1リットルの涙』の母親役でもそうだが,しっかりした演技ができる女優さんに成長したのだな,嬉しくと思う。ちょっとしたサプライズは,堀北真希が結構いい味出していたことだ。ドラマ,『野ブタ。をプロデュース』では全然違う役柄を演じているが,あちらも味のある演技をしている。演技に幅がある。ただのアイドルの一人としてしか見てなかったが,このコは結構良い素材なのかもしれない。小雪は,やはりこの時代の女性にしては浮きすぎていたが,逆にそれが作品を地味にせず,いいアクセントになっていた。そういう小雪演じるヒロミを真剣に好きになり,婚約指輪の箱しか買えなかったのにヒロミにプロポーズする竜之介。見えない幻の指輪を竜之介がヒロミにせがまれて,はめてやる素振りをするシーンには,ちょっとジ~ンときた。それに,トモエの付けてくれた『お守り』のおかげで無事に家に帰ることができた一平が素直にトモエに『ありがとう』と言うシーンにも,親子の優しさと思いやりが溢れてきてジンときた。

そう,どれもよくあるプロットなのだが,豪華なキャスト,味のある役者が丁寧に演じて,それをまた丁寧に描いているので,見応えもあり,素直に感動できるのである。本当に温かい作品だと思う。

しかし,ふと疑問に思った。これは,『昔はこんな良き時代があったんだよ』ということを懐かしむ作品なのか。それとも,『今も変わらずそういう人情が日本人の中に生きている』ということを再認識するための作品なのか。できれば,他のほとんどの鑑賞者の感想は後者であってほしいなあ,と願いたい。

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2005.11.21

春の雪

新宿グランドオデヲン座。行