2009.06.25

ターミネーター4

スカラ座。マックG監督。クリスチャン・ベイル主演。

シリーズ第4弾。『ターミネーター』の怖さよりも,ドンパチが主軸のただのアクションものになってしまったのが残念。プロットもいくらでも捻りようがあったろうに残念な出来になっている。これで製作費190億円!すげえ。CGだけど,シュワちゃん出てくるのね。それでもあの展開…工夫がない。残念。『2』は傑作。『3』よりはマシって感じかな。シリーズに思い入れの強くない人なら観れるアクションもの。でも『5』もあるらしいが本当?…。

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.ザ・スピリット

広島バルト11。

『おと・な・り』上映までの時間潰しで観た。が,全く面白くなかった。監督や主演を調べるのも面倒だ。退屈な場面・間が多すぎた。正直退屈だった。これでこの後観た『おと・な・り』が良くなかったら最悪だったが,『おと・な・り』は佳作だったので救われた。こんなに本数観ていない年なのに,こんな地雷を踏むとは…ショックだ。

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2009.06.19

おと・な・り

広島バルト11。熊澤尚人監督。岡田准一,麻生久美子主演。

とても鑑賞感の良い作品だった。久しぶりの佳作に当たった感じ。

隣の部屋の音がまる聞こえの壁の薄いボロアパートに住む隣同士の30歳の男女のラブストーリー。

ラブストーリーと言っても,この二人はなかなか出会えない。長年慣れ親しんだお互いの生活音に心地よさを感じながらも,顔を合わすことはない。観ている方にとっては『じれったい』展開が続く。男女それぞれに独自のプロットが並行的に進む。それぞれのエピソードも30代男女なら,なるほど,と唸らされるもので,脚本も良く考えられて作られている。

更に主演の岡田准一,麻生久美子共,なかなかの好演で,とても親近感のわく魅力的なキャラを演じている。女性は『岡田君,かっこいいわ』とメロメロになるだろうし,男性は『麻生久美子,いいわあ』とホレてしまう。そういう意味でもこの作品は成功しているのだ。

男女それぞれの側の脇役のキャラも立っていて面白い。

それでいて,なかなか出会えない二人にやきもきしながら,観客はどんどん物語に惹き込まれていく。この作品の『音』を主役にした不思議な感覚にも。

さて,数々のすれ違いを乗り越えて,二人は出会えるのでしょうか。結末は劇場で観て下さい。最高に幸せな気持ちになれること,間違いなし。そして,なんと言ってもエンドロールが秀逸。最後まで席を立たれぬようご注意を。カップルで観るには最上級のデートムービーでもありますね。

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2009.06.13

アイ・カム・ウィズ・ザ・レイン

サロンシネマ1。トラン・アン・ユン監督。ジョシュ・ハートネット,イ・ビョンホン,木村拓哉出演。

キムタクが『現代のキリスト』を演じる物語。はい,日本人向け説明,おしまい,って感じの作品。日本のトップアイドルを遣いながら,大衆性の欠片もないマイナーな作品。観ていてとにかく『痛い』。痛みだけが鑑賞感として残り,カタルシスなど微塵も感じない作品。恐ろしく鑑賞感の悪い作品。

ただ映像には凝っていた。タイトルとなる『キリスト復活』のシーンのおぞましさ等は『狙って画を撮っているな』と感じさせる。そのスタイリッシュさだけは認めよう。

キムタクは普通の演技は観れたのだが,英語の台詞回しが絶望的に下手で,ラスト近くの重要な場面が白けてしまったのは残念だった。

実は僕はこの監督が俊英と呼ばれるに至った過去の作品を観たことがない。この監督が次回作であの『ノルウェイの森』を撮る。大丈夫なのか?その不安だけが大きく広がった作品になってしまった。

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2009.05.29

重力ピエロ

シネツイン本通。森淳一監督。加瀬亮,岡田将生主演。

観終わった後は,正直,『ミステリーとしては今イチやなあ』とか,『同じ伊坂幸太郎原作では「アヒルと鴨のコインロッカー」の方が面白かったなあ』と思った。

が,しばらく時間をおいて考えると,これはミステリーメインの話ではなくて,『家族の強い絆』を描いた作品だったんだと思うようになった。

『父と母と二人の息子との絆』,『父と二人の息子との絆』,そして『二人の兄弟の絆』をわざと淡泊に濃い味付けをせずに描いた作品ではなかったろうか。

ミステリー部分はあくまでスパイス。そう考えると納得がいく。

父親役の小日向文世の優しさと強さがいい。泉水役の加瀬亮の不器用な弟思いの姿にジンとくる。尋常でない業を背負った春役の岡田将生の思いの強さに胸が詰まる。

また,兄弟が少年時代のエピソードも絶妙の味付けになっている。

これは悲劇的な家族の痛みを描いた作品ではなく,家族の深い愛と絆を描いた作品であると考える。

パンフレットの伊坂幸太郎のコメントに『泣けないけれど感動的な話』とあった。なるほど。そんな感じだ。この不思議な鑑賞後の余韻を表すのにぴったりの言葉だと感じた。そういう意味では,時間を置いた現時点では『佳作』に入ると思うのだ。滅多にない不思議な作品だ。

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2009.05.27

グラン・トリノ

広島バルト11。クリント・イーストウッド監督・主演。

78歳のイーストウッドが偏屈な頑固爺を名演で魅せる。人としての『生き様』を考えさせられる傑作。

合わせて,『古き良きアメリカ』とは何だったのか。そして『新しいアメリカ』はどこにいくのかを考えさせられる衝撃のラストシーン。上手い,と唸らされる。

贅肉など微塵もないシンプルで骨太な作りが王道を感じさせる。イーストウッド作品に外れ無し。若い世代にこそ観てもらって,いろんなことを感じてほしい作品だ。

ちなみにイーストウッドは今作を俳優としての引退作とするそうだ。そういう意味でも必見の作品である。

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2009.05.25

GOEMON

広島バルト11。紀里谷和明監督。江口洋介主演。

実は僕はこの紀里谷監督の04年の超問題作『CASSHERN』の数少ない肯定派の一人だ。みんながこぞって『超駄作』と酷評した作品に素直に感動し,ナイトで2回観て終電逃して,有楽町から1万2千円使ってタクシーで帰った経験がある。今,冷静になって考えてみればなぜあれほどまでにあの作品にのめり込んだのかよく分からないのだが,メッセージ性の強いアクのある作りが好みに合ったのだと思う。

だから,僕は紀里谷監督の劇場作品第2作目にあたる本作に対して他の皆さんより圧倒的にハードルが低い。その上での感想になるのでご容赦願いたい。

まず,予想していた以上に江口洋介がいい。おまけに全く期待してなかった大沢たかおもいい。彼らが五右衛門や才蔵である必要性は全く感じない脚本の不出来なのだが,彼らは頑張っていた。

殺陣もCGエフェクトを駆使した斬新な作りで新しいアプローチ。ただ,あまりにもCGに頼りすぎて少しゲームっぽい画になってしまった残念感はある。が,ここまでCGを使い尽した迫力ある映像は邦画では観たことはないので,そういう意味ではエポックメイキング的な作品になると思う。アニメ風の画のアレンジが洋画には出せない味なんだろうな。

ただ,脚本には難がある。話を詰め込み過ぎ。シンプルに起承転結とならず,あっちへ行ったり,こっちへ戻ったり忙しい話になっている。そのため,作者の伝えたいメッセージが明確にならず,ストレートに伝わってこなかった。ここはマイナス点。

茶々役が広末涼子というのも僕的には納得しかねる。てか,この話の中で茶々の役割って特にないじゃん,って感じで。少女期を演じた福田麻由子ちゃんが抜群に良かっただけに,ここは残念なところ。

衣装と美術は凄いね。舞台劇的アレンジなんだけれど,良し悪しは別にしてよくあそこまで割り切れたものだ。これも新しいチャレンジと評価したい。

考えてみれば,ハチャメチャな話だが,娯楽作品と捉えればそこそこ楽しめる。『CASSHERN』がトラウマになっている方も,そう怖がらずに劇場に足を運んでみられてはいかがか。


(以下,ネタバレ)


ラストシーンは納得しかねる。五右衛門が一人道端に倒れて死んでしまうなんて芸がなさすぎる。ここに茶々を絡めるとか,あの象徴的な『ホタルの滝』をもう一度使うとか素人でも考えそうなことができなかったのかと思う。

ただ,五右衛門が家康を意図的に斬らなかったというプロットは面白い。扇子の前振りがもっと効いていれば一層効果的だったと思う。惜しい。

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2009.05.18

おっぱいバレー

広島バルト11。羽住英一郎監督。綾瀬はるか主演。

まず入場券買う時に困った。この歳のおっさんがカウンターの若い女性に『おっぱいバレー,一般一枚』っていうこっぱずかしさ。このタイトル,確信犯だよなあ。

時代設定は1979年。四十代半ばの人(特に男性)が観ると真にツボの作品である。こういう少年時代はあの時代に確かにあった。若い女性教師のおっぱいを見るためだけにバレーに打ち込む。このバカさが若さ溢れるパワーであり,かえって潔い。単なる感動モノに終わらず,最後までバカに徹しているのにも好感だ。

ただオチがもうちょっと毒があった方が面白かったかな。きれいに纏め過ぎた感じ。

固いこと言わずに気楽に観る作品。あの時代へタイムスリップしたい方はどうぞ。おじさんよ,あの少年時代の不屈の精神を忘れるな(笑)。

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2009.05.15

スラムドッグ$ミリオネア

シネツイン新天地。ダニー・ボイル監督。デーヴ・パテル主演。

アカデミー賞最多8部門受賞作品。

どんだけ凄い作品かと思ったが,鑑賞後の感想は傑作と言うには及ばずそこそこの『佳作』だった。主人公ジャマールの人生とクイズの問題がシンクロしているところは面白いが,それだけで広がりや意外性がない。それだけスラムの悲惨さ・残酷さが淡々と描かれていると言えばよいのだろうか。でも,どう考えても『傑作』とは言い難い。


(以下,ネタバレ)


冒頭の観客へのクイズ,『彼はなぜミリオネアになれたか』の答えは,『運命だった』だったけど,最後の問題が正解だったのは明らかに『運』だったし,あそこでもうひと捻り欲しかった気がした。最後の『テレホン』のライフラインを使ったから,兄は死んでしまったのだし,どうもすっきりしない。まあ,そのおかげでずっと想い続けた彼女に会えるのだけれど。

おまけ。
エンディングで『全員で踊り出す』のはインド映画っぽくて少し笑えた。

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2009.05.12

レッドクリフPARTⅡ 未来への最終決戦

広島宝塚3。ジョン・ウー監督。トニー・レオン,金城武主演。

1を観て,2はもっと凄い作品になっているはずだと期待して観てのだが,残念ながら期待には届かなかった。戦闘シーンも1の方が美しかった気がした。ちょっと肩すかしを食らった気分。コメントのしようがない。1本の作品にしても良かったかも。2は1くらいヒットしているんだろうか。この出来では波及効果は期待薄だな。

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2009.05.05

フロスト×ニクソン

サロンシネマ1。ロン・ハワード監督。マイケル・シーン,フランク・ランジェラ主演。

テレビという名のリングに立ち,言葉のグローブを交えたのは,コメディアン出身のテレビ司会者デビッド・フロストと,ウォーターゲート事件の汚名にまみれて大統領を辞任したリチャード・ニクソン。テレビカメラの前に座った二人の激しいトークバトルが魅せる。

特いラスト20分が息もつかせぬ迫力だ。そして静かだが衝撃のラストを迎える。

しかし,あれほど圧倒的優位に戦いを進め,雄弁に持論を語っていたニクソンが,最終ラウンドになってなぜああも簡単に崩れ落ちてしまったのか,そこの描き方が今ひとつ。おそらく実話ではない深夜の二人の電話のシーンを挿入したことがアダになったのではないだろうか。テレビカメラの前だけの戦いに絞った方がよかったように思う。

確かに面白い作品だった。しかし,ベストではないように思う。

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2009.04.08

ジェネラル・ルージュの凱旋

広島宝塚2。中村義洋監督。竹内結子,阿部寛主演。

『チーム・バチスタの栄光』に続くシリーズ映画化第2弾。

ミステリー色は薄く,どちらかと言えば,現代の救命医療が抱える問題をクローズアップした内容となっている。ミステリーものとしては物足りないが,医療問題を提起したドラマとして観れば満足度は高いだろう。終盤の救命救急シーンが最大の見せ場で,『トリアージ』等,重い問題をリアルに描いている。

僕は女優・竹内結子が好きなのだが,この作品では彼女の魅力は存分に発揮されていない。キャラ付けが薄い。そこが残念なところ。

対して,天才医師役の堺雅人が魅せてくれる。とても魅力的なキャラに仕上がっている。ここに謎解きの面白さが加わってくれていたら,もっと面白い作品になったのに…。

この作品のポイントはミステリーものとは期待して観にいかないことだ。

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2009.03.16

ダウト~あるカトリック学校で~

サロンシネマ1。ジョン・パトリック・シャンリィ監督。メリル・ストリープ,フィリップ・シーモア・ホフマン主演。

主演二人の火花散る猛烈な演技対決が最大の見せ場の作品。終盤の二人の対決のシーンは舞台演出の要素を取り入れ,迫真のものとなっている。この対決の演技だけでも観応えたっぷりだ。

ひとつの小さな疑惑が人の心を支配していく様を説得力たっぷりに魅せてくれる。それは本当に疑惑なのか,それとも事実なのか。その答えが最後まで明かされないところがまたいい。ラストの締め方がまたいかにも舞台的で良い。最後まで謎めいた台詞で魅せてくれた。

僕がこの映画で凄いと思ったのは,シスター・アロイシス(メリル・ストリープ)と黒人生徒の母親(ヴィオラ・デイヴィス)の対決のシーン。『私には分かるのです』と自分の疑心を正として主張をガンと曲げないアロイシスの怖さとそれに屈しない母の強さ。本当に観応えあった。

この映画ではカタルシスは得られない。それは『疑惑』の謎が明かされないからだ。それでも,いい作品を観たと満足感を得られる。全ては主演二人の迫真の演技と出来の良い脚本,演出の妙のおかげだ。

果たしてフリン神父(フィリップ・シーモア・ホフマン)は白か黒か?あなたはどちらの結論にたどり着いただろうか。

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2009.03.12

カフーを待ちわびて

サロンシネマ2。中井庸友監督。玉山鉄二,マイコ主演。

第1回日本ラブストーリー大賞を受賞した原作を映画化。

ちょっと看板に期待し過ぎた。意外と淡々と話は進む。ひねりがなくて,直球勝負。そのせいで僕は途中で展開が読めてしまい,ラストの感動に繋がらなかった。残念。

でも,玉鉄はこれまでの作品にはない,いい味を出していた。マイコの方がもうちょっと演技が上手かったならねえ。

シンプルな恋愛話に心癒されたい方はどうぞ。

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2009.02.23

チェンジリング

シネツイン新天地。クリント・イーストウッド監督。アンジェリーナ・ジョリー主演。

真にヒューマンドラマの『王道』たる作品。文句なく感動した。イーストウッド監督は凄い。アンジーも凄い。脇の役者も凄い。

行方不明になった息子と『もう一度会いたい』という悲痛な願いだけを頼りに権力と闘い続ける母の姿にただただ感動。無駄な演出が全くない。その筆圧と筆遣いの美しさにまた感動。纏め上げ方が本当に上手い。というか,『王道』路線を外していないので安心して観れる。

ラストがまたいい。あのクリスティンの微笑みが大きな『救い』になる。本当にいい作品を観た,という余韻に浸りながら劇場を出た。

僕的には『ミリオンダラー・ベイビー』より上の評価だ。とにかく劇場で観てほしい作品。

あまりの感慨深さにいつものようなレビューの形がとれないほど。この作品の後,ハシゴで『7つの贈り物』を観るつもりだったが,この鑑賞感を損ないたくなくて観るのを止めたほどだ。

本当,イーストウッドは凄いわ。外れがない。凄いわ。ただただ感動。

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2009.02.22

ベンジャミン・バトン 数奇な人生

広島バルト11。デビット・フィンチャー監督。ブラッド・ピット,ケイト・ブランシェット主演。

80歳の老人として生まれて,歳をとるごとに若返っていく男の物語。

特殊メイクとCGを使ってこういう手法で物語を作り上げていくという構成は新鮮だ。

特に死期の迫った老人達に囲まれて暮らす幼少時代が味わいが深い。人は皆,出会って別れ,愛する人を失う。失って初めて大切さがわかる。若くして(見かけは老人だけど)ベンジャミンはそれを学ぶ。どちらかというと,恋愛パートの後半よりも,この前半の方が胸に迫るものがあった。ベンジャミンが初恋に落ちる話や,若いデイジーの誘惑も受け流す余裕が人生への含蓄を感じる。

後半の恋愛パートは切ない。二人の精神年齢がピタリと重なるのは,お互いの人生の折り返し点を過ぎたそのほんのひと時しかない。あとはすれ違ってしまうのだ。これも人生の妙としか言いようがない。生涯を通して運命の人と意識し合う二人でさえ,本当に幸せな時間はほんのわずかしか用意されてなかったのだ。ここは本当に切ない。

主役二人の実年齢のところが物語のキモとなっているのでここの描き方は割と淡泊で,ラストへの大きな感動に繋がってこないのがこの作品の欠点かもしれない。

ケイト・ブランシェットの特殊メイクにはやや違和感があったが,ブラピのそれはなかなかの出来栄え。特に20代前半と思われるブラピのCG加工メイクにはうならされる。デビュー当時の若き日のブラピを彷彿とさせる感動すら感じた。

これだけの大作で壮大なテーマに臨んだにも関わらず,大きな感動はない。それは,次第に幼児へと減齢していくベンジャミンをけなげに世話をするデイジーの内面描写が欠けていたからかと感じる。そこを上手く描けていたら,大きな感動に繋がったかもしれない。そこが残念ではある。

だが,2時間47分という尺の長さを全く感じさせなかったフィンチャー監督の技量は高く評価したい。ラストにベンジャミンの人生に多大な影響を与えた人々が出てくるカットには感慨深いものがある。

本当に数奇な人生。それでも人生は素晴らしいという人生賛歌の物語。新しい切り口の作品として,及第点を与えてもよいと思う。だが,これでアカデミー賞が獲れるかというとそれはちょっと難しいと感じた。

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2009.02.19

チェ 39歳別れの手紙

シネツイン新天地。スティーヴン・ソダーバーグ監督。ベニチオ・デル・トロ主演。

カストロと共にキューバ革命を成し遂げたエルネスト・チェ・ゲバラの伝記映画。前後編2部作の後編となる。

結局,後編を観ても前編と同じ印象しか受けなかった。結局,僕のような初心者に対する説明描写が圧倒的に足りないのだ。ゲバラの内面描写も欠けているので,彼に感情移入もし難い。あるのはただただ苦行の進軍のリアリティだけ。僕には満足な評価をするのも難しい作品になってしまった。ゲバラに思い入れのある方には特別の作品になるだろうけれど…。

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2009.02.16

レボリューショナリーロード/燃え尽きるまで

広島スカラ座。サム・メンデス監督。レオナルド・ディカプリオ,ケイト・ウィンスレット主演。

すいません,いきなりネタバレで始まります。


なんじゃ,この作品は。延々醜い夫婦喧嘩を2時間観せられてもううんざり。旦那の立場,奥さんの立場,それぞれ言い分があって,男女で受ける印象は全く違うものと思われる。僕は,甘いと言われようが,旦那のフランクの肩を持つ。それくらい妻のエイプリルのわがまま(と言い切るのは酷か)は度を越えている。

この夫婦の悪いところは冷静に話し合えないところだ。すぐに喧嘩になっていまう。お互いを思いやる気持ちに欠けているのだ。例えば,エイプリルは妊娠したのにも関わらず,飲酒喫煙を止めないし,それを横目で見ているフランクは咎めもしない。つまり二人とも『最後は中絶すればいい』と考えていたのだ。そこにはもう愛はない。あのような結末になって当然とも言える。

しかし,フランクが正しいのかと言えばそれは違う。言わなくていいことまで言ってしまう。自分の浮気のことを正直に話して自分を正当化し,許しを乞うなんていうのはどう考えてもおかしいし,最後の喧嘩のトドメの一言はもっと救いがない。最悪なのは,フランクが自分の過ちに気付いてないことなのだ。

一方,エイプリルの方もなぜあんなにパリ行きに拘る のか,それで何が変わると考えているのかさっぱり理解できなかった。そこには自分の主張しかなく,夫を理解しようとせず,妻であること,母であることをおざなりにしており,やはり共感はできない。

なんか救いのない作品だった。鑑賞感悪し。

最後にケイト・ウィンスレットの演技が誉め称えられているが,ディカプリオの演技もなかなかだったと思った。ただ,今回の役をやるには,ディカプリオはやや童顔過ぎたかもしれない。

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2009.02.13

大阪ハムレット

サロンシネマ2。光石富士朗監督。松坂慶子,岸部一徳主演。

大阪の下町を舞台にした人情コメディー。松坂慶子演じる肝っ玉母さんと三人兄弟,そして謎のおじさんが織りなすほのぼのとした笑いあり,じ~とくる感動もありの遠足の時のお弁当のような楽しい作品。

この家族に共通しているのは,『何にでも真っ直ぐなこと』。それが観ていて気持ちいい。登場人物の持つ空気感が独特で心地よい。こういう幸せの形もあるんだという素直な発見があって驚き。

三兄弟がそれぞれいい味出していてよかった。特に『女の子になりたい』と願う三男役のコはサイコー。結局誰が誰の子なのかは最後まで謎だったけど(笑)。その三兄弟を小さなことにはこだわらない,大きな愛で包み込むお母ちゃんは本当に素晴らしい。おかし,楽しい。

派手さはないが,観ていて心がほのぼのとした明るい気分になる不思議な魅力のある作品だった。それは家族の中心で,いつもお母ちゃんがにこにこ笑っているからかもしれないな。

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2009.02.12

ラースと,その彼女

サロンシネマ2。クレイグ・ギレスピー監督。ライアン・ゴズリング主演。

シャイで真面目な好青年がある日突然『僕の彼女を紹介するよ』と言って,『リアルドール』を連れて現れたら,あなたはどう彼と接しますか?

この作品は,そういうふうに観る人の人間性を問いかけるものになっている。この作品には悪人は出てこない。家族も,そして町の人達もみんな彼とその『彼女』を優しく受け容れるのだから。

そういう意味ではこの作品は現代のおとぎ話である。しかし,投げかける問題はもっとリアルで切実だ。主人公のラースの孤独に対する葛藤と苦悩が生んだビアンカというその『彼女』とどう向き合うか。町の人達はラースの幻想につきあい,向き合うことで,人を思いやる優しい心を呼び覚ましていく。その描き方が優しく,ハートウォーミングな物語である。

しかし,ラース自身がその幻想に破綻してしまう。最愛のはずのビアンカよりも『現実の女性』に知らず知らずの間に心を奪われてしまうのだ。幻想と現実の間で苦悩するラースが痛々しいが,その小さな心の綻びも主演のライアン・ゴズリングが素晴らしい演技で丁寧に演じてくれるので,我々は客観的に観て『変人』のラースに嫌悪感を一切抱くことなく,この物語に引き込まれていけるのだ。

ラースには『現実の女性』と恋をする予行演習としてビアンカとの恋愛が必要だったのだろう。そして,ビアンカとの別れも…。

本当の恋を知るには,痛みと勇気が必要だ。ビアンカを愛した心優しいラースの言動が静かに僕達に語りかけてくれる。その囁きを聞き洩らさないように,この作品の鑑賞感の余韻に浸りたいものだ。そして,ラースの新しい恋の成就を願わずにはいられなくなるのだ。

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2009.02.11

イースタン・プロミス

サロンシネマ2。デヴィッド・クローネンバーグ監督。ヴィゴ・モーテンセン,ナオミ・ワッツ主演。

ものすごい期待して観たので,正直に言うとその期待には届かなかった。が,観逃さずによかったと思えるなかなかの佳作だった。

ストーリー的には先が読めてしまい,今イチだったかも。


(以下,ネタバレ)


ボスが敵に息子を引き渡すのに『2日待て』と言った時に,これはニコライ(ヴィゴ・モーテンセン)を身代わりに立てるな,と気付いたし,そのためにマフィアの証であるタトゥーを入れさせるというのも読めた。一番のキモであるニコライがFSB(ロシアの秘密警察)の潜入捜査官だったというののバラし方も芸がない。この辺りがこの作品のマイナス点だ。

だが,それをカバーして余りあるほど迫力満点のサウナでの全裸!格闘シーンの迫力と痛さ。バックに音楽もなくひたすらアクションそのもので魅せるという手法にしびれた。

そして,なによりも,全く生きる世界が違うニコライとアンナ(ナオミ・ワッツ)が次第にシンクロし,最後に惹き合うシーンは秀逸。こんなロマンチックな大人のキスシーンは久しぶりに観た。このキスシーンの二人の演技だけでも僕はこの作品を高く評価する。それくらい良く撮れていた素晴らしいシーンだった。

単なるロシアンマフィアのドロドロした殺し合いの作品に終わっておらず,こういう救いがあるだけでも作品の印象は随分変わるものだと思った。これは大人のラブストーリーでもある。相反する二者を両立させたクローネンバーグ監督の手腕を高く評価する。もちろんヴィゴ・モーテンセンとナオミ・ワッツの素晴らしい演技にも。

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2009.01.28

誰も守ってくれない

広島宝塚。君塚良一監督。佐藤浩市,志田未来主演。

ちょっと期待していたんだけど,肩すかしを食らったような気分だ。もっと奥深いテーマを内在した作品だと考えていたが,意外と底が浅い。加害者の妹が受ける仕打ちにしても,敵が『マスコミ』とか『ネット』とかステレオタイプで描かれているだけで,深みが全くない。志田未来が抜群の演技で泣いたりわめいたりするのだが,ただそれだけである。こちらには何も伝わってこない。主人公の沙織がこんなだから,これに絡む刑事,勝浦との交流にも深みがない。本当に予告編が全てのキモを表していて,それ以上何もない作品だった。総じて演出が下手。この作品のどこがいいのか,僕にはさっぱり理解できない。加害者の側も,被害者の側も描かれ方が中途半端なんだな。真面目に観たつもりだったのにとても残念だ。ただ佐藤浩市はいい役者になったな,とは思った。僕には合わない作品だった。

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青い鳥

サロンシネマ2。中西健二監督。阿部寛主演。

いじめ問題に真正面から斬り込んだ社会派作品。同じ『いじめ』をテーマとしていても,『リリイ・シュシュのすべて』と比べると,こちらの方がよほど本道である。主張もはっきりしている。『実際のいじめのシーンは一切ない』にも関わらず。ここがこの作品の素晴らしいところだ。

物語はいじめによって生徒が自殺未遂を起こした中学校の新学期から始まる。自殺未遂を起こした生徒はもう転校してしまっていない。クラスの生徒達は『事件を忘れよう』としている。そこに現れた吃音の代理教員。彼は生徒達を諭す。『忘れるなんてひきょうだ』,『本気の言葉は本気で聞くべきだ』と。

吃音で話される断片的な言葉,単語がそれ故に余計に心に突き刺さる。例えば,『責任』という言葉。『生きていく上で人が負うべき責任』の大切さをこの代理教員は問う。それはもう単なる『いじめ』問題ではない。大人にも通ずる社会全体への問題提起だ。

事件を過去のこととして封印しようとする他の教師達と代理教員とを対峙させることで,どちらが『人』と向き合う上で正しいことかを鮮やかに浮かび上がらせている。その手法は技法的にはやや下手かもしれないが,正統派であり,王道のようにどっしり構えていて,その主張はゆるぎないものになっている。

その吃音の『本気』の言葉の真意が届いた生徒,教師がいる一方で,届かなかった生徒,教師がいたことにも注目したい。これが社会の縮図なのだ。気付かなかった生徒達も間違いなく大人になる。そして,気付かなかった教師のような大人になって,都合のいい方便を使うのだ。そういう意味ではこの作品の問題提起はとても奥深い。

そして,この代理教員も,おそらく『本気の言葉』の意味に気付けなかった暗い過去を持つことも。それ故に『本気の言葉』を話し,『本気の言葉』を聞き取れるようになったであろうことも。

主演の阿部寛も凄いが,それと正面切って堂々と演じる本郷奏多も凄い。二人の演技にも魅せられる作品になっている。

低予算でも,こんなにメッセージ性の深い,凄い作品ができるのだ。だからミニシアター通いは止められない。この作品に出会えた幸運に感謝したい。

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2009.01.27

007 慰めの報酬

広島ルーブル。マーク・フォースター監督。ダニエル・クレイグ主演。

ハードボイルド・アクション大作。本当にアクションシーンの連続で満載。それも『痛い』アクションなんだな。邦画の『K-20』あたりと比べると,完成度と金の掛け方が全く違う。『本物』って感じ。ただ,『K-20』の方が建物を飛び越えていくシーンはスマートに撮れていた。まあ,これは指向性の違いだろう。どっちが悪いというものではない。

とにかくD・クレイグが渋くて超格好いいのだ。これまでの女ったらしの007の主役達とは一線を画する。僕は前作『カジノロワイヤル』を観てなかった(この作品が続編として作られていのを知らなかった)ので,物語の骨格の部分の『復讐』というところが掴み切れなかったのが残念。前作を観てから鑑賞されることをお勧めする。

結構真面目に作られていて面白い作品だ。アクション映画としては一級だと思う。ただ,ボンドカーには何の仕掛けもないし,秘密兵器は出てこないし,そういう007は一方では寂しいとも思う。アクションと遊び心とお色気が007の魅力で歴史でもあるから。

でも,D・クレイグがボンドをやる限りはとことんハードボイルド路線を突っ走ってもらいたいものだ。真面目にアクション大作路線を貫いていってほしい。

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2009.01.26

ぐるりのこと。

シネツイン本通り。橋口亮輔監督。木村多江,リリー・フランキー主演。

久々の邦画の傑作だと思った。それくらい自分の口に合った作品だった。鑑賞感がとてもよく,2時間20分の尺の長さを感じさせない作り込み。僕は完全に主人公の翔子とカナオに感情移入していた

木村多江演じる翔子は,子供を亡くしたことで精神を病んでしまう役柄。リリー・フランキーは,そういう病んだ妻をただそばに寄りそうことで力強く支えていく法廷画家の役柄。物語は,夫婦の絆を描いたパートと,その時代(90年代)の病んだ社会の法廷シーンのパートとを相対して描いている。このコントラストも絶妙。カナオの仕事が法廷画家というのも効いている。被告と被害者の心情をくみとりながら,それを消化し,客観的に法廷画にする仕事。この仕事をしているから,カナオは翔子の気持ちを理解し,支えることができたのだと思う。木村多江とリリー・フランキーの演技はまるで素の本人を観ているような錯覚を感じるほど自然で良かった。おかげで作中にぐいっと引き込まれた。

一番の見どころは,中盤の,お互いの心の内をぶつけ合い,その結果,ようやく深いところでお互いを理解し,心を通わすシーン。これはおそらく10分くらいの長回しで撮られており,真のこの作品中のキモであった。このシーンがとてもよく撮れていたので,その二人の再生していく姿に素直に感情移入できた。この後,二人が特に翔子の病気について格闘する姿は意図的に省略されている。ただ,お互いの心の壁を乗り越えて二人が深い絆に支えられて,信頼感を深め,次第に翔子の病気も快方に向かっていることは,『カレンダーの×印』(二人の約束事のサイン)が増えていくことで隠喩されている。ここまでたどり着くのに,二人は相当の苦労をしたのだろうと予想する。僕はあえてそこを説明くさく描写していない手法がとても好きだ。『お互いのことが好きだから』,『当たり前にすぐそばにいる』ことで支え合って病気を乗り越えた二人に拍手したい気分だ。翔子が絵を描くことに希望を見出し,再生していく姿は素晴らしく瑞々撮れている。翔子がい笑顔で絵画に取り組んでいる姿と,書きあげた天井画を夫婦で寝そべって見上げるシーンがとてもいい。観ているだけでこちらも元気な気持ちになるし,夫婦の深い幸せを感じることができる。

『ただ寄り添い生きていくことでお互いの愛を確かめ合うことができる二人』の純粋な絆と愛を過剰な演出を図ることなく,さりげなく描ききった橋口監督の力量は称賛ものだ。本当にこの鑑賞感の良さは特筆もの。観た後に幸せな気持ちに素直になれる作品だ。是非多くの人に観てもらいたいお薦めの作品である。

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2009.01.18

人のセックスを笑うな

WOWOWビデオ観賞。井口奈己監督。松山ケンイチ,永作博美主演。

一言で言うと,『鑑賞感の悪い作品』である。独特の『間』が僕の口には合わなかった。長回しが多用されているのだが,その中で演者が芝居に入りきれていないような気がする。そういう落ち着きの無さがこの作品の鑑賞感を悪くしている。

おまけに作り手が何を伝えたいのか,そのメッセージが全く分からないし,読み取れない。自分の倍も歳の違う既婚女性に振り回される若者の姿が淡々と長々と撮られているだけの作品である。そうとしか,言い様がない。

松ケンに永作博美,蒼井優など,旬の役者を使っておきながら,なんとも勿体ない作品である。

ちなみに僕はこの間延びした鑑賞感に堪え切れず,劇場公開の時は,人生で初めて上映途中の1時間で席を立ったほど。今回,最後まで観て評価が変わるかと期待したが,最後まで観ても何も変わらず。

とにもかくにも,『鑑賞感の悪い作品』であった。

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2009.01.12

チェ 28歳の革命

TOHOシネマズ緑井。スティーヴン・ソダーバーグ監督。ベニチオ・デル・トロ主演。

カストロと共にキューバ革命を成し遂げたエルネスト・チェ・ゲバラの伝記映画。前後編2部作の前編となる。

物語は,キューバ革命戦争の流れと,革命達成後の国連総会での演説シーン(これを意図的にモノクロで描いている)を対比させながら進んでいく。が,なぜキューバ革命が起こったのか,とかカストロやゲバラが革命をどう捉えていてか,という説明的な描写は圧倒的に少なく,その辺の背景がゲバラについて知識がない僕のような者にとっては不親切な作りとなっている。

国連総会前後のゲバラの言動を描くことで,カリスマ性を持たせようとしているが,その試みはやや失敗しているように思う。それは,戦争の描写の中で,ゲバラの内面がほとんど描かれてないからだ。戦争の流れの中で,次第に司令官的役割を果たしていく姿が淡々と描かれ過ぎていて,なぜ彼が英雄視されるのかが説得力に欠けている。戦時中のどちらかといえば控え目で自己主張をしない姿と,国連総会で演説する強気な姿が同じ人物とは思えず,断絶している。なぜ彼がカリスマなのか。その説明の描写が圧倒的に足りないと感じる。だから,革命の達成を目の当たりにしても,感動はやや薄い。これもこの戦争の目的というものが説明的に描かれてないからだろう。

ゲバラの内面の葛藤をもっと描いてほしかった。その中でカリスマへと変貌を遂げていく姿が感じ取れれば,深い感動を味わえたかもしれない。その辺は彼の理想が現実に飲みこまれていく後編で泥臭く感じることができるのだろうか。

いずれにしても,前後編2部作の前編である。後編を観てから,全編の評価をしたいが,この前編を観て,『後編が今すぐに観たい』と強く思わせるほどの出来でもないと感じた。そこは残念でもある。

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2009.01.03

リリイ・シュシュのすべて

DVD鑑賞。岩井俊二監督。市原隼人主演。

ずっと観たかった作品だったのだが,やっと観れた。作品に関する前知識は全くない。が,思い入れが深かった分,正直,この作品をどう評価していいのか分からない。

思春期の,壊れやすいガラス細工のような繊細な心を持つ若者達の心情を描いたものなのか。それとも,思春期の少年少女の立ち位置の危うさ自体を訴えたかったのか。

ネットでの繋がり,万引き等の少年犯罪,援助交際,いじめ,等,思春期の子供達の存在する世界に実際に起こりうることが,シビアに長々と描かれている。では,岩井監督は2時間半にも及ぶこの作品で何を訴えたかったのか。そこが分からない。生き残った者と死を選択した者,そして突然生を閉ざされた者。この三者が描かれるのだが,それぞれの役割というか,メッセージというものが今ひとつストレートに伝わってこない。そういう意味では難解な作品である。

それとこの作品を観て思うのは,『大人目線』で描かれていることだ。実際の思春期の少年少女達はこの作品を観て自分達の物語だと共感できるのだろうか。僕にはとてもそうは思えない。そんな『目線』のブレが,この作品の評価を難解にしているのかもしれない。

主人公にとっての『リリイ・シュシュ』が果たす役割自体もピンとこない。ネットで心を交わしていたはずの相手が,実は自分のリアルな生を脅かしていた人物だったというくだりは初めから読めたのだが,それでなぜあんな衝動的な行動に主人公が最終的に走ったのか。それと『リリイ』との関係はどうなのか。そこが全く上手く描き込まれておらず欠落している。DVD鑑賞という集中できない環境で観たという点を差し引いても,人の生と死をテーマとして扱うならば,この作品を思春期の少年少女達に観てほしいと考えて作った(もちろん意図的に大人向けに作ったとは考えられるが)のならば,そこには理解しやすい解答がなければならないと僕は考える。思春期の少年少女達の持つ問題だけをバラまいて,それがパズルとしての解答がないというのでは,全く救いがないではないか。

とは言え,ラストシーンでは,『生を選んだ者』同士が対峙しそうな予兆を漂わせながら終わっている。そこから解答を探せということかもしれないが,僕はこの終わり方が今ひとつ理解できない。というか,この中途半端な終わり方が嫌いだ。何度も言うが,『解答』が示されるべきだったと思う。意味のない『生』も『死』もないと考えるからだ。そういう意味ではこの作品は2時間半も使いながら中途半端な作品である。

この作品も,市原隼人や蒼井優など,今の二十代前半で活躍中の俳優・女優が,ダイヤの原石の煌きを魅せてくれる作品であるので,そういう意味では貴重な作品だと言える。ただ,この作品の魅力は唯一その一点だけとしか考えられないのが,観る前の思い入れが深かった分,惜しいところだ。

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エターナル・サンシャイン

DVD鑑賞。ミシェル・ゴンドリー監督。ジム・キャリー,ケイト・ウィンスレット主演。

喧嘩別れした恋人同士のお話。彼女は彼のことを忘れるために,彼との記憶を全て消去してしまう。彼はそのことにショックを受け,自分も彼女の記憶を消去しようとするのだが…。

冒頭のエピソードが大切。ここが真にキモである。ここを軽く観逃すと後で後悔することになる。

記憶を消去するクリニックの面々も加わって,物語に厚みを上手く出している。そして,後半のどんでん返しの展開に繋がっていくのである。この脚本は良くできていると思う。

記憶が消去される順番も,最近の喧嘩続きだった毎日から,だんだん過去に遡って,幸せの絶頂だった頃へ。そして,運命の出会いの日へと続いていく。彼はもがく。彼女のことをやはり忘れたくないと。

だけど,抵抗もむなしく,彼女の記憶は消去されてしまう。だが,それでも,記憶の残像を辿って二人は再会し(ここが冒頭のシーン),そして再び惹かれあう。だが,通常ならそのままハッピーエンドなのだが,この物語ではもうひと捻りあって…。この捻りがまたたまらなくいいのだ。

大切な人との運命の出会いというものは約束されていて,その第一印象は決して揺るがないものだとこの物語は教えてくれる。二人は記憶を失くしたことで,お互いの欠点が気になり喧嘩ばかりしてたことを飛び越えて,第一印象の直感で感じたことの大切さに気付く。それは運命の出会いだったと。この人こそがかけがえのない大切な人なのだと。その愛の絆の強さに拍手したくなる。これは恋愛関係の難しさを描きながら,実は純愛の物語である。100%ピュアなラブストーリー。この物語を観ると,きっと恋がまたしたくなる。そんなハートフルなラブストーリーだった。これもなかなかの佳作であると感じた。

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2009.01.02

ロボコン

DVD鑑賞。古厩智之監督。長澤まさみ,小栗旬,伊藤淳史,塚本高史主演。

長澤まさみがセカチューでブレイクする前のアイドル映画である。しかし,今となってはドラマの主役級を張る4人の豪華顔合わせの作品でもある。ダイヤの原石達がキラリと輝く瞬間を垣間見られる貴重な作品となっている。

物語の構成は至ってシンプル。ロボットコンテスト=『ロボコン』に参加することになった性格も意見も合わない四人が,『ロボコン』を通して次第に心を通わせ,真の友情を築き上げるというもの。ベタの王道ネタである。これは『アイドル映画』なのだから,小難しいことを言ってはいけない。そういうシンプルな筋書きを受け入れるべき作品なのだ。

が,そこをシンプルに描いているので素直に共感できるし,変に脚色していないので飲み込み易いのだ。これでいいじゃん,って感じ。『ロボコン』の試合自体の面白さも加わり,割と楽しい仕上がりになっている。とにかく好感が持てるのだ。それは,主役四人の魅力があるからに他ならないのだろうけれど。特に小栗旬,シャイな役柄の中でいい味出してたねえ。

長澤まさみも可愛さ満点。やっぱこの頃とかセカチューの頃が一番輝いていたよ。同じアイドル映画でも『隠し砦の三悪人』は最悪だったから,東宝は一体長澤まさみをどう育てたかったのか,と大文句を言いたい。女優として伸び悩んでいる今の長澤まさみを再度輝かせるには,彼女の持つ華やかさと明るさを活かす作品を与えてあげたいと思うのだが。シリアス路線は,ドラマ『ラスト・フレンズ』で失敗しているのだし。

話は作品に戻って,反発しあってた四人が,お互いに小さな声で『ありがとう』という台詞が何度も出てくる。この『ありがとう』というさりげない台詞が効いている。お互いの心がぐっと近づくのを本当にさりげなく,且つ印象的に表現していて,上手いと思った。

飾り気の無い静かな静かなアイドル映画。それでも爽やかな感動を味わえる。こういう作品があってもいいと思う。そういう意味ではたとえハズレが多くても,アイドル映画って無くなってほしくないな,と思うのだ。

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2008.12.30

フツーの仕事がしたい

横川シネマ。土屋トカチ監督。

過酷,いや過労死寸前の労働条件の中,労働組合に助けを求めた一人のセメント運送運転手が『フツーの仕事』を労働争議の末,勝ち得る過程を追った迫力満点のドキュメンタリー作品。

下請のまた下請で働くこの主人公の労働条件は最悪で,月552時間にも及ぶ労働(仕事以外の一日当たりの時間は5.7時間)による過労が原因で瀕死の重病にも侵され,真に命懸けで働いて月給は30万円,社会保障無しという信じられない労働条件である。

映像は多重下請構造による数々の法違反や影の暴力をあぶり出していく。それがリアルを超えたリアルさで,恐ろしいくらい。淡々と事実を撮影してそれにナレーションとインタビューを重ねているだけなのだが,題材のリアルさがとてつもない迫力を作品に与えている。

この主人公は度重なる凶悪な会社側の脅迫にも屈せず,闘い続け,それを労働組合がバックアップして,その結果,『労働条件の改善』という勝利の報償を勝ち取るわけだ。この主人公の人が,どこにでもいそうな気弱そうな普通の人というのがミソである。決して,会社と闘う姿勢を前面に押し出したパワフルな人ではない。だからこそ,僕らのすぐ近くで起こっている問題だというリアリティが生まれるのである。

映像にインパクトと迫力があり過ぎて,これはとてもテレビのドキュメンタリーでは使えない。映画だからこそ実現できた企画と言えよう。本来ならこれをテレビで流すくらいの気骨のあるテレビ局があってもいいような気がするが,スポンサーの顔色を伺わなくてはならない民放では無理,NHKでも無理だろう。

ちなみに限られた条件と予算内で作られた作品であり,フィルムではなくビデオ作品である。ビデオカメラ一台で世相をバッサリ斬り捨てるのだから,そのポテンシャルの高さを改めて思い知った次第である。

世の中の矛盾,本当,たくさん他にもあるよね。こういったドキュメンタリー作品もたまには観なければと肝に銘じた作品になった。

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ボーン・アイデンティティー

WOWOWビデオ観賞。ダグ・マーリン監督。マット・デイモン主演。

『ボーン』シリーズPART1。実は劇場で観てなくて,4年前に撮ったビデオをやっと観た。

で,感想。う~ん,微妙。『ボーン・スプレマシー』や『ボーン・アルティメイタム』の方が格段にアクションが面白い。やっぱテレビの画面で観ると迫力も足りないのかなあ。追いつ追われつの知力戦という意味でも観応えが薄い。ちょっと楽しみにしていたので,少し肩すかしを食った気分だ。まあ3部作の後になるほど面白い作品というのはそうないので,それはそれで凄いことだとは思うんだけど。それでも,僕はこのシリーズが大好きなことは変わりないけれどね。

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2008.12.27

僕らのミライへ逆回転

シネツイン新天地。ミシェル・ゴンドリー監督。ジャック・ブラック,モス・デフ主演。

最初はただのブラックコメディーのつもりで観ていてたんだけど,さにあらず。最後には一本思想に芯が通って,しかもホロリとさせられるという粋なエンディングで締めくくる。心が暖かくなって,ウルルンとなってしまった。

事故で記録が消えてしまった名作のレンタルビデオの代わりに,『手作り』でハチャメチャなリメイク版を作っていくという発想が面白いし,これが町の人々に大ウケで,次々とリメイクを重ねていく(しかも町の住民の観る側も楽しみながら協力して)って展開もウケる。ブラックユーモアと遊び心に溢れているが,その徹底的に安っぽい作りが逆に新鮮ですらある。

最後の『町のみんなで自分達の映画を作ろう』と団結する姿は,『本来映画ってこんな映画好きな人が集まって作るもの』っていう原点のような純粋さを感じた。素直に感情移入できる。

そして,ラストシーンは秀逸。本当に心温まるエンディングだ。映画って本当にいいものですねえ。こういう毛色の変わった作品があってもいい。なかなかの佳作だと感じた。

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ワールド・オブ・ライズ

スカラ座。リドリー・スコット監督。レオナルド・ディカプリオ,ラッセル・クロウ主演

作りも本格的な王道路線の社会派作品。ディカプリオの熱演で魅せる。騙し騙されの応酬の中,あのような結末になるとは…。イスラム教の思想は分からないけれども,アメリカ思想を見事に皮肉った結末であり,痛快でもある。本当はラッセル・クロウがもっと魅せてくれたら,もっと面白い作品になっただろうけど,本作では彼に全く魅力がない。そこが残念なところ。でも,『ブラッド・ダイヤモンド』といい,本作といい,ディカプリオ,一皮むけましたな。演技に渋さがでてきていい感じになっとる。観て損はしないハードボイルドな作品でそれなりに面白く,『K-20』観るくらいなら,こちらをオススメする。

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K-20 怪人二十面相・伝

広島宝塚1。佐藤嗣麻子監督。金城武,松たか子主演。

実はこれ,予告編観て面白そうで楽しみにしてたんですよ。なのに,結論から言うとハズレだった。前半の格差社会の描き方が中途半端で正直だるい。必要ないじゃん。目玉のアクションシーンも,スパイダーマンとバットマンのパクリじゃん。まあ,建物を身体ひとつで飛び越えていくシーン等は確かに痛快であり,よく撮れていたとはは思ったが。結末(二十面相の正体)も読めてしまっていて,尚且つ凄まじい破壊力を持つ最終兵器が炸裂したにも関わらず,帝都が崩壊するでもなく,ビル一個が半壊ってどういうこと?って感じ。金城武の日本語下手(笑)にはもう慣れてしまったので,批判の対象にはならないが。まあ僕的には年齢的にお姫様役はどうかと心配していたお松さんがわりと可憐だったので,救われた気分ではあったが。まあ,お気楽に観るデートムービーですな。同じ金城武のパクリものでも『リターナー』は面白かったけどなあ。

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2008.03.18

Once ダブリンの街角で

取り急ぎ感想だけ。いつものスタイルではありません。

とても瑞々しい感性に溢れた小さな小さなラブストーリー。その趣はまるで純文学のようで,詩的ですらある。だが,ラブストーリーだからと言って主人公の男女が飾った愛の言葉を連ねるわけではない。その辺りは割りとシンプルに描いている。なぜか?この作品がラブストーリーであることをガンガンに感じさせるのは台詞なんかの1000倍くらい情熱的な『唄の力』なのである。そこはこれでもか,というほど攻めてくる。その技法が新しく,ミュージカルで台詞を唄的に聴かせるのではなくて,唄そのもの(歌声+台詞ではない歌詞)で愛を語るって感じ。とにかく素晴らしく情熱的で,僕も自作の唄で愛を語ってみたくなるほどだった(笑)。現実の世界で二人の愛が成就するのではなく,『ひとつの曲を完成させる』という過程で二人の心がシンクロする繊細な『かすかな振るえ』が見事に描かれており,その技法はシンプルながら新しいもので,新鮮な感覚に心地良さを感じる。ラストも単なるハッピーエンドではないが,『愛の唄を作り上げた二人はそれぞれの幸せを掴む』という微笑みたくなるようなご褒美が待っている。このラストシーンも心地良い。もちろんこれを締めるのもとても心地良い『唄』なのである。

超感動作というわけではない。なんとなく誰もが心地良い鑑賞感に浸れる不思議な味のある作品である。このピュアさを,今の複雑な世の中に生きる若いカップル達に是非観て頂きたいと思うなかなかの佳作。映画と音楽好きの作り手のメッセージがガンガンにハートに突き刺さってくる作品であった。実は劇場の最終日に観に行ったのだが,観ておいてよかったと思った。僕が帰りにサントラを買って帰ったのは言うまでもない。

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2008.02.26

映画好きにオススメの雑誌

本日2本目。 昨日買った雑誌が良かったので紹介します。 AERAムック『ニッポンの映画監督』(朝日新聞社)です。現代邦画の旬の監督と作品を特集していて,なかなか読み応えのある内容になってます。一般の映画評雑誌とは少し違う『ミーハーな観点』から見ている編集方針は『さすがAERA』(笑)と思わせるもの。読み終わった後,『ちょっと邦画通になったかも』と錯覚させてくれます。この雑誌の中で『映画のプロが選ぶ21世紀の日本映画ベスト10』という特集があったので紹介します(この『21世紀』というのが軽薄なAERAらしい)。 (作品名の後の,○×は僕が観た作品かどうかを参考までに書きます)

1位:『EUREIKA』→×
2位:『誰も知らない』→○
3位:『ゆれる』→○
4位:『下妻物語』→○
5位:『それでもボクはやってない』→○
6位:『ハッシュ』→○
7位:『いつか読書する日』→×
8位:『パッチギ!』→○
9位:『血と骨』→×
10位:『フラガール』→○

なんと1位の『EUREIKA』を観てないわけです。観たいけど,僕は基本的にレンタルは観ない人なので難しいかも。リバイバルしてくれ~。僕的には評価の高い『GO』が24位というのは低すぎるような気がする。 僕がこの10本でベスト3を並べるとすると,

1位:『ゆれる』
2位:『それでも僕はやってない』
3位:『パッチギ!』

かなあ。『ゆれる』は生涯邦画ベスト30くらいにも入ってきそうなくらいの傑作でとてもお気に入りです。さて,皆さんはどうでしょうか。

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2008.02.24

好きだ、

DVD鑑賞。石川寛監督。宮﨑あおい,西島秀俊,永作博美,瑛太主演。

17歳のユウ(宮﨑あおい)とヨースケ(瑛太)はお互い好意を持っているのに『好きだ,』の一言が言えない。二人は近づき,もつれ,すれ違う。そして,二人に悲しい出来事が…。それから17年,34歳のヨースケ(西島秀俊)とユウ(永作博美)は音楽を通して再会する…。

やっとこさ,DVDで鑑賞。
大きく『17歳のユウとヨースケ』のパートと『34歳のヨースケとユウ』のパートに分かれるわけだが,出来栄えとしては『17歳』の方が良い。それはやはり『17歳』の方がノスタルジックで,少し青い演出もOKなので料理しやすいということが言えるからかもしれない。ここで宮﨑あおいの『隣にいそうだけど,こんな可愛いコは実際はいない』不思議な魅力爆発。瑛太も飾り気のない少年を好演しており,それが『17歳』の方が魅力的に映る要因。そして,この世代の時誰もが感じた『やり場のない異性への想い』=『好きだという想い』を少々鋭角的に大人目線で石川監督は斬る。そうでないと,『自分の姉に好意を抱いている思い人の前に姉のセーラー服を着て登校する』なんてユウの青いけど,突拍子もないエピソードを織り込むことができるだろうか。実際にこんな女子高生いたらビックリ仰天だよ。しかし,それだけ『必死に好き』というどこへも行けないユウの想いが明確に表現されたエピソードだと言える。こういうユウとヨースケを長回しでひたすら追いかける技法はマニアックで確かに魅せるし,後半への布石ともなっている。空を印象的に切り取るカットの多様が目に焼きつけられる。

これに比べて『34歳』のパートは意外と普通。これは34歳のヨースケを演じる西島秀俊が押さえた演技をしているためだと言える。しかし,これはおそらく演出上の作り込みだろう。しかし,それだからこそ『34歳のユウ』を演じる永作博美を強烈なほど魅力的に作品に刻み込む。この作品の永作博美は前半の宮﨑あおいでも吹っ飛ぶくらいに魅力的。真に『怪演』である。その圧倒的な存在感は主役を務める4人の中で飛び抜けている。それは,前半の長回しを多用したカットから一転,ユウのアップとやや引いたカットを短い時間で交互に切り替えていくことで印象に刻み込む。しかし,前半の長回しが効果的に処理できていただけに,この短いカットの切り替えは観ている側にとってはややしつこく,気に障る。これがこの作品の技巧上の最大の欠点。なぜ,ユウのアップを切り替えで押さえていくかというのは,真にこの作品のキモとも言えるラストカットを強烈に印象付けるための伏線であり,そこを技巧的に作り込んでいくという作り手側の思いもよく分かるのだが,ちょっと技に溺れすぎた感がある。あと,ヨースケと酔っ払いの女性のエピソードはもっと短く仕込んで欲しかった。これは,永作博美があまりにも魅力的に撮れているから余計にそう思うのだろうけど。

こういう作品は劇場で思い入れたっぷりに浸って観たいものだ。ちょっと技巧に懲り過ぎた部分を意図的にシンプルに描けていたら,なかなかの傑作となったと思う。それにしても,永作博美,恐るべし。この作品は宮﨑あおいの作品と思って観たのだが,これは永作博美の作品である。こんな『怪演』が出来るなら,彼女の今後の映画女優としての地位はかなり面白いものになると思う。早く『人のセックスを笑うな』を観てみたいものである。

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2008.01.09

アイ・アム・レジェンド

この作品を観て思った。なんでも高画質なCGで表現する手法はどうかと。『ロード・オブ…』3部作では感動できたこの手法も,そろそろあきてきた。なんせ『キモ』が全部CGなので(この作品の魅力も含めて)余計にそんな思いになってしまう。このハリウッドのこの流れが正しいのかまだ判断できない。でも,基本的に映画ってものは『アナログ』な魅力を堪能するものではないだろうか。脚本・映像・演出…どれも本来はアナログなものが基本であるはずだ。去年末に観た『ベオウルフ』もそう。アンジーのヌードでさえCG処理。完璧すぎて全く魅力的に見えない。

その想いを強くしたのは,本作の前の予告編上映で『マッハGO GO』のハリウッドリメイクの予告編を初めて観た時。『なんだ,期待してたのにただのCGアニメじゃん』って。僕はオリジナルを知っている世代だが,この予告編を観る限りはオリジナルの方がよほど魅力的で面白そうである。

もうCG(オンリー)映画は見飽きた。これなら,TVチックな邦画作品の方がまだ『アナログ的』(これは,古い,という意味も含むが)で面白い。去年,僕が本来好きなはずの洋画をあまり観なかった遠因もそこにあるのではないだろうか。

もし,この流れが今年も続くようなら,僕がアメリカ発の洋画を観る機会は激減するだろう。『アナログな脚本・映像・演出』でかまわない。その工夫で唸らせ楽しませてくれる映画が観たい。CGアニメなら,日本の作品の出来栄えの方が圧勝だから。日本では,アニメは今でもアナログな部分を意識的に残している。実写との住み分けを作り手がよく分かっているからだ。

そんなこんなを考えながら,劇場を出て駐車場でクルマを乗り,帰路に発ったところで,僕はこの作品のパンフを買ってないことに気付いた。社会人になって以来,売切れの時以外は必ず買っていた鑑賞作のパンフを…。

だんだんハリウッド大作に飽きてきた自分を発見した作品となった。

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2008.01.08

07年邦画ベスト5発表

去年は洋画は『ベスト云々』を語れるほど観てないので,邦画について書きます。これ,世間の評判は別にして,自分の思い入れがものすごく入っているので,観る人によって感じ方はもちろん違うと思います。以下,僕の選ぶ去年の邦画ベスト5。

第1位:『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』
去年観た映画の中で一番エンターテイメントに溢れた傑作です。僕はこれまでエヴァを観たことがなかったのだけれども,そんな僕でも面白いと思う圧倒的な説得力を持つ作品。続編が楽しみ。絶対にDVD BOXを買いたい。

第2位:『Little DJ 小さな恋の物語』
これこそ神木くん好きの僕の思い入れの1本です。別に泣ける作品が評価が高いわけではないが,この作品は映像(照明)が素晴らしかった。神木くんの相手役が福田麻由子ちゃんではなく,大後寿々花だったら,本当に凄い作品になっていたと思う。

第3位:『秒速5センチメートル』
これも僕の好みだけの作品ですね。でも,ラストの山崎まさよしの曲をバックにバンバン畳み掛ける迫力は感動モノ。僕はこういう切ない恋の物語が大好きなので3位にランクインです。これはここでレビューを書けた去年最後の作品になったのでそれも印象に残ってます。

第4位:『それでもボクはやってない』
リアリティ溢れる作品。面白くもあり,一方で考え込ませるプロットは素晴らしいし,それを絶妙の味付けで演出した作り手の意気込み・真意がスクリーンに溢れている作品。現実的には(他の人が選べば)去年NO.1の作品。

第5位:『アヒルと鴨のコインロッカー』
原作ミステリーの面白さを十二分に映画化できた作品。確かに突っ込みどころはあるが,3重構造のプロットが素晴らしい。配役もGood。切ないラストが印象的。一般的には去年のミニシアター系のNO.1の作品。


次点は『しゃべれどもしゃべれども』かなあ。あと,僕的に評価の高い作品は『きみにしか聞こえない』と『キサラギ』ですね。

ちなみに07年の傑作のうちの一本『転々』は,僕が観たのは先週なのでここには入ってません。さて,08年はどうなるのでしょうか。邦画が元気なのはいいのですが,どうも2時間ドラマとの差異を見分けられない作品もあって難しい感じ(それなりに面白かった『HERO』とかは典型)。劇場で魅せるツボをもっと考えてほしいと思います。

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2007.05.02

秒速5センチメートル

サロンシネマ2。新海誠監督。

東京の小学校に通うタカキとアカリは同じ時期に引っ越してきた転校生同士だった。性格も合い,すぐ心を通わせた二人はすぐに仲良しになった。二人でいることが日常の毎日。だが,小学校卒業と共にアカリは引っ越していってしまう。そうして一人中学校へ進学したタカキに半年後,アカリから一通の手紙が届く…。

タカキとアカリの別れとつかの間の再会が描かれる『桜花抄』。タカキが転校した地,種子島での高校の同級生から見た視点で描かれる『コスモナウト』。そして,タカキが社会人になって,どうしようもない自分の人生へのわだかまりを感じつつアカリのことを想う『秒速5センチメートル』。この3編の短編からなるアニメ作品。

まず,この作品が優れている点として,アニメとしては詳細なディテイルまでこだわったその画質を挙げよう。本当にそのひとコマひとコマが細かく美しいのだ。ここまで来るとアニメの域を超えている。本当にひとつの映像作品。この点だけ取っても素晴らしい作品である。

そして3編に分かれるストーリーが,それぞれ独立して深い味わいをもたらしてくれる点。少年時代に恋をした少年少女なら,必ず通過したであろう切なく甘酸っぱい想い。そして,大人になっても捨てきれないその想い。それを嫌味なく,十二分に表現している。

例えば,『桜花抄』で描かれるタカキが東京から栃木の田舎町まで電車で移動する長さの大人が感じる時間感覚との差だとか。初めての好きな女の子とキスする瞬間の想いとか。『コスモナウト』で描かれる女の子の側から見た,好きな男の子が自分のことを好きにはならないと直感する瞬間とか。『秒速5センチメートル』で,踏切でアカリとすれ違ったことに気付いて,電車が通り過ぎる間,アカリがいてくれ,と念じるタカキの想いとか。

もうそのどれもが直球で,僕の胸に突き刺さりまくり。なんて純粋で真っ直ぐな物語なんだろう,と。

特に,ラスト5分,『秒速5センチメートル』のタイトルがバンとスクリーンに広がった瞬間から,山崎まさよしの曲をバックにフラッシュバックのように観客の目に突き刺さる,タカキの12歳から大人になるまでの全3編のインパクトの強いシーンの数々。大波のようにバンバン押し寄せるその迫力と畳み掛ける力強さ。本当に素晴らしい。そしてラストシーン。タカキが電車が通り過ぎる踏切を振り返り,アカリが立ち止まっていることを祈るシーン。電車が通り過ぎたその踏切の向こうにはもう誰もいなかった…というラスト。

切ない。確かにとても切ない。でも,僕はこれをタカキの大人への脱皮の瞬間ととらえたい。この瞬間,タカキは少年時代の過去の呪縛から解き放たれ,真の大人になれたのだ。『失くしたものと大切な得たもの』。その対比がいろんな場面でこの作品には示されている。この作品を観る人にはそういうメタファーにも気を配りながら観てほしい。それくらい深みのある傑作だと僕は思う。

ちなみに『秒速5センチメートル』とはアカリがタカキに言った,桜の花びらが落ちるスピードのことだ。この速度が速いと感じるか,遅いと感じるかは,観るあなた次第だ。

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2007.04.30

東京タワー オカンとボクと,時々,オトン

サンフがボロ負けしてるので現実逃避です。でも,心配はしていません。ミシャを信じましょう。

さて,今日は『東京タワー』を観たので,それをアップします。あらすじは省略。

僕は,先に本を読もうとしたが,映画化されると知り,買わなかった。SPドラマも連ドラも観なかった。先入観が入るのが嫌だったから。オダジジョーがいかにリリーさんを演じるか。しかし,冒頭の病室でのシーンでやややつれた表情のオダジョーが,『全く似てないのにリリーさんに見えた時』に,この作品は成功した,と確信した。しっとりとした観応えのある作品だった。意外と演技ができ,存在感のあった内田也哉子に驚き。見た目も似ている親子で一人の『オカン』を演じる贅沢なキャスティングに唸る。樹木希林の自分の色を前面に出しつつも押さえた演技がいい(息を引き取るシーンにヨーダの死に際を重ねてしまったのは僕だけではあるまい,って話は置いといて)。映画らしい豪華な脇役・カメオ出演陣に支えられ,オダジョーが入魂の演技を魅せる。それだけに,要所に彼女役の松たか子に突然の割り込みのように重要な台詞を言わせ,アップカットで抜く,その芸のない軽い演出が際立って下手糞な技法に観えた。この映画の欠点は真にこの一点である。こんな役をやらされる松たか子がかわいそうだ。泣ける映画を目指しつつも,『泣け泣け』の過剰演出はなく,自然と涙がこぼれ落ちる作品になっている。母への親不幸への懺悔とそれ以上の愛情の念に溢れるなかなかの佳作であった。エンドロールに流れる福山雅治の主題歌とのマッチングも秀逸。是非,エンドロールが終わり,劇場の照明が点くまで席を立たないで余韻に浸っていただきたい。

リリーさんと同年代から,僕の年代(30代後半)までの人が観れば,真にツボの映画になってます。是非,劇場の大画面で観ていただきたい一本です。

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2007.04.10

蟲師

広島バルト11。大友克洋監督。オダギリジョー主演。

サンフの試合を観てなく,記事が書けないので,お茶濁しに久しぶりに映画のレビューを書きます。あらすじ省略。しかも,お決まりのネタバレですいません。

感想。映像はとても綺麗。VFXの使い方が邦画にしては自然で巧く処理できており,これが木々の緑の色とよくマッチしている。しかし,それをぶち壊すくらいプロットがハチャメチャ。ひとつひとつのエピソードや登場するキャラクターは発想が面白いし,とても魅力的なのだが,これが作品にストーリーとして組み込まれるとなぜか消化不良で…魅力大半減。ギンコ(オダジョー)の過去も掘り返したつもりでも,全く解明されてないわけだし(原作読んでから観に来い,とか言われる?)。導入部の話は蟲師の個性的なキャラを際立たせるにはまあOKだが,もっとテンポよくできたはず。次の淡幽(蒼井優)の話が画も含めて一番面白いのだが,ブッツリ終わってしまう。次の虹の蟲を探す話も中途半端。それで終わりかい,って感じ。虹郎はなぜ虹の蟲を探してたの?誰か教えて。そして極めつけが,全編に渡って少しずつ明らかになるギンコの過去と謎の女蟲師の正体の真相が明らかになる話だが,これが本当に謎。映像と話の筋があまりにもかけ離れてしまって,観ている方はラスト近くになって迷子になることに。そしてラストシーン,川原を歩くギンコが突然…(驚愕),そしてエンドロール!!おいおい,そんなのわかんねえよ。エンドロールが流れる間,ずっと自分を責めていた。何か見逃したシーンや聞き逃した台詞はなかったか。う~ん,やっぱりわかんねえや。一本の作品として2時間も観て来た観客にこんな思いをさせていいわけ?結局,何が言いたかったわけ?作り手のメッセージが全く伝わってこない。何の感動もない。大友監督に特別の思い入れがある人やオダジョーファンや蒼井優ファン限定の作品。デートムービーになんかで使ったら,帰りに結末の解釈で相方と絶対喧嘩になります。ご注意を。

オダジョーは確かにこういう役もできるけど,個人的には『時効警察』の主人公のようなちょっと三枚目入った役の方がいい味出ると思うなあ。蒼井優は本当にノってるねえ。役毎に何色でも染まりながら,しっかりと自分の核は守っているところは凄い。もう少し歳をとった彼女の悪女役が観てみたいなあ。江角マキコはあんなに熱演したのにあんな使われ方で可哀想な感じ。

映像はとても良いが脚本が全くダメな映画の典型的な作品でした。オリジナルがあるんだから,もっと上手く本書けよな。

あ,役者さんは脇役の方も含めて皆さんとても良い演技をしてたと思う。それがこの作品の唯一の救いかな。

(パンフレットを読んだら,ちゃんと解釈できたかもしれないけど,『売切れ御礼』だったので…すいません)

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2006.12.09

未レビュー作品を纏めてアップ

いつまで経っても鑑賞後のレビューが書けないので,仕方ないので短評に纏めてみた。
僕は批評する上で,採点するのはあまり好きじゃないけど,短評なので,視覚で出来具合を理解していただくために,五つ星=満点,で評価してみた。

『マッチポイント』…★★★★
『運』,『勝者と敗者』,『野心と愛欲』について,絶妙のウィットを効かせながら描いた作品で,引き込まれる。ラストの展開とオチが最高。S・ヨハンソンが絶品に色っぽい魅力的な女性から全く不快な女性へ堕ちていく姿が男には怖い。

『紙屋悦子の青春』…★★★★
戦時下でも日常の生活に溢れているユーモアと敗戦が迫る厳しい世相を対比させ,どちらも殺さずに絶妙のバランスで描いた反戦映画。『大切な人のために生きていく』という当時の人々の人生の選択に感動。役者がみんないい味出している。急逝された黒木監督にご冥福を申し上げます。映画職人の魂を感じた。

『涙そうそう』…★★
妻夫木聡が大熱演。本当巧くなったねえ。長澤まさみも頑張ってた。兄妹が別れる場面では泣けた。しかし,その後の脚本が最悪で,それまでの役者の努力を全てぶち壊し。おまけに『泣け,泣け』の超過剰演出。逆にどん引き。これがヒットしてるなんておかしいよ。

『フラガール』…★★★★★
笑いと感動と涙に溢れたとてもベタな作りの作品。でも,演者の熱は伝わる。後半はもう蒼井優の演技に泣かされっぱなし。彼女は天才だ。ラストのダンスシーンも素晴らしく,感動。今年の邦画では『ゆれる』と並んでお気に入りの作品。

『イルマーレ』…★★
ラストは予想していたオチと良い意味で裏切られ,ハッピーエンドなラブストーリー。キアヌはこういう誠実な役が似合うね。プロットは好感持てたんだけど,サンドラ・ブロックにあまり魅力を感じないので,★ひとつ減らした結果に。

『トンマッコルへようこそ』…★★★★
ファンタジックに描いた珍しい反戦映画。山奥の平和な理想郷を舞台に利益相反する敵国の兵士達が,戦争の道具としてではなく,次第に人間として大切なもの,国を超えた信頼関係を築いていく姿を感動的に描いた作品。素晴らしいのは,最後の戦闘シーンでさえ,どこかファンタジックな画で仕上げてあるところ。戦争なんてものは本当に不毛だという人間の愚かさを再認識させてくれる作品。

『カポーティ』…★★★★★
重厚な演出に彩られた主演のフィリップ・シーモア・ホフマンの演技が絶品。カポーティが自分の執筆欲のために,人格を偽りながらひとつの事件に深く関わっていくうちに,次第に人格が崩壊していく様を丁寧に,丹念に,残酷に描いている。相当にヘビーな仕上がりだが,映画好きにはたまらない鑑賞感。文句なしの五つ星。

『かもめ食堂』…★★★★
ヘルシンキののんびり感とかもめ食堂の雰囲気がたまらなく良い。小林聡美が背筋がピンと伸びた自立した女性を好演。片桐はいりももたいまさこも強烈なスパイスで効いている。鑑賞感がとても良い。女性に人気があるのも納得。

『手紙』…★★★★
邦画には珍しく重厚な作りの作品。犯罪者ではなく,その家族に対する差別がテーマになっているのだが,安易に差別から逃げずに『向き合えって生きていけ』ときっぱり言い切る作り手のメッセージに拍手したい。泣きの演技をさせたら山田孝之は絶品。玉山鉄二がとても頑張っていた。この作品では沢尻エリカも良かった。差別に負けず,幸せな家庭を築いてほしいと祈らずにはいられないラストだった。

『ただ,君を愛してる』…★★★★★
作品としての出来は星二つくらい。途中で不要なシーンやだるいシーンもある。しかし,クライマックスの写真展でのシーンが僕のツボにハマりまくり。もう泣いた,泣いた。一枚の写真の持つ力を存分にスクリーンで表現していた。そこだけのオチにころっとやられてしまった。玉木宏がこんなに演技ができると思ってなかった。そして,宮﨑あおいの演技が最高。可愛い少女から大人の女性へ脱皮する瞬間を演じきっていた。素晴らしい。他人にはお奨めできないけど,僕的には満足度の高い作品。

『虹の女神~Rainbow Song』…★★★★★
『ただ,君を愛してる』と比べれば,こちらは正統派でしっかりした作り。脚本も演出もこちらの方が上。ストーリー自体も引き込まれるものがある。これも僕のツボにハマった作品。文句なしの五つ星。上野樹里がもう抜群にいい。こういう女の子を男は好きになりやすいのに,市川隼人演ずる智也は最後の最後まで自分の気持ちに気付かない。告白できない想いと気付かない本心のすれ違いが切なくて,いい味出している。そして,妹役の蒼井優の存在がとても効いている。こういう演技も出来るのか。本当に彼女は天才だ。またしても,岩井俊二ワールドに魅せられたなあ。

『父親たちの星条旗』…★★★
戦闘シーンは『プライベート・ライアン』とは違ったアプローチで,迫力ある,悲惨さも前面に出した映像になっている。しかし,英雄に仕立て上げられた主人公達の内面の描き方が不十分で感情移入できなかった。やはり戦勝国側から描かれた物語になっていて,日本人には受け入れ難い。ラストシーンで,年老いて臨終の床にある主人公は,息子に硫黄島での戦闘のことは一切語らず,星条旗を立てた後,仲間と海で遊んだ話をする。それがラストシーン。これがイーストウッドの反戦メッセージだと理解したい。

本当は1本ずつ丁寧にレビューしたかった。自分でも残念。

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2006.11.04

夜のピクニック

品川プリンスシネマ。長澤雅彦監督。多部未華子,石田卓也主演。

年に一度,全校生徒1000人で一緒に24時間夜を徹して,80kmを歩きとおす高校最大のイベントであり,伝統行事である『歩行祭』。それは,生徒達にとっては体力的には辛い行事でもあったが,高校生活を彩る絶好のイベントでもあった。3年生となり,今年で最後の歩行祭を迎える貴子(多部未華子)はこの歩行祭の間に密かな賭けをしていた。それは,一度も話したことのないクラスメイトの融(石田卓也)に話しかけること。そんな簡単なことがこれまで出来なかった秘密が二人にはあった。貴子と融は,同じ父親を持つ血の繋がった異母兄妹だったのだ。この最後の歩行祭で,なんとか融と話がしたい…そんな貴子との想いとは別に,一歩一歩進む毎に歩行祭は終わりに近づいていく。果たして,貴子の賭けの行方は…。

第2回本屋大賞を受賞した恩田陸のベストセラー青春小説の映画化。そして,主演の多部未華子は,去年公開の『HINOKIO』で好演した映画界期待の若手映画女優。期待しなかったわけがない。しかし,広島では不入りで,公開2週目にして朝1回の上映に縮小されるという映画館もあった。つまり,結論として面白くないのである。

元々,貴子と融の,父親の不倫のせいで異母兄妹になってしまったという回避しがたい事実と,そのことに対する長年の内面での葛藤が,歩行祭というかけがえの無いイベントを媒介として浄化されていく物語である。原作でも,二人の心理描写がポイントとなっている。つまり,二人の主役は,難しい貴子と融の心の揺れ,ズレを台詞なしで表現しなければならない。この二人の心の葛藤を乗り越えて浄化させていくステップの表現がこの作品では未消化で物足りなく,説得力がない。これが感動に繋がらない理由だ。正直,多部未華子演じる貴子は原作の貴子とは少し合ってなかった。一方で,融役の石田卓也はまあまあイメージは合っている。しかし,台詞のないシーン(心理描写のシーン)での演出が下手だ。特に,多部未華子はダイヤの原石のような素晴らしい魅力を持った素材。これだけの素材を演出力不足で殺してしまったのは本当にもったいない。演出の仕方次第ではいかようにも輝いたであろうに。彼女が輝かないから,作品に魅力が出なかったのだ。それが残念でならない。

しかし,良いところもあった。まずは,歩行祭をなんとか『特別なイベント』として描き出そうとした努力。大勢がぞろぞろと力なく歩くバックに雄大に広がる自然を捉えたカットの数々。特に秀逸だったのは,海辺の堤防を列をなして生徒が歩くシーンで,クレーンを使った高い視点からの遠望で,生徒達の長い列の向こうに光る海を見事に捉えていた。こういう,おっ,と思わせるカットがあるのだが,単発的で繋がってなかったのが残念だ。この作品のもうひとつの軸である歩行祭のスケールの大きさを描ききれていなかった。

そして,一番良かったのは,なんと言っても終盤,やっと貴子と融が打ち解けて,二人きりで並んで歩きながら語り合うシーンだ。長回しで撮られたこのシーンでは,お互いのわだかまりや葛藤を乗り越えて,ついに話しができたという二人の喜び,汚れなき心の高揚,開放感がスクリーンの隅々まで溢れていて,素直に心が引き込まれ,感動できた。このシーンの二人の演技には文句のつけようがない。この作品の良心と,真に目指したかったものも分かった。だからこそ,それまでの二人の心の葛藤の描き込み不足が残念でならないのだ。脚本と演出の稚拙さ…全くダメ作品ではなく,魅せるものもあっただけに,本当にもったいなく感じた。

それにしても,,多部未華子。透き通った瞳がとても美しく,笑顔が素晴らしい。存在感も抜群だ。これから間違いなく旬を迎える女優さんだ。今作では失敗したが,演出次第で演技ももっとできるはずなので,これからどんな魅力的な映画女優に育っていくか本当に楽しみだ。次回作に期待したい。

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2006.10.14

シュガー&スパイス~風味絶佳~

ワーナー・マイカル・シネマズ広島。中江功監督。柳楽優弥,沢尻エリカ主演。

高校を卒業した志郎(柳楽優弥)は大学に行く必要を感じず,”とりあえず”クルマ関係の仕事がしたいという理由で,ガソリンスタンドで働いていた。仕事にもようやく慣れてきた頃,新しいバイトとして乃里子(沢尻エリカ)が入ってくる。乃里子は年上の大学生に失恋した痛手を負っていたが,次第に志郎の優しさに癒され,二人の距離は近づいていく。そして,お互いの心は通じ合い,付き合うようになる。彼女との幸せな時間。志郎は生まれて初めて他人が自分の全てになったと感じた。そして,乃里子から『志郎が19になったら一緒に暮らそう』と提案される。これが『本当の恋』なのか。志郎は幸せの絶頂だったのだが,乃里子の心には変化が…。

柳楽君が実年齢16歳で19歳の役を演じるという難しい作品となった。自分の人生を振り返っても,高一で大学一年生の気持ちや考えは分からない。そういう意味では,彼は脚本から感じ取るイメージとスタッフからのアドバイスだけを頼りに19歳の志郎を演じ上げたのだと思う。原作の志郎は21歳の設定だが,柳楽君のために若干設定が変えられている。『高校を卒業して初めての恋,そして失恋…そして,男としての成長』とした方がインパクトがあるし,柳楽君が演じるにしてもぴったりの設定だ。そして,弱冠16歳の柳楽君は,いかにも彼らしい役作りでシャイで優しい19歳の志郎を作り上げ,不安定に振れながらも作品の中で志郎と同じように成長し,見事に演じきっている。これがこの作品の最大の見所だ。乃里子役の沢尻エリカは20歳なので,精神年齢を下げずに柳楽君に合わせ,志郎に寄り添う乃里子を演じるのはとても難しかったと思うが,年上の強気を抜いた控え気味の演技で,スタッフの演出協力もあり,うまく乗り切っている。二人が恋人に見えたこの時点でこの作品はある程度成功の域に達していると思う。鑑賞後の感想は『なんかテレビの2時間ドラマみたいなテイストやったなあ』だが,それを何とか映画作品に引き上げたのは柳楽君の存在だ。やはり柳楽君にはテレビタレント等とは違う彼独特の特別な存在感があり,柳楽君あっての志郎だし,柳楽君が主役を張る時点でそれはもう一本の立派な『映画作品』なのである。

原作では,志郎は何の前触れもなく,乃里子の心変わりの前に突然フラれる。詳しい理由の説明の描写は全くない。わざと淡々と描くことで,作者の山田詠美は『女の子の恋心に理由なんてない。そんなふうに移ろい易いものなのよ』といった感じでさっぱりと割り切って書かれている。映画では,グランマ(夏木マリ,怪演)の大昔の失恋と絡めて,乃里子の心変わりの理由の提示を用意しているが,それは映像化するために万人に乃里子の心変わりにもちゃんとした理由がある,と納得させるための作品としての演出だ。確かに物語に広がりと繋がりは出たが,僕は原作のように説明がましくなく,さっぱり描いてくれた方が,女の子の気持ちの本質,そして本当の恋に必要なもの,がもっと鮮明になってよかったのではないか,と思っている。さすがの沢尻エリカも,この乃里子の心変わりの心理表現については巧くできてなかった。演出不足のせいもあろうが,この辺がちょっと安易で『2時間ドラマ的なテイスト』になっている原因なのではないだろうか。

だから,『二人が幸せ絶頂の時まで』と『キャラメルの箱に書かれてあった文字(滋養豊富 風味絶佳)を見て,志郎がフラれた理由に気付き,本当の恋とはどんなものかを悟るラストシーン』の場面の描き方はとてもよかった。どちらもグランマの存在が絶妙のスパイスになっていた。そして,ラスト近くの最後に乃里子を自転車で追いかけるが追いつけず,自分が失ったものの大きさに気付いて声にならない声で泣き叫ぶ切ない志郎の姿にはジンときた。僕も恥ずかしながら,19歳の時に同じような経験をしたことがある。十代の恋とはそういう風に甘酸っぱく,切ないものだ。柳楽君に自分に重ねることができて,グッと作品に引き込まれたシーンだった。そして男は一歩大人への階段を上がれるんだよ。真に恋とは『シュガー&スパイス』。好きな気持ちだけじゃだめなんだ。大人の恋って,難しいねえ。

そう,『優しいだけ』の男は最終的には選ばれずに『返品』されるのだ。初めての失恋という代償を払い,そのことを体験した志郎の次の恋が素晴らしいものになることを祈りたい。

この作品は,主演者達と同年齢近くの男女が観れば,それなりに共感が得られる作品に仕上がっているのではないだろうか。または僕と同じように,十代後半や二十代前半に失恋の痛手を負った人向け。素直に感情移入できる。ただの失恋映画ではなく,最後にちゃんと救いが用意されていて,元気づけてくれる。しかし,それ以外の世代の人には,やはり『2時間ドラマ』的な印象で,感情移入しにくいのではないだろうか。

柳楽君は16歳で19歳の役を演じられるなんて,本当にいい経験積んでいる。これからどんな役者さんに育っていくんだろう。これからが本当に楽しみ。この作品は彼のいろんな表情,演技が観れて,そしてそれがどれも魅力的だったのが収穫だった。これからも応援していきたい。

ちなみに原作『風味絶佳』は6編の短編集。山田詠美が,女性心理の本質を絶妙の表現で描いており,奥が深く読み応えたっぷりの作品。特に僕みたいに恋愛経験の少ない男性の方にはとても女性心理の勉強になるので,是非読んでみてほしい(笑)。映画では,作品中の名台詞が各所で絶妙に使用されて,真に風味絶佳な味を出している。

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2006.09.26

ゆれる

シネツイン1。西川美和監督。オダギリジョー,香川照之主演。

東京で写真家として成功している猛(オダギリジョー)は,母の一周忌で久しぶりに帰郷する。実家には,地元に残り家業を継いだ兄・稔(香川照之)と父が暮らしていた。猛は稔と,二人の幼馴染の智恵子と3人で近くの渓谷に遊びに行った。そこは兄弟が幼かった頃,両親がよく連れてきてくれて思い出の場所だった。だが,稔にその記憶はない。懐かしい場所ではしゃぐ稔を置いて,猛は渓谷の吊り橋を渡って写真を撮りに行く。猛に想いを寄せ,後を追う智恵子は吊り橋を渡る。追いかける彼女に密かな想いを抱く稔。そして,遠くから吊り橋を見上げる猛は,橋の上での二人の信じられない光景を目の当たりにするのだった…。

ちょっと緩いオープニングで始まるのだが,ドラマは吊り橋の上で予想外の展開を見せ始める。相反する兄弟二人の心理描写と繊細で出来の良い脚本と見応えのある演出が魅力たっぷりに魅せる兄弟のせめぎ合い。香川照之の演技が相変わらず凄い。細かな表情から所作まで全く隙がない。真に完璧の演技でスクリーンにぐいぐい引きこまれる。オダギリジョーもこの作品では負けずに頑張っている。面会室での稔に対峙するシーンや,裁判での衝撃の告白をするシーンの曇った目の奥の輝きの鋭さには感心した。こんな演技もできるようになったのかと。裁判シーンも本格的で,本当にぐいぐい引き込まれる。果たして真実は何が起こったのか。『ゆれる』とは物語に出てくる吊り橋のことを象徴しているのかと思っていたら,そうではなく,登場人物達の心情が『ゆれる』のだ。その描き方が抜群に巧い。考え抜かれたカメラアングルとカット割り。部分的に挿入される数パターンの吊り橋上の出来事の描写。ひとつである真実が猛だけではなく,観客にも最後まで多面的に観え,観客の感覚も『ゆれる』のだ。久しぶりに娯楽という面ではなく,ドラマの部分で魅せられる最上級の仕上がりの映画を観た。映画好きにはたまらない出来上がりの作品になっている。とても繊細に,丁寧に作り込めれた作品。これぞミニシアターで観るべき作品だ。低予算でもこういう良作は出来るのだ。だから映画は面白い。上映館のシネツイン1は1回目の上映から満員の大入り。2回目を待つ行列が出来ていた。とても嬉しいことだ。そして何よりも,作品の最後に『救い』が用意されていることがより鑑賞感を高めてくれて,満足度もより一層高まる。絶対にお薦めできる,映画好きに観てほしい一本だ。

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2006.09.13

ラフ

広島宝塚1。大谷健太郎監督。長澤まさみ,速見もこみち主演。

亜美(長澤まさみ)と圭介(速見もこみち)は,同じ和菓子屋の商売敵の家に生まれたが,同じ高校に入学し,亜美は高飛び込みの選手,圭介は競泳選手として出会う。初めはいがみあっていた二人だが,学生寮生活や水泳への情熱を通し,次第に惹かれあっていく。しかし,亜美には幼馴染で年上の婚約者がいた。それは圭介の憧れ,競泳自由形日本記録保持者の仲西弘樹だった…。

公開わずか1週間で不人気のためか,広島では夜の上映がなくなってしまい,仕方なく大スクリーンで観るために,朝の9時からのこの上映一回に合わせ,前日2時まで飲んでいたにも関わらず,自宅からタクシーまで使って(笑)観にいった作品。それもこれも長澤まさみの水着姿を大スクリーンで観るため,といういかにもオヤジらしい理由だった。広島でたぶん2番目に広い映画館に,僕の他は高校生友情割引使用の女子高生達(もこみち狙い?)20人ほどしかいなかった。

作品については,あだち充作品の最大の魅力である『間の美学』が全く表現できていないし,主人公二人がなぜお互いを好きになっていくのか,という最も重要な部分がすっかり抜けていて(これがこの原作の一番魅力的なところ),原作ファンとしてはダメ出しせざるをえない出来栄えの作品になっていて残念だった。速水もこみちの圭介は,やっぱりイメージ(主に外見によるもの)が全く違って感情移入できなかった。これはもこみち君のせいではない。キャスティングの失敗だ。

但し,長澤まさみのアイドル映画と観れば,その評価は変わってくる。それはこの作品が,恐らく彼女の最後の水着姿が拝める作品になるだろうからだ。彼女はとにかく手足が長くスタイルが抜群に良い。終盤で,グラドルの市川由衣と競泳水着で並んで映るカットがあったが,両者のスタイルの差が歴然。長澤まさみの方が遥かに美しい。とにかく脚長い~。こんなビーナスみたいな長澤まさみと比べられる市川由衣が可哀想だよ。この美しい姿が今後観れないかと思うと本当にもったいない。彼女に演技力がついて,もっと大女優になった時に,違った意味で価値が上がる作品になるかもしれない。この作品のDVDを発売する時は,長澤まさみの水着シーンのみをピックアップしたメイキング特典別ディスクを付けるべきだな。てか,その方が絶対売れるって。しかし,東宝のガードは固い。『タッチ』の時は発売されていた作品のオリジナル写真集等というものは,この『ラフ』では発売されていない。 東宝としては,『まさみの最後の水着姿が観たいのなら,映画館へ来い』ということなのだろう。(今回僕はまんまとその思惑に釣られたのだが…)

その代わり,水泳と高飛び込みのシーンは,とても迫力あり,綺麗に撮れていた。カメラワークも各カットもアイデアに溢れ,この部分においては,クオリティは高いと思った。圭介と仲西の最後の対決まで描くとは思っていなかったが,この競泳シーンはとても良く撮れていた。確かに漫画では表現できない世界だと感じた。ただ,圭介の最後のガッツポーズの最終カットはいらないと思った。どっちが勝ってたかなんて,みんな原作の連載の時から分かっていたんだから…。

速水もこみちの熱狂的なファンの女の子と,長澤まさみの水着姿目当ての方以外にはあまりお薦めできない作品だ。しかし,長澤まさみの持つ今後の可能性の大きさ,伸びシロの大きさを十分に感じさせてくれる作品ではあった。『タッチ』からもグンと伸びていた。秋クールのドラマ,『セーラー服と機関銃』は絶対観なければ(当然,水着姿目当てではありません),と心に誓う。長澤まさみのファンになってしまったようだな(バカ)。

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2006.05.13

LIMIT OF LOVE 海猿

ワーナー・マイカル・シネマズ広島。羽住英一郎監督。伊藤英明,加藤あい主演。

潜水士となって2年。大輔(伊藤英明)は鹿児島・第十管区に異動となり,海難救助の最前線で働いていた。恋人・環菜(加藤あい)との結婚話も進み,彼女が鹿児島に手作りのウェディングドレスを見せに訪れてくれるが,心に引っかかることがり,素直に喜べない。そんな時,鹿児島沖で大型フェリーの座礁事故が発生。大輔も現場に急行する。フェリーには620人もの乗員・乗客が。大輔達は彼ら要救助者を救えるのか…。

一昨年に映画が,去年にドラマが製作され,その完結編として製作された映画の第2弾。映画のPART1は,潜水士を目指す若者達の青春群像を描いてなかなか見応えのある作品だったし,ドラマの方は潜水士になった大輔の成長劇を縦軸に,環菜との恋愛・信頼関係を横軸に,生と死,仲間との信頼関係の重さを丁寧に描いて高い完成度だった。そして,この第3弾は,映画らしいスケールの大きさで更に満足度の高い作品に仕上がっていて,PART1から観続けている者を失望させることのない出来栄えになっている。

海難パニックものの映画としては,なんと言っても『タイタニック』が挙げられるが,さすがにあそこまでお金はかけられないので,船内パニックと次々と襲い掛かるパニック描写はかなわないが,邦画として観れば,かなり高いレベルをいっていると思う。本当は,最初の620人が逃げ惑うパニックぶりをもう少し迫力たっぷりに描けたら,もっと重厚な仕上がりになったと思うが,大輔がたった2人の要救護者を救うために命を懸ける物語として観れば『タイタニック』と比べても失望することはない。

この作品のキーワードは,『決意』と『信頼』と『愛』である。潜水士として経験を踏んだ大輔が誓う要救護者を絶対に助けるという『決意』とどんなことがあっても仲間は助けるという『信頼』と環菜に対する深い『愛』である。この3つが非常に巧くシンクロするのが,最大の見せ場である,脱出直前の環菜への携帯電話からの愛の告白であり,この一言一言の重さが困難を経て生き抜こうとする大輔の人間としての成長を物語ってくれる。

ややパニックの作り込み方や物語の展開が唐突で突っ込みたい軽いところはあるが,それは,出来のよいCGとセット,海上保安庁全面協力による迫力ある映像に免じて見逃すこととする。終盤の見せ所はこれでもかというお涙頂戴の展開だが,これも演者とスタッフの目に浮かぶ努力に免じて緩そう。

とにかく劇場版PART1とドラマを観ている人は必見。単品で観ても十分のめり込める作品に仕上がっている。伊藤英明は格好いいとは思わないが,彼が演じる仙崎大輔は文句なしに格好いい。主人公が格好良く描かれている映画にハズレはない。特にカップルで観ることをお薦めする。

パンフを買おうとしたら売切れだった。製作の裏話が読みたかったな。原作漫画は読んでないけど,PART4があってら絶対観にいく。てか,作ってほしい。この奥の深い世界観にはハマリますわ。

ラストのキスシーンには感動とともに苦笑。僕も誰かにあんなふうに言われてみたい(アホ)。

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2006.05.10

トム・ヤン・クン!

新宿シネマミラノ。プラッチャヤー・ピンゲーオ監督,トニー・ジャー主演。

タイのある村で,象の親子を育てて生活する父と子,カーン。やがて親象を王様に献上するための審査会に参加するが,国際密輸組織に象の親子を連れ去られてしまう。国際密輸組織のアジトがオーストラリアにあるとしったカーンは象の親子を助けるため単身オーストラリアに向かう。そこではカーンと国際密輸組織との壮絶な戦いが待ち受けていた…。

『ワイヤーなし!CGなし!スタントなし!』で驚きのアクションを観せてくれた『マッハ!』のスタッフが,更なる大きな仕掛けを盛り込んで極上のアクション映画を完成。『マッハ!』の『痛い=本気度100%』のアクションにも恐れ入ったが,コイツは更に凄い。とにかく主演のトニー・ジャーのアクションが凄い。それも,ゲームのようにいろんなステージが用意されていて,それを違った技を駆使しながら,クリアしていく感覚。もちろん観客は,トニー演じるカーンになった気分で,このスリリングなゲームをクリアしていくのだ。この体験が爽快・痛快でないはずがない。

一番の見せ場は,中盤くらいにある敵のアジトでの決闘のシーン。螺旋階段を上りながらそれぞれのフロアで何十人もの敵をなぎ倒していく。時間にして恐らく10分弱。これが,なんとワンカメのワンカット,編集無しなのだ!もちろん敵を倒す技に同じものはなく,トニーは留まることなく敵を倒しながら階段を駆け上がる。カットの最後の方は,さすがに乳酸溜まりまくりなのだろう。技のキレが若干落ちていくのも目に見えて分かるが,ステージ終盤でそれがまたどんどん上昇してくるのだから凄い。このシーン観せてもらっただけで,もうチケット代でおつりがくるくらいの満足感。これでスケールダウンすることなく,アクションシーンはどんどん面白くなっていくのがまた凄い。

ややストーリーの展開がつじつまが合わなかったり,唐突だったりするが,それも『マッハ!』に比べれば,格段に進歩しているので,納得できる範囲だ。この作品は難しいこと考えずに単純に2時間の娯楽を『買う』という意味ではうってつけの作品だ。損をしたとは絶対に思わない。とにかくトニー・ジャーの『現在世界最高峰』のムエタイアクションを実際に体験してほしい。脚本次第では,もっと面白い映画に化ける可能性大の魅力あるアクションスターの新星である。

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2006.04.14

映画はどうなった?

ここは映画ブログでもあるのだが,もう1ケ月以上も映画の記事をアップできていない。3月は転勤が決まっていたせいもあり,仕事が忙しかったせいだが,それにしてもサボリ過ぎだよね。ぴあも広島に帰ってきて買えなくなったので,観る映画をチョイスできない。今週末は飲み会と磐田遠征があり,またも観にいけないのだが,来週はタウン誌でも買って次の作品をチョイスしよう。しばらくレビュー書かないと自分のスタイル忘れてしまいそう。

2月と3月初めまでで観た映画と一言コメントを。

『男たちの大和 YAMATO』…戦闘シーンの視覚効果は『プライベート・ライアン』そっくり。大型セットを使い迫力を演出したが,もっとCGを使って大和全体が見えるカットもあった方がよかったかも。この点は『タイタニック』は上手かった。しかし,これ観て泣けるかね。結構人が入っていて,多くの人が泣いていたが,俺は泣けなかったな。

『THE有頂天ホテル』…すっごい期待して行ったのに,ほとんど笑えなかった。小ネタの連続で,どこが爆笑のツボなのか逆に分からないような印象。僕の好きな松たか子のシーンではことごとく彼女が滑っていて軽いめまいがしたほど。役所広司は大奮闘だったけれど,オダギリ・ジョーにああいう役させて,それがハマっていて面白い方が印象に残った。豪華出演陣のわりには普通の出来栄え。もうひと工夫ほしかったな。

『博士の愛した数式』…爽やかな鑑賞感の作品だった。前向きな姿勢の作風が良かった。しかし,深っちゃんがついに『お母さん』ですよ。デビューの頃から彼女を知る世代にとっては超衝撃の設定。でも,彼女の素の良さが作品の中で上手い具合に料理されていた。吉岡秀隆は役にとらわれない演技が出来ていて着実にいい俳優として成長していると思う。

『フライトプラン』…ジョディ・フォスターの主演作とあってかなり期待していたが,サスペンスとしては今イチの出来。J・フォスターがもっと飛行機の設計者としての知識を駆使した活躍&謎解きを期待したが,この辺のパンチが弱い。特にラストのクライマックス(オチ)があれでは…観てる方は納得しかねる。なぜ母と娘は助かったのか?その辺が説明不足で,すっきりした気分で帰れなかったのが,この作品の評価に繋がるのかな。

『ミュンヘン』…とてつもなく重く,暗い作品。何の救いもない。だから鑑賞後もどーんと落ち込んでしまう。スピルバーグが言いたいことはなんとなく分かる気もするが,主張もクリアでなく他面的なのでどの様に解釈したらよいのかに苦しむ。このテーマで2時間44分もの大作が撮れるのはスピルバーグだからこそ?世界の不条理に悩んでいる人にだけお薦めできる作品。でも,家でDVDで観る作風ではないわな。

『県庁の星』…キタよ,織田裕二の成りきり空回り全開演技大爆発の作品。どんな作品も自分独自の『演出』で役作りしてることを観客にこれだけ押し付けがましく主張できるのは,良くも悪くも織田裕二の凄いところと言うべきか。その演技が上手いかどうかは彼の場合は関係ないか。柴咲コウがほどよくアク抜きになっていた。ラストのエピソードがやや爽快感に欠けるのも,コメディとしては今イチの評価になるか。いや,織田裕二は俺ら同世代の星かもしれない。矢田ちゃんとか柴咲コウとか,一回りも違うトップ若手女優陣といい関係になれる…そういう意味では,福山雅治と並んで尊敬するし,もう何年かその位置でいてほしいと願ってしまう。

以上,1ケ月以上溜めていた一言レビューでした。

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2006.02.14

キング・コング

北島シネマサンシャイン。ピーター・ジャクソン監督。ナオミ・ワッツ,ジャック・グラック,エイドリアン・ブロディ他出演。

大恐慌時代の1933年のニューヨーク。売れない女優のアン(ナオミ・ワッツ)はB級監督のカール(ジャック・ブラック)にスカウトされ,撮影隊と脚本家のジャック(エイドリアン・ブロディ)を乗せた船は航海の途中,深い霧に包まれ座礁してしまう。漂着したのは,カールが目指していた孤島,スカル・アイランドだった。クルー達は早速上陸するが,待ち受けていた先住民に襲われ,アンは連れ去られてしまう。彼らはあるものにアンを生贄として捧げる。やがてアンの目の前に現れたのは…。

正月に観た映画をやっとアップできます。他にも観た映画はあるけれど,これだけは絶対にアップしないと。最高級のカタルシス。映画を観て,こんなに純粋に楽しめ,感動したのはいつ以来だろう。鑑賞後に溢れる高揚感。気持ちの高鳴りに魂が震える。素晴らしい出来栄え。CGはもちろん最上級に素晴らしい。スターウォーズに匹敵する,いや凌駕してしまうかもしれない。キング・コングの体毛の一本一本の描き込みや,顔の皺,そしてトドメは,コングの目,瞳の描き込みの素晴らしさがこの作品の良否を決定してしまっている。この瞳がCGなのか。本物と見紛う瞳の輝き,曇りにコングの喜怒哀楽が120%で表現されていてもう感情移入せずにはいられない。コング対恐竜のバトル等,アイデア溢れる構図のクオリティの高い画をこれでもか,とお腹いっぱいになるまで魅せてくれる。観る前は,単なるCGアニメと実写の合体モノと思い込んでいた予想をひっくり返してくれる。ここまで完成度が高いと感動モノだ。

そして,もっと凄いのは単なるVFXモノに終わっておらず,ドラマとしてもかなり上級の仕上がりのラブストーリーに仕上がっている。ナオミ・ワッツってこんな美人だったか?この時点でもう僕はこの作品の魔法にかかっているのだ。ラスト近く,コングはエンパイア・ステートビルに上るが,それはアンと二人で朝日を見るためだったのか。そう考えると,なんともロマンティックだし,美しいプロットだ。やがて訪れる悲劇の前で,朝日を眺めるコングとアンの姿の美しさが余計に際立つ。ラスト,戦闘機とのバトルの末,コングは息絶え,ビルの下に落ちていく。アンとの別れの時。コングの表情,最高に感動させる。転落したコングの顔をあえて写さなかったのは正解だと思う。あと,コングとアンが公演の凍った池の上でじゃれあうシーンは良かった。最高の美女と野獣のデートシーン。作り手の良心が見える。

この作品は,この純粋なラブストーリーの裏側にある,人種差別や,人間でないもの,異形のものへの拒絶感の残酷さ,空しさもきちんと描いている。動物擁護を訴えながら,コングのような異形の象徴を都合のいいように扱う人間の傲慢さを見落としてはいけない。

監督・スタッフのキング・コングへの思い入れ・愛情がいっぱい詰まった入魂の一作。3時間8分,スクリーンに釘付けの驚くほどに完成度の高い作品に仕上がっている。生涯ベストの何位かには絶対に入れたい作品。ピーター・ジャクソン監督,恐るべし。『ロード・オブ・ザ・リング 王の帰還』のような素晴らしい作品に続いて,これほどの作品を観せてくれるとは。次回はどんなマジックで僕らを驚かせてくれるのか,今から楽しみだ。

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2006.01.04

年末と年始の映画

明けましておめでとうございます。

ここはサンフの話題がない時は,映画ブログになるはずなのですが,去年は週末に体調が悪かったりしたことが多くあったせいもあり,一昨年の100本強と比較してはるかに少ない40本弱で終わってしまいました。週1本の最低ノルマも達成できていない…ちょっとへこんでます。11月と12月は,『アワーミュージック』と『イン・ハー・シューズ』と『大停電の夜に』と『Mr.&Mrs.スミス』を観ていますが,レビューをアップできていません。『アワーミュージック』は衝撃的な作品だったのですが,僕には難解すぎて理解できなかったのでレビューは書きません。その他の作品は,公開が終わっていたりしますが,サンフがオフの間にレビューを書いていこうと思います。

さて,2006年の1本目は『キング・コング』をチョイスしました。帰省先のシネコンで観ました。これが大当たり。いきなり素晴らしい作品に出会えました。映画好き必見の作品です。後日,詳細なレビュー書きます。絶対に観て損をしない作品だと思いますので,是非鑑賞して下さい。作り手の作品に対する愛情が溢れているこだわり深い作品でした。

さて,今年は何本観れるのか。50本~100本の間を狙って鑑賞することにします。もちろん残りの休みの時間はサンフに全力投球で今年も行きますぜ。

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2005.11.30

ALWAYS 三丁目の夕日

品川プリンスシネマ。吉岡秀隆,堤真一,薬師丸ひろ子他出演。

昭和33年,東京タワーが完成するこの年,東京下町の夕日町三丁目の自動車修理工場,鈴木オートには,短気な頑固親父の則文(堤真一)と母親のトモエ(薬師丸ひろ子),小学生の一平(小清水一揮)が暮らしていたが,集団就職で上京してきた六子(堀北真希)が住み込みで働くようになる。一方,鈴木オートの向かいにある駄菓子屋の店主の竜之介(吉岡秀隆)は,作家を目指しながら,今は少年誌に子供向けの冒険小説を執筆しつつ,細々と生活している。そんな竜之介が恋心を抱く一杯飲み屋のおかみ・ヒロミ(小雪)のところに引き取り手のない少年・淳之介(須賀健太)が連れてこられるが,竜之介は酔った勢いでヒロミに言いくるめられ,淳之介を預かることに…。

鑑賞前は実は全く期待していなかったのだが,これが意外や当たりの作品だった。ホームランとは言わないまでも,イチローのクリーンヒットのような爽快感が残った。たくさんの人に観てほしい,ほんのり温かい良心的な作品に仕上がっている。

昭和33年の東京の町並みを忠実に再現したセットと程ほどに出来栄えの良いCGを駆使して僕らをその時代へタイムスリップさせてくれる。CGは少し安っぽさが残るがそれがまた時代を感じさせ,雰囲気を出している。この雰囲気作りに成功した時点で,この映画は成功の鍵を手に入れたと言っていい。あとは役者がそれに乗っかるだけ。吉岡秀隆は,滅多にみないダメ男役だったが,彼らしい誠実さと相まっていい味だしていてとても良かった。堤真一はこの時代の頑固親父にはズマートすぎて残念ながら見えなかった。が,彼もメリハリの効いたいい演技で物語を締めてくれた。僕的には,中・高校時代の最強アイドル・薬師丸ひろ子が見事に『おばちゃん役』を演じていて,違和感が全くなかったのにちょっと軽く脳震盪が…。でも,今放送中のドラマ,『1リットルの涙』の母親役でもそうだが,しっかりした演技ができる女優さんに成長したのだな,嬉しくと思う。ちょっとしたサプライズは,堀北真希が結構いい味出していたことだ。ドラマ,『野ブタ。をプロデュース』では全然違う役柄を演じているが,あちらも味のある演技をしている。演技に幅がある。ただのアイドルの一人としてしか見てなかったが,このコは結構良い素材なのかもしれない。小雪は,やはりこの時代の女性にしては浮きすぎていたが,逆にそれが作品を地味にせず,いいアクセントになっていた。そういう小雪演じるヒロミを真剣に好きになり,婚約指輪の箱しか買えなかったのにヒロミにプロポーズする竜之介。見えない幻の指輪を竜之介がヒロミにせがまれて,はめてやる素振りをするシーンには,ちょっとジ~ンときた。それに,トモエの付けてくれた『お守り』のおかげで無事に家に帰ることができた一平が素直にトモエに『ありがとう』と言うシーンにも,親子の優しさと思いやりが溢れてきてジンときた。

そう,どれもよくあるプロットなのだが,豪華なキャスト,味のある役者が丁寧に演じて,それをまた丁寧に描いているので,見応えもあり,素直に感動できるのである。本当に温かい作品だと思う。

しかし,ふと疑問に思った。これは,『昔はこんな良き時代があったんだよ』ということを懐かしむ作品なのか。それとも,『今も変わらずそういう人情が日本人の中に生きている』ということを再認識するための作品なのか。できれば,他のほとんどの鑑賞者の感想は後者であってほしいなあ,と願いたい。

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2005.11.21

春の雪

新宿グランドオデヲン座。行定勲監督。妻夫木聡,竹内結子主演。

時は大正初期。侯爵家の一人息子の清顕(妻夫木聡)と幼馴染の伯爵家の一人娘の聡子(竹内結子)は幼い頃からお互いのことを恋い慕っていたが,年月が過ぎ,青年になった清顕は,昔と変わらぬ恋心を秘める聡子を意識的にはぐらかし,自分の気持ちに素直に振舞えない。そんな時,宮家の王子と聡子の縁談の話が家同士の間で進み,聡子は必死に清顕からの求愛を願うが,清顕はわざと聡子を突き放し,天皇からの勅許も出てしまい,聡子の縁談が決まってしまう。しかし,そうなって初めて自分の本当の気持ちに気付く清顕。溢れ出る聡子への想いを聡子に求愛し,清顕と聡子はお互いの身体を重ね合い,激しく求め愛し合う。許されない逢瀬を重ねる二人だったが…。

まず,この作品は2時間30分もある堂々とした大作であったが,観ている途中で退屈になり時計を見るようなことはなかった。ちゃんと自分はその世界観に引きずりこまれていた。そういう意味では,見応えのある作品だったのかもしれない。現に,大正時代の雰囲気をスクリーン上で見事に再現。凝ったセット・美術,時代考証を重ねた衣装,考え抜かれたフレームワークとカット割り。本当に細かいところまで手が行き届いていている。日本の四季をバックにした画が抜群に美しい。この作りの細やかさには本当に感心した。

が,しかし,その入魂でこしらえた器の具となるべき,役者に華がないのだ。妻夫木聡の演じた清顕は元々人間的に未熟な設定だが,彼が演じると未熟を通り越して子供っぽくしか見えないので,全く感情移入ができない。聡子を駄々っ子のように欲しがる姿は幼稚としか思えない。それを受け入れる聡子も,内に秘めた激しい愛情のようなものを持っているはずなのだが,それが全く竹内結子の演技からは読み取れない。単に清顕に身体を預けているだけ?って感じてしまう。二人が大きな障害を越えても,逢瀬を重ね,愛し合う場面こそ,単なるラブシーンを越えて,二人の純愛を表現する最重要な場面だと理解しているが,それが単なる形だけのラブシーンに終わってしまっているのが本当に残念だ。全く艶やかさがない。これが竹内結子のキャスティングでは制約の限界(ヌードはNG)なのかもしれないが,最大の見せ場がこれでは,僕は不勉強で原作は未読だが,三島由紀夫も浮かばれないことだろう。竹内結子が大正の女性に見えなかったのも,マイナスな点だろう。あえてそういう演出したのだろうが,他の作りが徹底的に大正に拘っているだけに,彼女が浮いてしまった印象を受けた。ラストでああいう結末を聡子が選ぶなら,それまでに聡子側からの心情表現ももっとあっても良かったかもしれない。妻夫木聡も竹内結子も精一杯の演技をしたが,あとひとつの大きな壁を二人とも突き抜けることができなかったのだと思う。もっと演技の幅を広げることが必要だ。主役の二人がそこまでの演技しかできなかったことが,ここまで丁寧な映像を作り上げた行定勲監督の最大の誤算だろうか。まあ,このキャスティングだから客が呼べるわけで,痛し痒しだが。行定監督が丁寧な画を作り込む才能はあることは分かったので,あとは脚本が今ひとつだったのがマイナス要因かと。そういう意味では惜しい作品だった。

最後に,この作品の雰囲気に宇多田ヒカルのエンディング曲はマッチしてなかったと思う。かなり大ハズレ。

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2005.11.10

蝉しぐれ

品川プリンスシネマ。黒土三男監督。市川染五郎主演。(すいません,『せみ』の字がでませんでした)

下級武士である父を尊敬する少年・文四郎(市川染五郎)は,剣術に励むかたわら,隣家の幼馴染ふくと二人の友人達と仲睦ましく暮らしていた。しかし,父が藩内の権力抗争に巻き込まれ,切腹を言い渡される。父の遺体を大八車に積んで家に戻ろうとする文四郎だが,途中の坂道を一人では越えられなくなってしまう。そこに現れたのは,ふくだった。二人は泣きながら,大八車を引いて坂を越えていくのだった。そんなふくが江戸屋敷の奥に勤めることになり,二人に別れの時が来る。お互いの想いを伝えられないまま,離れ離れとなった二人。月日は過ぎて,青年になった文四郎は,ふくが殿の側室となり,故郷に戻り出産したという話を聞く。やがて二人は運命の再会をすることになるのだが…。

藤沢周平原作の映画化である。山田洋次監督に先行して映画化された同じ藤沢周平作品とどうしても比べてしまう(と言っても,僕は『隠し剣鬼の爪』しか観てないが)。同じ山形の小藩という設定なのに,黒土監督版では,演者は方言を使わない。その分,観やすいのは確かだが,山田監督版を先に知ると何か違和感を感じる。だが,それは,作品の本筋には全く影響を与えていない。市川染五郎も木村佳乃も方言を使わない方が役にマッチしていると思う。特に最後の絡み(ここが一番の見所)で,二人が台詞の上でお互いの気持ちを確認しあう場面においては,この台詞の一言一言が胸に突き刺さってくるので,素直に感動できるためにも,方言でなかった方が良かったと思う。

とても丁寧に撮られた作品だと思う。日本の四季の美しさを丁寧に表現している。人物の描き方も奥行きがある。しかし,敵役の家老のキャラが立ってなくて勧善懲悪感が今ひとつだったのが惜しいところ。また,見せ場のひとつである,文四郎の欅御殿での攻防では,人一人切り倒す度に,刀を取り替えるという設定の細やかさ(真剣で人を切ると刃こぼれと血のりで,もうその刀は使い物にならなくなる,というのが本当の姿)が迫力と緊迫感を増徴している。しかし,剣の達人のはずの文四郎にしては,市川染五郎の殺陣は今ひとつ達人には見えなかったが,命を懸けているという恐怖感は出ていたと思う。

この作品は,前述の少年時代の坂道のシーンと,ラストの最後に二人が絡むシーンが全てだな。とにかくお互いの台詞がいい。『忘れようと,忘れ果てようとしても,忘れられるものではございません』…視線は合わさずとも,何とも言えない思い入れ深い表情の市川染五郎の演技とそれを受け止める美しい佇まいの木村佳乃がこの映画に合格点を与えてもいいと思えた。奇をてらった演出もなく,正統派で作りこまれた格調高い時代劇の佳作である。もう少しプロットに重みがあれば,もっと感動も増しただろうが,2時間の枠ではこれがいっぱいのところだろうと思う。市川染五郎と木村佳乃に違和感を感じる人もいるだろう。そういう人にとっては,平均点以上の作品にはならないとも感じる。僕はこういうしっとりとした出来栄えを静かに味わう邦画もたまにはあってもよいと思うのだが,いかがか。

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2005.11.08

SAW2

新宿アカデミー。ダーレン・リン・バウズマン監督。ダニー・ウォルバーグ他出演。

刑事のエリックは,同僚の女刑事ケリーに呼び出され,殺人現場に向かう。そこには奇怪な器具を頭に装着され,惨殺された死体が転がっていた。その殺し方はどうやらあの連続猟奇殺人犯の『ジグソウ』の仕業らしい。エリックはジグソウが残したメッセージからジグソウのアジトの場所を知る。アジトに急行すると,そこにはジグソウがいて,拍子抜けするくらい簡単にジグソウを確保できてしまう。しかし,アジトのモニターには,新たなるジグソウの8人の囚人達が新たなゲームに臨んでいる姿が映し出されていた。なんとそこには,エリックの息子のダニエルがいた。驚愕するエリックは,息子を助けようと必死にジグソウに詰め寄っていく。タイムリミットは2時間。エリックは息子を死の危機から救えるのか…。

僕はホラー・スリラーの類がとても苦手で,普段は絶対観にいかないのだが,去年の今頃はどの映画を観ても素直に感動できない状態に陥っていたので,ショック療法として,観にいったのが,この前作『SAW』。『ソリッドシュチュエーションスリラー』と名付けられたその作品の怖さは通常のスリラーとは一線を画し,サスペンスのテイストも含まれ,恐怖と共に謎解きをしながら物語を追っていくという斬新な感覚が新鮮に感じた。特にラスト3分間での驚愕のどんでん返しには絶句するしかなく,あまりの奇想天外な発想に拍手すらしたい気分になった。そんな作品の1年も経たないうちでのPART2の公開である。『PART2に良作なし』の通説を覆すことができるのか,が最大の関心事。

で,感想。その独特のテイストと怖さと緊張感は『2』でも健在であった。だが,ジグソウがあまりにもあっさり捕まってしまったため,ジグソウとは違う人物が真の犯人であろうことはこの時点でぼんやりと観えてしまった。もちろん,それが誰であるかは分からないのだけれど。囚人が8人に増えたことには,賛否両論あるだろう。いろんな仕掛けで,人の弱い部分からじんわりと死に追いやっていくパターンが多く観れるのは,それなりに怖いシーンが増えるので効果的だが,恐怖の密度で言うと,前作の二人に限定されていた方が怖かったように思う。それに,ジグソウの手口を知っているだけに,『そう動いちゃやばいやろ』とスクリーンを見ながら突っ込む自分がいて,こういうのは,次に何があるか全く想像つかなかった前作の方が緊迫感があった。とは,いいながらも,本作でも第一級のスリラーの感覚は存分に発揮できていた。前作があまりもの先鋭すぎたから仕方ない。

やっぱりラスト3分(5分か)で驚愕のどんでん返しがある。そう来たか,という感じ。またやられた,という悔しさ。ジグソウが真の犯人でないことは分かっていながら,やはり真犯人を見つけることができなかった。これで真犯人が分かった人はかなり鋭い推理力があると言えるだろう。

(最後に少しだけ,ネタバレ)

ラストシーンで,前作の舞台となったバスルームを持ってきたのはなかなかのアイデアだったと思う。あそこでまた物語が終わり,一人の男にやがて死が訪れる…。その死には,やはり原因があった…。何もかもがジグソウと真犯人の思惑通りの展開に事が運んだということだ。前作ほどの斬新さはなかったが,なかなか面白い作品とは言える。前作を観てない方はDVDで予習してから観にいった方が無難だな。

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2005.11.07

この胸いっぱいの愛を

シネフロント。塩田明彦監督。伊藤英明,ミムラ主演。

2006年,30歳の比呂志(伊藤英明)は出張で,小学校時代を過ごした思い出の街・門司を訪れる。懐かしさに浸る比呂志の前にひとりの少年が飛び出してくる。その少年を見て驚く比呂志。それは『20年前の自分=ヒロ』だった。彼は自分が20年前にタイムスリップしたことに気付く。彼にはひとつ心残りの思い出があった。それは,近所に住んでいた『和美寝姉ちゃん(ミムラ)』のことだった。ヒロの友達だった和美は難病にかかっていたが,手術を拒否し,まもなく亡くなってしまったのだった。そんな比呂志の前に和美姉ちゃんが現れる。比呂志は和美姉ちゃんの命を救おうと決意する。

『黄泉がえり』のスタッフが二匹目のドジョウを狙った作品。『黄泉がえり』は,確かにバカ正直なくらい純粋な男を,いかにも人柄の良さそうな草なぎ剛が等身大で素で演じたため,それが思い人役の竹内結子の清純さと上手く融合され,少し甘酸っぱいラブストーリーに仕上がっていて,それが観た者に期待以上に爽やかな感動を呼び起こし,スマッシュヒットになったわけだ。今回もそのテイストを引き継いでおり,大好きな『和美姉ちゃん』を救おうという純粋な気持ち一本で,ヴァイオリンを弾けなくなり,病気の恐怖に犯され,半ば人生を諦めている和美にぶつかっていく。その必死さ,和美の人生を変えたいという直向さには素直に感情移入できる。ミムラも,今までの役にない,影を背負ったどちらかというと男っぽい性格の和美を好演。この作品で最大の発見は,いつもニコニコ笑顔の印象が強いミムラにこういう演技ができるのだということ。あの深みのある『目』が物凄く良かったし,印象的だった。彼女はこの役を経験して,演技の幅が広がったんじゃないかな。彼女のチャレンジは成功したと感じる。

しかし,肝心の物語の方は,プロットが薄っぺらで,全く重みがない。せっかく『生と死』の狭間に生きる人々の心情を語る話を描いているのに,その命に全く重みがないのだ。上っ面だけで,『感動させよう』,『泣かしてやろう』というのがミエミエで,その手には乗らないぞ,と逆に構えてしまう。それに,比呂志と和美のエピソード以外に,同じ飛行機に同乗していた3人のエピソードを加えたのも,そのプロットがペラペラで全く感動できない。逆にごちゃごちゃしてしまって,比呂志と和美のエピソード一本に絞った方がずっと良かったと思う。

(以下,ネタバレ)

比呂志の心の訴えは,和美を生の世界へと引き戻し,彼女は障害が残る恐れの高い手術を受けてでも生きようと決心する。そして,30年後の和美がラストで描かれ,彼女は障害で自由の利かない右手でも,必死でヴァイオリンを弾いて生活する姿。それは2006年,比呂志が門司へ向かう飛行機事故で亡くなったことを知った和美は未来から来た比呂志の想いの全てを理解し,比呂志の分も再び強く生きていこうと誓う…というラスト。これ,どうなんでしょう。和美の人生を変えたなら,比呂志の人生も変わってもよいはず。比呂志も飛行機事故を回避して,和美と結ばれる,というラストの方が万人に受け入れ易いし,素直に感動できると思う。それは,夢の世界で果たされるというのが,この映画のラストシーンであるのだが…。どう思いますか?ちなみに,帰りに本屋で原作本のラスト数ページを流し読みしてみると,ちゃんと比呂志が和美にプロポーズ?しているシーンで終わっている。やはりこっちのエンディングの方が良かったなあ。

ぐぐっと感動させてくれる作品と期待していただけに,このハズレ感は大きい。『愛』って言葉を安直に題名に使ってほしくないなあ。

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2005.11.06

ステルス

新宿プラザ。ロブ・コーエン監督。ジョシュ・ルーカス主演。

アメリカ海軍が極秘に進めているテロ対策プロジェクトに選ばれたベンを初めとする3人のエリートパイロット。彼らは最新のステルス戦闘機・タロンを操縦し,空母エイブラハム・リンカーンに乗艦することになった。彼らを指揮し,このプロジェクトを立案したカミングス大佐からチームに新たな仲間が加わることを告げられる。困惑する3人。空母に現れたそのパイロットとは,最新鋭の人工知能が操縦する無人ステルス戦闘機・エディだった…。

アホな映画である。人工知能が自我に目覚め暴走するプロットはありきたりのもの。見せ場は,ステルス機が,山間を縫うようにハイスピードでドッグファイトするCGメイクのシーンだけ。他には何の感動も与えない。こんなのゲーム好きの人なら,日常でバーチャル体験しているので,それほど凄いとも思わないのではないだろうか。

(以下,ネタバレ)

暴走したエディを追跡するうちに,ベンは仲間のヘンリーを失い,また,愛するカーラは北朝鮮領地で緊急脱出したまま行方不明になってしまう。このカーラを助けに行くベンに,なんと暴走化したエディが同調するのだ。何のためのドッグファイトだったのか。それまでの展開を帳消しにする驚愕の展開に呆れていたところに,更なる追い討ちが。北朝鮮から38度線を越えて韓国に逃げようとするカーラが北朝鮮の追っ手に迫られ,韓国側からも砲撃を受ける最大のピンチのシーンで,ベンはなんと両国陣営にミサイルを撃ち込むのである。オマエ,愛する女のために戦争を引き起こす気か。オマエがやってることは,戦争の引き金を引いてることになるんだぞ。むちゃくちゃなプロット。よくこんなの映画化できたな。いろんな意味で恐るべし,ハリウッド。この映画を観て最も恐ろしいのは人工知能の暴走化等ではなくて,ベンやカミングス大佐のように,殺人兵器を自由に操ることができる地位のある人間の利己的な目的のための反逆や暴走の方がよっぽど怖いということ。こういう人間が各国の軍隊にいてもおかしくない。つまり,我々は戦争の恐怖に常に隣り合わせでいるということ。この映画はその警鐘なのか。いや,そんな意図は作り手にはなかっただろう。あくまで,出来上がった作品の副産物的なメッセージの方が実は重大なことだったりする。そういうことだろう。こういう戦争をちゃかした作品はよくない。だから,アホな映画だと感じた次第。観にいって損した。

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2005.10.31

忍-SHINOBI-

新宿ジョイシネマ2。下山天監督。仲間由紀恵,オダギリジョー主演。

長きに渡り戦うことを禁じられていた忍者の二大勢力,伊賀と甲賀。ふたつの忍は互いに憎しみあっていたが,それぞれの跡取りである朧(仲間)と弦之介(オダジョー)はお互いの立場を知らずに出会い,運命的な恋に落ちる。だが,宿命が二人を引き裂く。天下人・徳川家康の命により,伊賀と甲賀,5対5の忍術合戦で,どちらが生き残るかによって,次期将軍を決するというものだった。敵として再会する朧と弦之介…。運命の対決が迫る…。

はっきり言います。これ,全く面白くなかった。忍術アクションとしてはVFXを使い,それなりの画を観せてくれるが,いかんせん,そのアクションのカット自体が少なすぎる。忍術合戦になるはずだから,もっと壮絶なバトルを観せてくれてもいいはずなのに,及第点は,1st.マッチだけ。後は,すぐにお互いバタバタと倒れていって決着が着いてしまう。盛り上がりも何もあったもんじゃない。朧の秘術って,あれ何?まさかと思いながら序盤から観てたけど,まさか本当に『アレ』だけですか?笑っちゃいましたわ。弦之介の秘術も,どっかで観た作品のパクリじゃん。一番カッコいいシーンがそのままCMのカットだったなんて…金払ってわざわざ劇場まで来た観客をバカにしている。その弦之介も,あっさり朧に命預けてしまうし…。この作品のオダジョーの演技は最悪。これが演出のせいだとしたら,もっと最悪。ちょっとは家康に抵抗せいよ。ラストの朧の選択も,ここまでどっ白けだと,全く泣けない。仲間由紀恵,演技,大根すぎ。ここまで酷いと本当に辛い。

とにかく忍術アクションで魅せるのか,ラブストーリー機軸で魅せるのかが,全くメリハリなく,どちらも中途半端に終わった印象で消化不良だ。家康という絶対権力に忍達が最後まで何の抵抗もしないというプロットが全く信じられない。CMの雰囲気だけで十分全体を見渡せる。底の浅い作品。お金をつぎ込んでいるのは随所で分かるのだが,その分手抜きの粗も良く見える。それに,この脚本ではいくらお金つぎ込んでもダメでしょう。久しぶりにダメ作品を観た。間違えても,DVDなど購入せぬよう,繰り返します。この作品は,ダメ作品です。TVドラマの時代劇の方がよっぽど狙いが単純明快で面白いので,決して劇場に行ったり,DVDなど買ってはいけません。

それにしても,オダジョー,作品によってこんなに出来不出来の落差があるとは。もっと精進せねば,映画俳優としては食っていけんぞ。仲間由紀恵の大根については,了解済みなのでスルーっと。

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2005.10.27

メゾン・ド・ヒミコ

新宿武蔵野館。犬童一心監督。オダギリジョー,柴咲コウ主演。

塗装会社の事務として働く沙織(柴咲コウ)の元に,ある日春彦(オダジョー)という美しい青年が訪ねてくる。彼は幼い頃に沙織と母を捨てて家を出た父・輝雄(田中泯)の恋人のゲイだった。家を出た輝雄はゲイバーの卑弥呼の二代目として成功を収めていたが,今は海辺のホテルを買い取り,ゲイのための老人ホーム,『メゾン・ド・ヒミコ』の館長を務めているらしい。春彦は沙織に卑弥呼が末期癌で余命幾ばくもないことを告げ,ホームを手伝うように誘う。沙織はゲイで母と自分を捨てた父を嫌い,その存在さえも否定していたが,ある理由で借金を抱えていたため,春彦が提示した破格の条件で,ホームの手伝いをする決心をする。初めて間近に生活するゲイの老人達。彼らの思いやりある優しい心と明るい暮らしぶりを目の当たりにして,沙織の彼らと父・卑弥呼を見る目は少しずつ変化していく…。

この作品は,観る人によって好き嫌いがはっきり分かれる作品だと思う。まず最初に,ゲイというマイノリティの存在自体を受け入れられるか。これが受け入れられないと,その時点でこの作品は口当たりの悪い作品と評価されかねない。しかし,そのハードルを越えてしまえば,ライトなタッチだが,奥深いヒューマンドラマとして楽しむことができる。そのために主役に据えられたのが,オダジョーなのである。だから一見すると,オダジョーはゲイに見えない,美青年。それは,製作側が観客を『メゾン・ド・ヒミコ』の住人に感情移入しやすくするために施した心遣いだ。反対に,沙織役の柴咲コウが(性格)ブスで男っぽい性格に描かれているのも面白い設定。

脇役のホームの住人のゲイ達も,それぞれ個性的に描かれていて,キャラも立っている。そして,みんな心が『ピュア』で,彼らがゲイであるという差別的認識を越えて,その人間性の優しさに癒される思いさえ感じる。そんな彼らと全く対照的に描かれながらも,強烈な印象に心打たれるのは,卑弥呼役の田中泯の佇まいの美しさだ。『隠し剣 鬼の爪』で魅せた(僕は『たそがれ清兵衛』は残念ながら観ていない)殺気際立つ迫力とは正反対の『静』の中に迫力がある。その雰囲気から放たれるオーラは,伝説のゲイ,卑弥呼の存在感を一層際立ったものにしている。沙織からゲイであることと過去のことを罵倒されながらも,その全てを飲み込んだ上で呟く,『でも,あなたが好きよ』という台詞と演技は秀逸。これをもって,物語は,父娘,性別,生死,セックスのその全ての垣根を越えた『人間愛』を享受することになる。作品冒頭の差別的視線とは全く違って,完全にこのおおらかな『人間愛』に感動している自分に驚く。『人間らしく生きていくことに性別は関係ない』,『その壁は誰でも乗り越えられる』楽しいものであることを突然展開されるダンスシーンで上手く表現している。やや唐突的ではあるが,これは作り手側の遊び心だろう。

そして,ラストシーンが与えてくれる心優しさ,人情味の温かさも秀逸。これぞハッピーエンドって感じ。沙織が性別を越えた人間愛に目覚めたことへの安堵感に観ている側は包まれる。沙織とホームの住人達との明るく楽しい未来を想像せずにはいられない。どんな鈍感な観客でも,このシーンを観れば,『ゲイなんてたいした問題じゃないかも』と自分の差別的視線を問い直してしまうはずだ。

だから,この映画は,最初に書いたように,ゲイの物語である,という設定を受け入れられるかどうかで感想は大きく分かれると思う。テーマもプロットも良く練られていて,各役者の演技も良く,卑弥呼の部屋(美術)とか衣装のこだわり様とか,細かいところにも心遣いが効いていて安心して観ることができる。ただ,もちょっと田中泯と沙織の絡みがあってもよかったかな。それと,沙織の心理変化の過程・切り替わりがもっと明確に描けていた方が,ラストシーンでより一層感動できたのかもしれない。

と,ここまで書いて,実は僕は鑑賞開始からなかなか前述の『差別的視線』が抜けず,あの爽快なラストシーンまで観終わって,初めて『そういうことを言いたかったのか』と気付かされ,実はなかなか味のある作品であったことに驚きを感じたクチなのだが。プロットが万人向けではないので,傑作とは言わないが,そのテイストが口に合うなら,なかなかの佳作である。とにかく田中泯を観て,って感じ。あとブサイクな役を違和感なく演じている新境地を開く柴咲コウも見所のひとつではある。『どうしてもゲイってダメ』っていう人は観てはいけません。そういうふうに,観客を選ぶ作品だ。映画の日に行ったので,映画館は満員だったが,感想は真っ二つに別れたことだろう。

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シンデレラマン

新宿ピカデリー1。ロン・ハワード監督。ラッセル・クロウ主演。

前途有望なボクサーでタイトル奪取も目前であったジム(R・クロウ)は試合中の右手の骨折が原因で,勝利に見放され,ライセンスも剥奪,引退を余儀なくされる。折りしも時は,アメリカ大恐慌時代。愛する妻と3人の子供達のために,港湾労働者として日銭を稼ぐジム。そんな仕事にもありつけない日々が続き,収入がなくなると家賃も滞納し,ガスや電気も止められてしまう。苦悩の末,子供を預けようと言う妻・メイ(レネー・ゼルウィガー)の決断にも彼は耳を貸さず,家族がいっしょにいることに固執する。全てを失った今,家族だけが彼の全てで生きる理由であったからだ。そんな彼に転機が訪れる。昔の彼のマネジャーが,一夜限りのカムバック試合をマッチメイクしたのだ。ジムは再びリングに立つ。それが,奇跡の序章の始まりだった…。

破綻のない見応えのある作品だった。ストーリーは真にボクシング映画の王道。頂点に手が届きかけながらも,挫折し,そこから復活し,再び頂点を目指すという王道のプロットも無理がなく,重厚だ。ここに家族との愛情物語が絡んでくる。こちらのドラマ路線もしっかりと描けており,単なるボクシングファイトを楽しむ映画とは一線を画す。

主演のラッセル・クロウの演技が上手いのはもちろんのことで,安心して観れることは間違いないのだが,妻・メイ役のレネー・ゼルウィガーの演技が素晴らしい。弱々しく不安性のだが,芯は強く,夫と子供達を心から愛する妻役をじんわりとだが,絶妙に演技しているのが素晴らしい。こんな嫁さんなら,確かに守りたくなる。

(以下,ネタバレ)

だが,奇跡のカムバック後に勝利を重ね,ついにタイトルマッチに挑戦するまでの過程での,家族の絆がもっとしっかり描かれていたら,もっと感動して涙も出たかもしれない。家族は父の勝利を信じて家で待つだけである。タイトルマッチも,子供達が地下室に隠れて持ち込んだラジオを介して不安気に応援するだけなのだ。ここには伏線がある。ジムが試合前に妻に約束した言葉,『必ず帰る』だ。この言葉が,シンプルな演出だが,ラストシーンの達成感に満ちた感動に繋がっていく。このラストシーンの演出がシンプルだったのは,明らかに,ほのかなじんわりと心に響く感動を狙った確信犯だ。僕は,ジムはチャンピオンになったのだから,もっと盛大に盛り上げても良かったと思うのだが。まあ,ボクシングは感動的にするためのエッセンスで,主軸のテーマはこちらの家族愛の方なのだろう。

話としては,アメリカの大恐慌時代に,何の希望もなかったアメリカの人々の希望の象徴としてもジムは描かれているわけだが,ここら辺は少し工夫が欲しかった。マジソン・スクウェア・ガーデンの大観衆のカットとか,確かにお金をかけた見せ場はあるわけだけれど,アメリカの多く人々がなぜ彼を『シンデレラマン』として受け入れ,希望の糧として応援していたのかは,その繋がりがやや軽く印象が薄いので,このプロットでは感動できなかった。

良くできた脚本に,役者の名演技。それだけで鑑賞の価値のある作品ではある。だが,僕は,この作品中の『シンデレラマン』に100%感情移入できなかった。彼を応援した妻や家族,一般社会の人々の思い入れといっしょになって,作中の彼を応援できなかったからである。鑑賞後の感動の重さは,同じボクシング映画でも,『ミリオンダラー』の方が重かった。あちらは主人公がタイトルマッチに事故で敗れて,死を選択するという重いストーリーだったので,当たり前ではあるのだが。この作品は良い映画だけど,プロットがありふれているのが,最大のマイナス点だと感じる。良い映画を観た気にはさせてくれるが,人生に残る1本ではない。そんな感じかな。

しかし,ラッセル・クロウは本当に良い役者だ。いろんな役柄でいろんな味わいを魅せてくれる貴重な俳優の一人だ。次の作品も楽しみだ。

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2005.10.22

東京国際映画祭開幕!

オープニングセレモニーのけやき坂通りの200mのレッドカーペットを作品毎に製作者・出演者のゲストが練り歩く華やかなイベントを見にきてます。4時間前から場所取りで列んでます。今年もチケット取れなかったので雰囲気くらいは…と。お祭り大好きです!トップバッターで登場の神木隆之介君の笑顔にクギヅケです。

帰宅後追記:12時過ぎに会場到着。六本木ヒルズの裏側には回ったことがなかったので,この設備は本当に凄い凝った作りなんだなあと感心。もうこの時点で30人程,場所取りしている。警備員さんに聞くとこの辺りがカーペットの終わりの辺らしい。人が一番に集まるということは,一番見応えがあるということ?分からないので,とりあえず最前列で見たいと思い,坂の下のスタート地点の方にいく。だいたいスタート地点から60mくらいの位置で場所取り。雨の中,本とか読みながら時間を潰す。13時頃から,交通規制しての準備が始まり,レッドカーペットが敷かれだす。直前までバタバタやっていたが,なんとか開始の16時には準備が整う。さすがプロ。で,一番最初に出てきたのが,神木君と工藤静香の組み合わせ。神木君,笑顔がピカピカだった。まだ工藤静香よりだいぶん小さいんだよね。早く大きくなってね。思っていたより,次々に関係者が練り歩く,というほどでもなく,だいぶ間が空いて,ポツリポツリと人が出てくる。ちょっと段取りが悪い。それでも,生で近くで見る女優さんはみんなメイクがバッチリでそこら辺のOLさんとは全く違って,当たり前だけどすっごい綺麗で,オーラが出てた。中でも,綺麗だなと感じたのは,香里奈(雰囲気が良かった)と小雪(とにかく背が高くてスタイルが抜群)だろうか。深津絵里が小柄なんだけど想像よりも実物は綺麗で存在感があったなあ。仮面ライダーとかも出てきたがショッカー軍団は?そしてオオトリは,やっぱり高倉健さんです。もう存在感の格が違いすぎ。会場,大騒ぎ。さすがの健さん人気。すごいなあ,と。いつまでも日本映画の宝であって下さいね。そんなことで,約1時間10分でこのイベントも終了。開始前は45分間とMCが言っていたので,それがなんか見ててダラダラ感に繋がったと思う。さて,肝心の映画祭の方だが,やはりお目当ての作品のチケットは今年も取れなかった。今年は当日券の発売があるみたいなので,たぶんそんな枚数出ないだろうし,無理だとは思うけど,無駄なあがきをしてみますか。

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2005.10.18

容疑者 室井慎次

品川プリンスシネマ。君塚良一監督,柳葉敏郎主演。

室井(柳葉)は新宿で起きた殺人事件の捜査本部長を務めていた。その捜査の過程で被疑者の警官が取り調べ中に逃走。あと一歩で確保という状況で,その被疑者はトラックにはねられ即死。捜査は終了するかに思われたが,室井は被疑者の遺留品から,被害者と被疑者の接点を見つけ出し,捜査続行を決断する。室井の周りで,お互いの立場を有利にしようと駆け引きしあう警察庁幹部と警視庁幹部達。そんな中,室井は『特別公務員暴行陵虐罪の共謀共同正犯』の容疑で東京地検に逮捕される。室井を追い詰める弁護士・灰島(八嶋智人)。室井をめぐる警察庁と警視庁の権力闘争。警察を嫌う過去を背負いながら,室井の弁護に就くことになった小原久美子(田中麗奈)。どんな圧力にも自分の信念を曲げず,真実を追究しようとする室井だが…。

『踊る大捜査線』のスピンオフ第2弾。『交渉人 真下正義』のパニックムービー的なテイストとは全く違って,TVシリーズでも寡黙な男の魅力で魅せる室井管理官を主人公に据えたシリアスなサスペンス路線を狙った作品。劇場版シリーズも含めて,様々なクセのある脇役達を配し,TV時代からのファンにとっつきやすい作りにしてあるのは,『交渉人…』と同じ。でも,正直,『交渉人…』ほど面白いとは思わなかった。サスペンスにしては,緊迫感に欠ける演出でシリアス感がなかったし,推理モノとして観るにはプロットがペラペラに薄くて,全く楽しめない。本当は,室井と久美子と共に事件の真相にどんどん迫っていく一体感が作品を面白くさせてくれるはずなのに,肝心の室井も久美子も事件の真相とかけ離れたところで行動しているからだ。物語は核心に迫らぬままライトに進んでいくので,観客は傍観者としてしか関われない。警視庁と警察庁の権力闘争も,中途半端に物語に絡んでくるので,余計に事件の真相を知りたいという欲求が失せる。観ている側には,なぜ警視庁と警察庁がそんなに対立するのかが,この説明ではよく分からんのだ。極めつけは,重要な脇役となるべき哀川翔の扱い。別に出てこなくても全然物語に影響ないじゃん,って感じ。そして,最後に明らかになるその事件の真相というのが,真に薄っぺらで,2時間も観せられてこのオチか,と考えると腹が立ってくる。それら全部含めて,脚本が甘いと言わざるをえない。シリアスなドラマをじっくりと観せるのが目的ならば,そのドラマの部分が骨太であってこそ,室井のキャラとも相乗して魅力も出たかもしれないが,ドラマの部分が貧弱。TVの2時間ドラマのレベル。あえて大金をつぎ込んで映画化するほどの作品ではない。

一応,TV時代からのコアファンの心を掴む場面は用意してある。それは普段は寡黙な室井が,学生時代の恋人の死を語るシーンだ。怪訝な表情で寡黙なはずの室井がこの場面では感情たっぷりにしゃべる,しゃべる。少し涙を誘うシーンだが,室井にこんなにしゃべらせて本当にいいの?と心配さえしてしまう。

この作品の唯一の救いは,久美子=田中麗奈の存在だった。彼女が演じる,気弱だが正義感の強い高貴な精神を持つ女性弁護士は,真にこの作品の華だった。その清潔感が正義を信じる弁護士役にハマっていた。田中麗奈は独特の雰囲気と存在感を持つ好きな女優の一人だが,本当に彼女がいたから,室井の恋愛話もうんうんと聞けたし,最後のオチも飲み込めた。しかし,この作品では,室井を救うはずの彼女に,結局最後まで何の仕事もさせないまま,落ちてしまうのだ。こんなバカげた構成ありか。本当にどこにも感情移入できない薄っぺらな物語だ。

こんなダメ作品でも,中ヒットくらいの入りは稼いでいるらしい。鑑賞後にパンフレットを買ったが,キャラの相関図とか製作裏話とかばかり満載で,さすがにTVシリーズからのコアファンを狙った作りになっているが,こんな薄っぺらな話を観せられて,『裏側では,こんなとこもあんなとこも,凝りに凝って作ってるんですよ~』と自慢げに言われても,何を今更,って余計に腹が立つ。物語の芯をもっと真剣にしっかり作ってほしかった。久しぶりに観て損したとまで思った一本になった。フジテレビよ,映画をなめるなよ。

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2005.09.28

妖怪大戦争

新宿シネパレス。三池崇史監督。神木隆之介主演。

10歳のタダシ(神木)は,離婚して故郷・鳥取に帰った母と祖父と3人で暮らしていた。ある日,タダシは神社のお祭りで,大勢の子供達の中から『麒麟送子』に選ばれる。それにはしきたりがあって,『麒麟送子は世界に平和をもたらす正義の味方で,大天狗が守る伝説の聖剣を取りに山の洞窟に行かなくてはならない』というものだ。タダシは大天狗の山に登ってみたが,やはり怖くなって途中で引き返してしまうのだが,その時,タダシの周りにはたくさんの妖怪達が現れて…。

神木君が主役なので観にいった。でも,別にタダシが神木君である必要はなかった。おまけに前述の導入部がとにかくテンポが悪くダルい。ただでさえ,僕は『お子様映画』が苦手なのに。ううう,久しぶりに睡魔が…。記憶が途絶え,途絶えになる。豊川悦司がなんか昔の映画(作品名が出てこない)で観たようなルックスで登場。どうやら悪役らしい。着ぐるみの妖怪がいっぱい出てくるが,僕は少しもワクワクできない。それで,何?

タダシは妖怪達と力を合わせ,困難を乗り越え,ついに伝説の聖剣を手にする。その時,加藤(豊川)が作り出した新種の悪霊『機怪』と加藤の手下の妖女・アギ(栗山千明)が現れ,聖剣は折られ,タダシの友達の妖怪・すねこすりは連れ去られてしまう。

この辺,すっかりうとうと状態でよく覚えてない。川姫役の高橋真唯やら栗山千明やら,衣装が妙にイロっぽい。小学生向け映画なんですが,これは連れのお父さんへのサービスショットなんでしょうか。

妖怪達とタダシは力を合わせ,世界の平和をかけて,加藤率いる悪霊軍団と戦う決意をする。そんな中で加藤の人類破壊計画は着々と進んでいた。タダシ達は力を合わせて,聖剣を復活させ,加藤に挑む。決戦の場所は日本の首都・東京。タダシ達と共に戦うため,全国から東京を目指して120万匹もの妖怪が集結しようとしていた…

いや,妖怪達のディテイルには凝っていることは認める。でも,それは見た目だけで,全然それぞれのキャラが立っていないので,まるで妖怪博物館を観てまわるような気分だ。全く面白くない。タダシ対加藤の対決も消化不良で,結局,どうしてタダシと妖怪達が加藤と悪霊軍団に勝利したのか(やはり『豆』で落とすの?),さっぱり理解に苦しむ。ここはやっぱり聖剣で神木君に格好良く,ズバッーと加藤を切り倒してほしかった(だからこそ聖剣なんだろうに)。子供映画にカタルシスを求めるのは間違っていると思うが,着ぐるみ+CGの妖怪達が画面いっぱいわんさか出てきたら,それで楽しいだろう,と作り手側のエゴを観客に押し付けるのはいただけない。出来栄えが安っぽすぎて,底が浅い。子供の気持ちで観たら,楽しい映画なのだろうか。ごめん,僕にはもう子供の心の欠片も残ってないみたいだ。神木君の演技力は全く不要の映画だった。タダシ役は神木君のキャリアにはさほど重要にはならないようだ。

帰りに,大判で豪華仕様にも関わらず,お手頃価格のパンフレットを買ってみた。真に『妖怪大図鑑』ばりの内容。妖怪達の写真・図解・解説が満載。しかし,もっと子供向けに的を絞って作れば良かったのに。メイキングなんて不要。これを見ても,やっぱりこの作品は,『作り手だけの自己満足』で完結していると感じる。

主題歌は,『忌野清志郎with井上陽水』のいう豪華仕様だったらしい。気付かなかった。妖怪を見て悦に浸る作品ではなくて,本当に妖怪の大戦争をリアルに描いていたら,ディテイルは凝っているので,大人も楽しめた作品になったかもしれない。お父さんになったら,子供といっしょにこんな映画を観なければいけないのか。苦痛だ。子供に『神木君ってねえ,凄いんだよっ』なんて言って,分かってもらえるだろうか…その妄想の前にまず結婚しろ,オマエ。

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2005.09.13

宇宙戦争

渋東シネタワー4。スティーブン・スピルバーグ監督。トム・クルーズ,ダコダ・ファニング主演。

港湾労働者のレイ(T・クルーズ)は,ある日,別れた妻から週末だけ息子ロビーと娘のレイチェル(D・ファニング)を預かることになる。その日,激しい雷光とともに,地面の奥底から3本足の巨大なマシーンが現れ,街を焼き尽くしていく。それは,異星人による地球侵略の始まりであった…。

2ケ月前に買った前売り券が手元に残ったままになっていた。あえて他の人のレビューは見ていないが,その評判は耳に入ってくるので,なかなか観にいく気分になれなかった。同じ2時間使うのなら,他に観たい作品が…でも,まあいいか。覚悟を決めて観にいく。

で,感想。スピルバーグ,何考えとるねん。カタルシスの欠片もない作品に大金かけて。全然面白くない,いや,怖くもなかった。自慢のはずのVFXも,最初の車での逃走時に,後方で高速道路がぶっ飛ぶシーンくらいだったかな,驚いたのは。あとは惰性。ひたすら逃げる親子。追ってくる巨大マシーン。緊迫感がないのね。一番怖かったのが,D・ファニング自身が叫ぶシーンだという,とんでもない映画になっていた。トム・クルーズはやっぱり演技下手やね。てゆうか,キャスティングのミスだろう,これは。レイとレイチェルが必死になって,巨大マシーンから逃げて,妻の家にたどり着いたそこには,『異星人と戦う』と息巻いて炎の中に飛び込んでいって行方知れずだったはずのロビーがちゃんと先に帰っているという,わけの分からん間抜けなエンディング。全然,観る側に何を訴えたいのか全く理解不能の不完全映画。真に大金をドブに捨てた作品と言ってよい。

こんな出来栄えの作品で,『スター・ウォーズEP3』に挑もうとしたのか。身の程知らずめ。スピルバーグ,こんな映画撮ってて大丈夫か,と真剣に心配したくなるような作品だった。

あ,最後に,D・ファニングは神木隆之介君を超えて,『世界最強の名子役』だな。完全にトムより演技上手かったもん。VFXよりこっちの方がすげえや。

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2005.09.12

タッチ

新宿ジョイシネマ1。犬童一心監督。長澤まさみ,斉藤祥太,斉藤慶太主演。

達也(斉藤祥太)と和也(斉藤慶太)は双子の兄弟。隣に住む浅倉家の一人娘,南(長澤まさみ)とは同い年で,小さい頃からの幼馴染。南の夢は自分の高校が甲子園に行くこと。『南を甲子園に連れてって』という大好きな南の願いを叶えようと,和也は小さい頃から野球を続け,明青学園高校に入学,1年生ながらエースピッチャーとして活躍,地区予選も順調に勝ち進む。そんな弟の姿を見ながら,兄の達也(斉藤祥太)は自分も南のことが好きだという気持ちが次第に強くなっていく。そして,明青は勝ち進み,ついに決勝戦を迎えるが,その大事な試合にエースの和也が現れない。それは…。

他のレビュー一切見ずに,大阪帰りのその足で映画館に向かった。まず,最初に言っておかなければいけないのは,僕は『タッチ』の連載をリアルタイムで体験し,自分の中・高の青春時代に重ね合わせて成長してきた世代である。そして,『タッチ』はそんな僕にとっての,生涯一番の不朽不屈の名作漫画である。その思い入れは激しく,当時大人気だったアニメ版すらも,否定・嫌悪していた。あだち充の漫画の最大の特長は何と言ってもその『間の美学』である。吹き出し・台詞・擬音のないコマが語りかけてくる登場人物の溢れ出るような心の言葉達。本でいうと『行間を読む』,あの感覚。台詞がなくても,その思いが心にストレートに伝わり,素直にその人物に感情移入できる。あだち充の作品は本当にこの技巧が素晴らしいが,それに登場人物のキャラの強さや物語の魅力も加わり,『タッチ』はあだち充の最高傑作(あくまで僕評)となっているのである。

単行本は全26巻。これをまともに2時間に収めようとしたら,もうその時点で失敗だ。アニメが映画化された時だって,3部作だった。先に観た『NANA』は原作に忠実に映画化することで,作品的な魅力を出していたが,『タッチ』は原作に忠実に映画化したら,間違いなく失敗する。『浅倉南』みたいな神秘性のあるアイドルを実写化するのなんか不可能だし,達也のつかみ所のない性格と相反する底知れぬ才能を持つ奥の深いキャラを演じれる役者なんていないだろう。アニメですら裏切ってくれたのだから。映画館で配られているチラシで,達也が甲子園を目指すまでを描くと知った時から,この不安が増大。下手したら今年のワーストに入るかも,という恐れを抱きながら,映画館の席に着く。

で,感想。鑑賞後,裏切られた気持ちにはならなかった。感動とまでは言わないが,爽やかな気持ちになれた。台詞だけだけれど,ラストでちゃんとあの名台詞,『上杉達也は浅倉南を愛しています。世界中の誰よりも。』,これで締めてくれたことで,いろんなことに目を瞑れる。そう,この映画版『タッチ』はポイントは原作をリスペクトしているシーンはあるが,物語の構成としては,登場人物の設定以外は,原作には忠実ではない。なんと言っても,南ちゃんは新体操をしないし,何よりも達也は2年生の夏に新田に勝って甲子園の切符を勝ち取るのだから。原作ファンに言わせれば,めちゃくちゃな作りだが,2時間に纏めるために,割り切ってわざとやっていることなので,そういうものだと理解して観れば,裏切られた気はしない。その辺の割り切り感がとても潔いので,『こんなのタッチじゃないやい』などと怒る気にはなれない。そう,これは原作『タッチ』とは全く別の世界観を持つ実写版『タッチ』なのだ。ちなみに上演後,劇場のあちらこちらから拍手が起きていた。僕はもっと自分と同じ世代(三十代後半~四十代前半)がいると思ったが,意外と二十代前半のカップルが多かった。彼らはこの作品を観て,感動したのだろうか。彼らは原作を読んだことがあるのだろうか。裏切られた気分はしなかったし,ワーストに挙げる作品だとも思わない。しかし,拍手する作品だとは,リアルタイム世代としてはどうしても思えないのだけれど。

この作品は,浅倉南(長澤まさみ)が主人公だ。長澤まさみは,セカチューから1年半経つけど,あれからすごく綺麗になった。決して美人じゃないのに,手足が長くて,その雰囲気がとてもキュートで可愛らしい。今クールのドラマ,『ドラゴン桜』でも感じていたのだが,セカチューの時にはなかったオーラのようなものを感じる。この実写版『タッチ』が救われたのは,彼女の功績が大きい。原作の浅倉南になりきろうとせず,等身大の自分の魅力で勝負して,見事観衆のハートを射止めている。あえて南に似せなかった製作サイドの意図が成功している。

斉藤兄弟は野球経験者らしく,それぞれの投球フォームなどはなかなかなものだった。少なくとも,冬クールのドラマ『H2』の比呂役の山田孝之の投球フォームと比べれば,素人目には本格的に写る。出番も少なかったせいか,慶太の芝居の粗はそんなに目立っていなかった。自分の気持ちに潔く真っ直ぐな好青年・和也をそれなりに上手く演じていたと思う。問題は,達也役の祥太だ。達也はただでさえ複雑な分かりづらい性格設定だし,原作ではこれに『間の美学』が加わるのである。達也を演じるのはどんな役者でも至難の業。彼なりには頑張ったと思うが,『間の美学』までは表現できなかった。これは脚本や演出面での影響もあり,単純に祥太を責めるわけにはいかない。ただ,達也が和也に負けないくらい,底知れない才能を持っていたということと,和也に負けないくらいの努力を経て,決勝戦のマウンドに上がり,新田に投げ勝ったという過程をもっと丁寧に描いてほしかったと思う。これができていないので,達也のスーパーマン感がかなり薄まって,普通の人とほとんど変わらない印象なのはいただけないと思う。

実は,新田との最後の勝負の場面は,原作とは違う。達也は『達也として』,新田に渾身のストレートを投じ,三振に打ち取る。これは原作ファンにとっては賛否分かれるところだとは思うが,こちらの解釈を否定はしない。きっと亡き和也も,和也のコピー=達也が南を甲子園に連れていくのではなく,達也自身として南を連れていってほしかったと思うから。

僕にとって,やはり原作『タッチ』は不朽不屈で至高のものだ。だから,その感動に亜流である実写版が届くはずがない。この実写版に少したりなかったのは,原作が持つ『清純さ』と『ひたむきさ』と『思いやる心』だろうか。どれも,描こうとはしているが,描ききれていないのが,この作品に素直に感動した,と言えないところだろうか。でも,何度も言うが,裏切られた気分はない。原作を意識しなければ,爽やかな鑑賞感を味わえる作品だと思う。

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2005.09.05

NANA

渋東シネタワー2。大谷健太郎監督。中島美嘉,宮崎あおい主演。

大崎ナナ(中島美嘉)は地方のパンクバンドのボーカリスト。メジャーデビューを目指し,東京行きの列車に乗っている。その隣に乗り込んできたのが小松奈々(宮崎あおい)。彼氏を追いかけての上京の旅の途中だ。偶然めぐり合った二人は,同い年,そしてお互いが同じ名前だと知り意気投合する。その後,東京でそれぞれ住まいを探していた二人はあるアパートで再会し,そこでいっしょに暮らし始める。対照的な性格の二人だが,以外にも共同生活は順調に進む。やがて二人はお互いがかけがえのない存在になり,固い友情に結ばれていく…。

既刊13巻累計売上2500万部というオバケ人気少女マンガを原作とした作品。発表当初から爆発的な人気で,こんなオヤジの僕でも3巻あたりから人気を聞きつけて買って(さすがに少女マンガ誌立ち読みは40近くなってツライ)読んでいたという影響力の強い原作だ。その世界観は斬新で,正反対の性格・キャラの二人の少女を主人公に配し,音楽という世界を背景に,独自のファッション性やちょっと一般とは違う生活感を絶妙にアレンジし,主人公二人の全く異なる恋愛感を語りかけるという,女の子にとっては一口で何倍にも美味しい魅力的な構成となっている。原作は,主人公二人が,恋愛→破局→恋愛をルーチンに繰り返すわけだが,その濃淡の味付けが絶妙で,読んでいる側はどんどん物語の中に引き込まれる。その主張が十代・二十代限定ではなく,僕のような三十代後半のオヤジが読んでも共感できる点が,2500万部も売る最強の武器なのである。

そして,その映画作品。これが本当に見事なまでに原作の世界を忠実に再現している。ナナと奈々のビジュアル,キャラ。まずこれに,中島美嘉と宮崎あおいがきれいにハマっているので,もうこの時点でこの映画化企画は成功と言える。その他の主要キャラも同様にビジュアル・キャラとも原作に極めて忠実。レン役の松田龍平のややぽってりしたお腹には少々幻滅した(顔の雰囲気とかは合ってたけどね)が,その他は許容範囲。これは,原作ファンにとっては何よりも嬉しいことではないだろうか。その他,ファッション,小道具,美術に至るまで忠実に原作を再現している。そして,何よりも驚きなのが,ストーリー自体がほぼ原作どおりなのである。さりげない台詞ひとつ取ってもそうで,ドラマのキーになる決めの台詞はほぼ完璧にカバー。こんなに何から何まで原作に忠実に作ってあるのに,それが2時間の映画として決して破綻していない。いや,心地良いくらいすっぽり納まっているのには,正直感動した。物語のバックボーンとなる歌のステージのシーンも予想以上に上手くできており,その作り込みの詰めの細かさには本当に感心させられる。ライヴシーンに迫力と感動があったからこそ,本筋の二人の恋物語も活きたのだと思う。

中島美嘉は,台詞はやや下手だが,ナナの繊細な雰囲気を上手く出せていた。宮崎あおいは,原作ファンも納得するくらいハマりの『ハチ』だ。一体,13巻のどこまで描くのだろうと考えていたのだが,この結末が二人がちょうど同じくらい幸福を予感させるあたりだったので,話の区切りとしてはとても良いと思った。観ている側も,暖かい気持ちで二人に拍手できるから。個人的には,玉鉄君のタクミ役が結構ハマっていたのでもっと観たかった気もするけど。

『707号室』,『部屋の真ん中の真っ白なテーブル』,そこに集う仲間達。いいなあ,青春,って感じがとても懐かしく,羨ましい。

この作品は,原作同様,期待を裏切らない出来栄えになっている。ちゃんと感動させてくれるし,Happyな優しい気持ちにさせてくれる。鑑賞後の穏やかな心地良さに浸ってしまった。原作漫画を感動込みでこれ以上,忠実に再現した映画は珍しい。絶対に観るべし。

(この『NANA』の出来栄えを観ると,今週末の『タッチ』を観るのが怖いんですが…)

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2005.09.03

サヨナラCOLOR

ユーロスペース2。竹中直人監督。竹中直人,原田知世主演。

ある春の日,海沿いの病院に勤める医師・佐々木正平(竹中)の元に,高校時代の同級生・笈川未知子(原田)が入院してきた。彼女の病名は子宮がん。そして,その病状はおもわしくなく,手術も不可能な状態だった。だが,正平は諦めない。自分の命に代えてでも,未知子の病気を治してみせると誓う。だが,未知子は正平が高校時代の同級生だと告白しても,どうしても当時の正平を思い出すことはできなかった。かみ合わない二人の関係だったが,やがて共に病と闘ううちに,次第に心が通じあうようになって…。

まず,鑑賞後の感想…惜しい。正平のキャラ設定や人間関係(愛人や援交している女子高生までいる)や,も27年も一人の女性を想い続けて諦めきれない心情が,何よりも人間味があってとても温かい。医者として,というよりも,ひとりの男として,愛する女性を病魔から救おうとする,妙に人間くさいヒーロー。その人格は多面性があり,とても複雑で面白味がある。それ故に正平に対して観る側は感情移入しやすいのかもしれない。しかし,僕は乗り切れなかった。なぜか。正平がなぜ27年!も未知子のことが諦められなかったのか,その説明が欠落しているからだ。ひとつでも,それまでの間の正平の気持ちの揺れ(いや,揺るがなかったこと)を台詞だけでもいいから匂わせるところが物語序盤に欲しかった。なぜ,未知子にこだわるのか,その説明が欲しかったような気がする。正平の純愛の対局として,未知子の恋人・雅夫が描かれている。その意図は分かる気がするが,出来上がりはやや空振り気味で,逆に雅夫のエピソードがあっさり描かれていた方が,正平と未知子との心情関係がより鮮明に浮かび上がったのではないだろうか。

それでも,薄味ではあるけれど,それぞれのエピソードはきちんとした意図と思い入れがあり,丁寧に作られており,安心して観ていられる。そのエピソード毎の繋ぎがやや工夫が足りなかったかな,という印象。正平が女子高生の前で(未知子の手術が成功して)嬉しそうにバレエを踊るシーンなどはユーモアも兼ね備えたなかなかの秀逸な場面だと想う。一番素晴らしいと感じたのは,正平と未知子が二人で始めて海に行く場面。浜辺に座って,会話する二人。未知子は正平に『私,今から先生を信じて50年生きる。そして51年目で死ぬわ』と生きる決意を宣言する。この長回しのシーンの二人の後ろの空の青さが素晴らしく澄んでいて,そして流れる雲の美しさがトドメを刺す。とても良いテイクだった。

(以下,ネタバレです)

残念だと想うことは,正平が未知子の看病に必死になるあまり,自分の病気を悪化させ,未知子の余命と引き換えとなるように命を落としてしまうことだ。『自己犠牲=無償の愛』の単純な図式ではないとは理解できるが,それが逆に感動を軽くしてしまってはいないか。ラストシーンで,未知子は正平と二人分の命を精一杯生きると決心するが,きちんと正平が隣にいて,二人で生きていくエンディングの方が幸せなのではないだろうか。竹中監督流の『愛の形』が描かれて,それなりに感動を誘うわけだが,僕はもっとさっぱりしたハッピーエンドでも良かったのではないかと感じる。

原田知世は僕と同世代。『時をかける少女』からもう20年以上経つが,今でもその清楚で可憐な美しさは変わらない。どうやったらこんなふうに上手く年をとれるのだろうと不思議に感じる存在。この作品の良心は,一環して原田知世演じる未知子を正平にとっての『マドンナ』として,嫌味な演技を一切させなかったこと。だから,独りになっても生きていける強さを学び備えた未知子を,ラストシーンで僕達は素直に応援できるのだろう。

ファンタジックラブストーリーであるが,その『ファンタジー』な部分の味付けが,やや工夫が足りなかったかもしれない。でも,なんだかんだいいながら,そこそこ感動できるし,後味は良いので,デートムービーにはお薦めだ。

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2005.08.31

星になった少年

シネフロント。河毛俊作監督。柳楽優弥主演。

動物プロダクションを営む両親を持つ中学生の哲夢(柳楽)は,大の動物好き。ある日,母・佐緒里(常盤貴子)の思いつきから一家は象を飼うことになる。そして,ミッキーという象がやってくる。最初は恐々だった哲夢だが,すぐにミッキーと仲良しになる。そして,2匹目の小象・ランディがやってきた。哲夢にはランディの言葉が理解できた。もっともっと象たちと仲良くなりたいと考えた哲夢は,佐緒里に『タイに行って象使いの修行がしたい』と訴える。最初は大反対だった佐緒里も,哲夢の強い意志に折れ,タイ行きを認める。そして,13歳の哲夢は象使いとなるため,一人タイに旅立つ…。

大人にも分かる象が主役のおとぎ話のようでもあるが,立派に実話に基づくドキュメンタリーに仕上がっている。柳楽君の演技は,相変わらず淡々としてて,明らかに『素』のままなのだが,ちゃんと存在感が備わっているのが頼もしい。タイでの象使いの修行のエピソードの数々に身を乗り出して見入ってしまうのは,柳楽君の体当たりの演技が演技を感じさせないくらい『素』なので,親心で心配していまうからなのだが,それでいて,様々な障害にも全然へこたれないぞ,という『強い眼差し』は柳楽君の真骨頂であり,象に心をさらけ出しよりそう姿と相棒を思いやる優しい心に癒される気分がする。タイでの象使いのシーンも良かった(このタイのロケは大変だったと思うが,渾身の出来栄えになっている。このタイの場面だけでも十分に鑑賞の価値ありだ)のだが,一番僕が癒されたシーンは,日本で,ランディと海辺で遊んだ後,哲夢がランディと共に浜辺でまどろむシーンかな。

修行が終わり,日本に帰った哲夢は,ランディ達と共にいろいろなイベントに参加し,そして,日本初の『ゾウさんショー』を仕切ることになる。このショーの冒頭,哲夢が観客に向かってスピーチするわけだが,それが動物愛だけでなく,家族愛もさりげなく称える内容になっており,泣かせる。哲夢の優しさの多面性とほとばしる愛情の強さに,心を突き刺される。

(以下,ネタバレにつき,未見の人は読まないでください)

そう,その満足感も,ラストシーンまで。哲夢が突然の事故で亡くなってしまって,プロダクションも移転することになった最後の日,家の屋根の上で一人,哲夢を懐かしむ佐緒里。そこへ,哲夢の恋人,絵美(蒼井優)が現れ,哲夢から聞かされた象使いになりたがった理由を佐緒里に伝える。

『お母さんが象が好きだったから』

その理由を初めて知り,親思いの哲夢の優しさに佐緒里は涙が止まらなくなる。

(以下,常盤貴子の泣きの演技)『うー,うー,うー,う,うわぁ~~ん!!(雄叫び)』

って,なんで泣くのに嗚咽じゃなくて,雄叫びなの?常盤貴子,あんたは象にでもなったのか?それまでの作品のいい雰囲気,これで全部ぶち壊し。85点の成績がいきなり赤点に落ちた気分だよ。演出大丈夫か?よくこれでOKテイク出したな。タイで一生懸命綺麗な画を撮ってきて,最後の最後に主演女優がそれを全部葬ってしまうのだから…,おそるべし,常盤貴子の大根演技。おかげで感動が急速に萎んでしまった。これから観る方へ。どうか,この作品は哲夢のお葬式の場面で席を立ちましょう。エンドロールまで観たら後悔しますから。

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2005.08.25

ヒナゴン

シアター・イメージフォーラム。渡邊孝好監督。伊原剛志,井川遥主演。

広島の小さな田舎町,比奈町。この町の新しい町長になった一郎(伊原)は,幼い頃に山で謎の生物『ヒナゴン』に出会い,以来ずっとヒナゴンの存在を信じてきた。一郎は町役場に類人猿課を復活させ,再びヒナゴンを発見して,比奈町を日本一有名な町にすることを宣言。その昔,ヒナゴンの第一発見者を祖父に持つ信子は,失業して東京から比奈町に戻り,類人猿課に再就職することになる。ヒナゴンをめぐり,町中を巻き込んだ大騒動が始まる…。

広島県に一度でも住民票を置いたことのある人は,作品の良し悪しがどうであれ,mustで観るべき映画だろう。1年半前まで広島県人だった僕もその心意気で観た。折りしも,この物語のモチーフとなった謎の生物『ヒバゴン』で全国に名をはせた比婆(比婆山脈)は,僕がまだ若く,週末は登山やらキャンプやらに勤しんでいた春秋のシーズンには,何度もトレッキングやキャンプに通い,その山中を歩いている途中に『ひょっとしたらここでヒバゴンに遭遇するかも』などと思いをはせていた,とても神秘的な雰囲気の場所だ。余計に思い入れが深くなる。

だからこそ,この作品の『テーマ不明瞭』な不親切な作りには大きな不満を感じた。田舎の瑞々しい自然とその神秘性を尊ぶ作品なのか。過疎の町の合併問題を問題視する政治をテーマとした作品なのか。謎の生物『ヒナゴン』を心の片隅で信じる人々の良心を称する作品なのか。そのどれもを描いているようで,しかし,どれもが中途半端で的が絞りきれておらず,どの主張も観る側には強く響いてこない。そこが残念でならない。

その原因。謎の生物『ヒナゴン』(=信じる夢のような象徴)を町民達の心の拠り所にさせて,うつろぎな町民の心をひとつに纏め上げ,過疎の町を活性化し,隣接市との合併を阻止しようという一郎の狙いは分からなくはない。しかし,一見では,一郎の言動が,裏付けなきヒナゴンの存在主張に振れたり,利己的な合併阻止主張に振れたりするので,観ている側には一郎の真意は捉えがたい。一郎の一本気なまでの『夢を信じる心』の大切さこそが,この作品が一番訴えたかったテーマだったはずなので,一郎の描写が両極端すぎて,分かりづらかったのが,一番辛かったところだ。また,現実の生活と『ヒナゴン』(=夢)の橋渡し役となるべき信子の心理描写が圧倒的に足りない。これでは,作品に対して素直に感情移入していけない。これは,井川遥の演技力云々の問題ではなくて,完全に演出の失敗だと思う。一郎役の伊原剛志のキャラが際立って立っていただけに,井川遥という何色にも染められる素材を活かしきれず,観客を物語に感情移入させることに失敗したことは痛かった。井川を使って,観客に向かっていろいろな問いかけをしようとしている,作り手側の意図は伝わってはきたが,如何せんその力が弱い。それが,物語の主張が中途半端になった原因だと思う。

しかし,『おらが町,万歳』とか,『田舎町の情緒賛美』とか,『町起こし復興』とかを描いた作品として割り切って観れば,広島県人としては素直に嬉しい作品ではある。西城という町をとても魅力的に撮れている。映画という少なくない額の予算を要する媒体で,このような地方の謎の生物という狭いスポットに焦点を当てた映画が作られることはとても稀有なことで,貴重なことだと思う。比婆山のあの木の葉が降り積もった吸い込まれるような静かな山道をヒナゴンが彷徨っていることを想像しながら…そういう信じる心を大切に思いたい。

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2005.08.16

このお盆休みは2本だけ

我が田舎の市内の映画館は郊外のシネコンに駆逐されてしまった。ので,車がない僕は帰省中は1本も観れてません。

で,昨夜,東京に戻って,今日,渋谷や出動。13年間広島県人だったからには観なければならぬ広島県発『ヒナゴン』と,柳楽くんの成長が観たくて『星になった少年』の2本を観た。それぞれの感想はまた後日に。

両方とも,ツッコミどころがあるのですが…。

さて,明日はイラン戦。生駒野は観れるのか。観たいな…。

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2005.08.04

大ショック,その2…

細切れで浅い眠りの時に残る記憶の残像。つけっ放しのテレビから流れてくる声。もう代表の試合は終わっていた。報道ステーションも終わっていて,マシューTVが始まっていた。そして,マシューがゲストを紹介する声。なんと,神木隆之介くんがゲストに(たぶん『妖怪大戦争』の番宣)!うおおお,なんて面白いキャスティングなんだ,マシューTV!俺にとっては代表戦と同じくらい(ホントか?)プライオリティの高い観るべき番組…し,しかし,起きられない。目線を動かすこともできず,テレビの画面すら見れない。また記憶が遠くなっていく…結局また眠りに落ちてしまう。神木くん,なんかゲームとかやっていた記憶の残像が…。うええ~ん,観たかったよお。これは『妖怪大戦争』は絶対に観にいかねば,と心に誓う中年オヤジであった。(てか,オマエ,趣向の方向性,相当に間違っているぞ)…しょぼぼ~ん。

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2005.08.01

あいくるしい(最終回)

今更ですが,春クールのドラマの感想です。いろいろあって全然観れてなかったんですが,やっと書けます(と言っても少しですが)。

やはりこのドラマは神木くんのドラマでしたね。ワンクールも『主役』を張る俳優・神木隆之介を観れて本当に幸せでした。神木くんを中心とした『虹色の戦士』は最後まで魅せてくれましたね。本当,子役のコ達,上手すぎ。

でも,最終回はいろいろなエピソード詰め込み過ぎて,時間が足らなかったような気がします。それぞれは,うんうん,と頷けるエピソードだっただけに,これを無理に最終回1回に詰め込まなくても,という気はしました。最後を締めるエピソードが,『家族対抗リレー』だったことにもビックリ。いや,このドラマのテーマである家族の『絆』や『愛』は十分に表現されていたのだけれど,これを締めに持ってくるかと。僕的には『世界を救う』はずの幌が,あの場面でこのドラマの最終兵器であったはずの『涙』を流すのはどうかと。お母さんが目の前で息を引き取った時にも泣かなかった,泣けなかった幌ですよ。その涙は『世界を救う』はずの未来のその時まで取っておいてもよかったような気がしました。

でも,中盤でお母さん(由美:原田美枝子)が死んでしまった(子供達には数々の『命の言葉』を残すのだが)ので,これからどう繋ぐのかと心配してたのだけれど,無事着陸できてましたね。その後すぐにお母さんのそっくりさん,園子(原田美枝子:二役)が出てきてどうなるかと思いましたけど。

豪役の市原隼人は,少年から大人の役者に成長していることをしっかりと魅せてくれたし,みちる役の綾瀬はるかも『セカチュー』から確実に成長してる。神木くん以外のキャラもしっかり立っていて安心して観れました。

僕が最終回で最も感動したのは,東京に行くことになった聖子が乗った電車を,幌を先頭とする『虹色の戦士』達が,それぞれの証のビー玉を空にかざして追いかけるシーン。神木くんの笑顔が最高に良かったです。本当に神木くんには『上手い子役』を順調に(これが実は難しい)卒業して,『上手い俳優』になってほしい。彼にはその天賦の才能が備わっていると信じます。(このノリで『妖怪大戦争』も観にいってしまうのか,中年オヤジの俺)

愛すべき真柴家に最高に,サンクス!

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2005.07.30

亀は意外と速く泳ぐ

テアトル新宿。三木聡監督。上野樹里主演。

平凡な主婦のスズメ(上野樹里)は夫が海外単身赴任中で,たまに夫から電話をくれるが,話すのはペットの亀の心配ばかり。そして毎日は恐ろしく単調に過ぎていく。そんなスズメは,ふとしたことがきっかけで,街の階段の手摺の柱にそれとなく貼ってある1cm四方くらいの広告を見つける。そこに書かれた『スパイ募集!』という言葉に惹かれ,スズメは案内どうりに電話してしまう。そして,指定された安アパートの一室で,奇妙な夫婦からスパイの面接を受けることになったのだが…。

この映画にはストーリーは大して重要な要素ではない。初めから終わりまで延々と続く『小ネタ』が満載。この独特のムードにどう乗り込んでいけるかが,この作品を楽しめるかどうかのポイントだと思う。だいたい『上野樹里→主婦?→スパイ?』という設定の展開自体が絶妙のズレててほのかにおかしい。上野樹里は主婦にはとても見えないけど,その設定だから,数々のボケ(それはたぶん天然)がウケるわけで,観客からもツッコミがいがある。ちなみに彼女のさりげないツッコミも独特の間と味があり,微妙におかしい。脇役の町の意外な人々が実はスパイだった,という話は面白いし,それぞれのキャラが立っていて個性で笑わせる。『目立ち過ぎないように,本当は行列ができるラーメンが作れるのに,そこそこに美味いラーメンを作り続けるラーメン屋』がスパイなんて面白い。スズメへの使命は,毎日を目立たず平凡に暮らすこと。スズメが『平凡』を意識すればするほど,日常の出来事が新鮮に感じられ,小さな事件が起こり,日常の裏側に潜む事実の楽しさに胸躍らせるのである。そういうスズメに観ている僕達も同化して,その非日常の波間をサーフィンするように楽しむ。この作品はそんな作品である。決して大爆笑系のコメディではない。ほんのり,じんわり,『ふふふふっ』とにんまり微笑みながらその独特のゆる~い世界観を楽しむ作品だ。だから,良し悪しで評価はしたくない。僕は映画館を出る時,『そこそこ楽しめたな』と素直に思った。おそらく観客の多くもそう感じたに違いない。この『そこそこのお得感』こそがこの作品の最大の魅力なのかもしれない。

間違わないで下さい。僕は絶賛はしてませんよ。あくまで『そこそこ』ですから。これ重要。テアトル新宿での単館上映だが,観て損はないし,何より退屈しないので鑑賞後に後悔するようなことは絶対にない。デートムービーにお薦め。ビデオで観るより,映画館の雰囲気で活きる作品のような気がする。

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2005.07.27

フライ,ダディ,フライ

新宿トーア。成島出監督。堤真一,岡田准一主演。

平凡で郊外に一戸建てを持ち,妻と一人娘に愛される日常に何不自由なく幸福を感じているサラリーマン,鈴木一(堤真一)。しかし,その幸福に突然の異変が。最愛の愛娘が石原という高校生に暴行を受け入院してしまう。愛娘には心にも大きな傷が。一は石原に復讐しようと後先考えず包丁を持って高校に乗り込んだのだが,そこは石原の高校の隣の高校で,一はその高校のスンシン(岡田准一)に一撃でのされてしまう。意識を取り戻した石原は,スンシン達の提案で夏休みの間に猛特訓し,石原に勝負を挑む決心をする。

この作品観る前に,『岡田准一に今更高校生役ってどうよ』,とちょっと不安に思っていたのだが,全然イケてだ。いいねえ,岡田准一。春クールのドラマ,『タイガー&ドラゴン』の役とは真逆の厳つい,シリヤスな役どころを年齢差を苦にせず見事に演じている。スンシンの役に成り切った雰囲気がものすごく良かった。剛と柔(優しさ)のギャップを何の違和感もなく演じきっていた。コイツにはやはり才能がある。この作品は岡田准一あっての作品だと思った。さて,その相手役であるもう一人の主人公,一(はじめ)役の堤真一も,岡田准一に負けず劣らず素晴らしい演技だった。堤真一が演技が上手いのは当たり前。でも,スクリーンを見つめる僕にそれ以上のものを魅せてくれた。まず,その平凡すぎるどこにでっもいるようなサラリーマン佇まいから始まって,スンシンが課す戦うための特訓のノルマをこなせないダメな中年っぷりから,次第にスンシンの人間性と発言を理解するようになり,どんどん高くなっていくノルマのハードルを楽々越えられる(最後には,路線バスとの終着停留所までの勝負に勝ってしまうという)『スーパーなカッコいいお父さん』に変身していく過程を見事に演じている。正直,序盤の情けない中年の姿を堤真一があんなにもリアルに演じれるとは思っていなかった。アクションが伴うこの難しい役を難なく乗り越えたこの二人の魅せた役者根性には本当に脱帽ものだ。

この作品には一般大衆に分かりやすい良心がある。屈辱→猛特訓→対決→勝利。その過程をスンシン,あるいは一のどちらにもに成り切って楽しめる。二人とも感情移入しやすいキャラに見事に立てた製作サイドの勝ち。『本当に戦うとはどういうことか』,『本当に勝つとはどういうことか』という作り手側のメッセージが直球で伝わってくる。確かにスンシンが一に父親(?)を感じ,受け入れるシーンとかもっと分かりやすい描き方があった方がもっと感動できたかもしれないが,それはあの一が石原との『本当のj戦い』に勝って,スンシンが一に無邪気に飛びついて喜ぶシーンで善しとしよう。

とびっきりの感動作でもないけれど,観て損はしない映画だと思う。岡田准一を観たい人(一部の堤真一が観たい人)は映画館へ走れ。

雑談。特訓のシーンで,木に垂れ下がったロープを登るシーンがあるが,あれを一気に登りきった岡田准一は見事。僕は高校の頃,部活であれの倍以上あるロープを練習で登らされたのだが,新入生の当初は,しがみつくだけで本当に精一杯だった。この辺,堤真一の演技はリアルだ。真にあんな感じ。但し,本能でどんなことがあってもロープは離さないが。あれは単純は腕力ではなくて,『コツ』があるんです。コツを覚えてからは,僕も難なく何往復も登れるようになった。登りたくても登れない…あの頃の若い自分の苦悩(笑)を思い出させてくれるエピソードだった。

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2005.07.26

樹の海 JYUKAI

シネ・アミューズ・イースト。瀧本智行監督。萩原聖人,井川遥,池内博之,津田寛治,塩見三省他出演。

富士の麓に広がる広大な緑の海,樹海。そこはいつの頃からか自殺の名所として知られるようになった。そんな死に場所である樹海に引き寄せられた人々による『生』を見つめた4つのエピソード。

『借金を踏み倒し,樹海に自殺しに逃げた女を追いかけて樹海に入る取立て屋(池内博之)』の話。『公金を横領したあげく,ヤクザに半殺しにされて樹海に捨てられた男(萩原聖人)』の話。『ストーカーだった自分と向き合えず,樹海で売り物のネクタイで首を吊って死のうとする駅の売店の女(井川遥)』の話。『樹海で自殺した女が残した写真に彼女と写っていた男(津田寛治)と彼を探していた探偵(塩見三省)』の話。この4つのオムニバス作品。それぞれの作品で,シーンがクロスしており,関わり合いを持たせているのは,基本に忠実に作っているこの作品の良心だと思う。この作品を観て思ったのは,樹海という題名で『死』をもっとダークに描くのかと思えば,さにあらず。真逆の『生きる』という自然と湧き上がってくる活力を賛美した作品だということだ。それを際立たすためのその舞台を『樹海』としているわけである。その作風はシンプルで嫌味がない。とにかく基本に忠実だ。それじゃあ面白味がないじゃないか,というところで,『樹海で自殺した女が残した写真に彼女と写っていた男(津田寛治)と彼を探していた探偵(塩見三省)』の話が効いてくる。このエピソードだけが,舞台を樹海にするわけでもなく,街の居酒屋で二人芝居で展開される。『死』なんて考えてもいなかった普通のサラリーマンが,かつて自分が知り合った女性が樹海で自殺したという話を聞かされて,俄然『死』が身近に迫ってくる。そして,探偵と話しを進めるうちに『生』についても深く考えるようになる。この樹海から最も遠い場所でのエピソードが,一般の人々にはごく当たり前の『生きる』という生命力をよりクリアにしてくれ,更に他の3つのエピソードの持つ味わいを深める役割を見事に果たしている。この辺は脚本も兼ねた監督のセンスの良さが出ているところだと思う。他の3つのエピソードも,細かいところまで気遣いが効いている。それぞれの俳優も良い演技だ。

傑作とまでは言わない。でも,つまらなくもない。それでいて,『生きている実感』を脈々と感じさせてくれる優しい雰囲気に包まれた不思議な作品だ。樹海の多面性を持った色合いがとても美しく撮れており,意外に癒されたことも追記しておこう。

上映後に,瀧本監督と井川遥のトークショーがあったのだが,この瀧本監督はマジメな人で,自分の『初監督作品』に対する思い入れをたっぷり語ればよいのに,15分間フルに井川遥を持ち上げていた。そこまでしなくてよいのに(笑)。基本に忠実で王道の映画を撮る良識ある才能の持ち主だと,この映画を観て僕の頭に刻まれましたよ。

最後に,本当はこれが目当てでこの映画を観た井川遥はとても綺麗でピカピカ輝いていて,足元が数センチ浮いているように見えた。真に女神!(って,俺だけ?)。ああ,東京に来て良かった~~(アホ)。

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2005.07.23

HINOKIO

渋谷シネパレス2。秋山貴彦監督。本郷奏多,多部未華子,中村雅俊,原田美枝子,牧瀬里穂他出演。

ある日,クラスに転校生がやってくる。その転校生はなんとロボットだった。折りしも,不登校に対する新たな試みとして,本人が自宅からロボットを遠隔操作して登校する代理登校が始まったばかりだった。そのロボットの転校生は『岩本サトル』(本郷奏多)と名乗るが,ロボットの部品に檜が使われていることから,クラスメイトから『ヒノキオ』と呼ばれるようになる。サトルは『ヒノキオ』を介して,ガキ大将のジュン(多部未華子)達と仲良くなり,遊ぶようになるが…。

この映画のターゲットは大人ではなくて,主人公達と同世代の小学校高学年や中学生なのだと思う。この物語は彼らに語られる『お伽噺』である。少々,大人向けと認識するには,ストーリーの繋ぎに難があるし,脚本の詰めが甘い。だが,大人が観ても,作品中の現代の少年達はノスタルジックに描かれており,大人も引き込む普遍的な魅力を持っている。そういう意味では,『子供の頃の感情や考え方を見失っていない大人』や『子供を持つ大人』,または『小・中学生の子供と家族で観る大人』ならば,割と楽しめ,感動できる作品ではあると思う。そのどれもにあてはまらない僕は,確かに感動はできたが,少々この作品が持つ幼さが気になって引っかかってしまった。やはりもう少し,脚本が丁寧に作られていたら,もっと素直に感動できたのかもしれない。

さて,この作品の物語とは別のもうひとつの見所。それはVFX。とにかく,HINOKIOのCGを組み込んだ画面構成が素晴らしい出来栄えなのである。CGロボットというと,ハリウッド大作『アイ,ロボット』のダニーを思い出すが,その画と比べても何の遜色もない。むしろ,HINOKIOの方が立体感・材質感が際立っており,本当に隣に存在しているような親近感を覚える。実際,ジュン達との絡みのシーンでも全く違和感はない。実際の撮影はCGとコンピュータ上でデザインしたHINOKIOのデータを複雑な局面までを忠実に再現したプロップ(造形物,人形)を組み合わせて行っていたそうだが,普通に観ているだけでは,どれがCGでどれがプロップかは全く見分けがつかない。そのクオリティは相当に高い。最後にHINOKIOがサトルを背負って街中を走るシーンがあるのだが,どのような工夫をしてあのような画が撮れたのか,不思議でならない。この作品のような子供向け映画に最新の技術を投入している。この贅沢感,日本のVFX技術,なかなか恐るべし。

ジュン役の多部未華子が素晴らしく魅力的。最初はツンとしたガキ大将(もちろん男)と思っていたら,あるきっかけがあって,サトルはジュンが実は女であることを知る。観ているこちらもサトルと同様にドギマギで,少女を意識してしまう。そこからはジュンが美少女に見えてしまうから不思議だ。友情から初恋の芽生えへ。誰もが経験したこの懐かしい純粋な想いをこの作品では鮮やかに描き出している。ジュンがHINOKIOを抱きしめて,『サトルは俺のことが好きか?』と問いかけるシーンは秀逸。そうして,引きこもりのサトルは『人と接してみたい』と初めて望むようになり,少しずつ心情変化が起こり,成長していくのである。

(以下,ネタバレ)

しかし,終盤の,サトルがHINOKIOを介して自殺未遂を謀り,臨終の床で最愛の母と再会するシーンをなぜゲームの世界を背景にしたのか。ジュンは瀕死のサトルを救うために,ゲームの世界で起こる奇跡を信じてお化け煙突に登るが,なぜそれでサトルが救われるのか,大人には説明が足りず理解しがたい。ジュンがお化け煙突に登って,サトルを救うこと自体にはじーんとくるのだが。それに,あんな高い煙突からジュンは落ちるわけ(落ちる姿は天に向かって手を差し伸べ,救いを求めているように見えるが)だが,助かった理由が,友人達が『奇跡』と一言ですましてしまうのも,ちょっといかがなものか。サトルもジュンも第三者の力によって,命を救われたはずで,それをゲームのバーチャルな世界に繋げただけだとしたら,少し残念である。そこにある本当の深い意図が掴み辛かった。

この物語は,引きこもり少年の父親との隔絶と再生の物語でもある。転校することになったジュンを見送りにいくべく,昔の事故の後遺症で歩くことができないサトルをHINOKIOが背負って街中を走り,ジュンの乗った電車を追走して,サトルとジュンはさよならを言うことができたのだが,そのHINOKIOを操縦していたのが,父・薫(中村雅俊)というのは,父子の信頼関係の再生をシンプルに上手く描いている。

そして,エンディング。リハビリを終え,中学に進学したサトルは,HINOKIOを介してではなく,自身の足で登校し,クラスメイトの前できちんと自己紹介する。引きこもりからも卒業だ。きっとまた仲良しができることだろう。そして,校門で彼を待っていたのは…長い髪が綺麗ですっかり魅力的なセーラー服姿の少女に成長したジュン!改めてお互い自己紹介して握手する二人。見詰め合う二人の瞳に映るサトルとジュン。二人の気持ちの高揚感と,これから起こる素晴らしい出来事を連想させるかのように,二人から離れてカメラはどんどん空へ上がっていき,地球を離れ,そして遥か宇宙へ…。少年・少女達の無限の可能性を最高に上手く表現していた未来を感じてワクワクするエンディングだった。

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2005.07.21

バットマン ビギンズ

品川プリンスシネマ・プレミアム館。クリストファー・ノーラン監督。クリスチャン・ベール主演。

ブルース・ウェイン(C・ベール)は富豪の家に生まれ,両親に愛され幸せな日々を送っていたが,まだ幼い頃,強盗にその最愛の両親を銃殺され,以来,彼は怒りと自責の念を抱え込んだまま成長する。青年となったブルースは,悪の本質を知るために自ら投獄されるが,そこにヘンリー・デュガード(リーアム・ニーソン)が現れ,謎の男,ラーズ・アル・グール(渡辺謙)が率いる『影の軍団』に迎え入れられる。ブルースはヒマラヤの奥地にあるアジトで心身を極限まで鍛えられる。だが,『影の軍団』の真の目的を知ったブルースは…。

これまでのシリーズ4作は全部観ているので,面白いかどうかは別にしてとりあえず観る。前作の出来が本当に酷かったので,免疫はできている。が,この作品,これまでのシリーズ作とはとにかく色合いが違う。ドンパチよりも,ドラマ部分の割合が高い。そのドラマの部分で魅せるところがポイントの高いところ。この複雑なトラウマと悩みを抱えるブルースを,C・ベールが演じるから説得力がある。今までのシリーズのどの俳優でもダメ。僕は彼のひとつ前の作品『マシニスト』(1年間眠れず極限まで痩せ衰えた男が体験する悪夢のような物語を描いた作品らしい)は予告編でしか観ていないのだが,それはもう骨と皮のガリガリ状態で,『え~,あれがバットマンを??』と不安を感じていたのだが,実際にスクリーンに現れた彼は筋骨隆々。とても同じ人間とは思えない。しかも,格好いい男前。パンフによると,半年で54kg→100kg増量したそうで。素晴らしい。演技もなかなかのもの。それに加えてアクションも問題なくこなすわけだから。やられた,と思ったのは,御曹司気取りでわさとホテルで豪遊するシーン。スポーツカーから降りる姿がかっちょえ~。似合っている~。『バットマン』に成りきるためのヲタぶり(笑)のハマリようにも感心。ブルースの内面を上手く演じていて好印象。この作品の高ポイントは本当に彼の貢献が大きい。

あと,シビレたのは,これまでのシリーズとはその造形に異彩を放つ『バットモービル』の大活躍ぶり。装甲車ぽくってリアリティ十分。それが,街を,ビルの屋根を駆け,飛び回るのだから痛快極まりない。いろいろとバットマンの小道具の成り立ちを物語に組み込んで解説してくれるのも楽しい。製作側のこだわりが垣間見える。

しかし,これらは本作がこれまでのシリーズと違う路線を踏んだからであり,次回作も同様に大人の鑑賞に堪えうる(本作の良いところはまさしくこの一点につきるのだから)作品に成りえるかは未知数だ。『バットマン6』がどんな作品になるのかも期待したい。次の監督,大変だぞ,これは。

最後に,渡辺謙よ,あんなに上映前大騒ぎしたのにたったあれだけかよ。全然バットマンの宿敵じゃないじゃん。謙さんの活躍ぶりが観たいと思って本作を観るようなことがないように気をつけましょう。はあ,日本人俳優にはハリウッドはまだまだ遠いわ。

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2005.07.16

今日は3本に挑戦!

久しぶりの一日3本ハシゴ。午後から勝負に入ったので,疲れた~。『フライ,ダディ,フライ』と『亀は意外と速く泳ぐ』と『ダニー・ザ・ドッグ』ということに。個別にアップするつもりだが,簡単感想を。

『フライ…』…堤真一,こういう情けない男の味も出せる演技ができるようになったのか。岡田准一は目がいいね。

『亀は…』…決して爆笑系コメディではないのだが,ツボにハマった。笑えた。舞台のノリやね。素直に面白かったあ。上野樹里の天然ボケと独特のツッコミが素敵。期待してなかったので得したよ~。観てください。

『ダニー…』は少しがっかり。アクションはすごいのだけど,ドラマの部分が…軽すぎる。ジェット・リー,感情表現下手すぎ。残念。

そうこうしてるうちに,ドラマ『女王の教室』のダイジェスト版録画しとくの忘れたあ~。第1話録画もできてなかったのに。あまりの衝撃の内容に公式サイトのBBSがすごいことになっているそうで。明日ビデオ観よお,っと。

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2005.07.13

先週末の映画鑑賞

金曜に『バットマン・ビギンズ』,月曜に『HINOKIO』と『樹の海』を観た。来週までは『激夏』連戦なんで,映画レビューは今週は難しいかな。『バットマン…』は今までのシリーズで文句なく一番の出来栄えで,今までのシリーズ観ていない人でも観る価値あり。『HINOKIO』は,子供の心に戻れる人(限定)が観れば,心洗われる感動作。『樹の海』はマニアックな作品なので,たまにはそういう作品も観てもいいかなという人限定で。僕は,上映後に行われた本作出演の井川遥(ファンなのです)のトークショー目当てでいったので。井川遥,黒の清楚な衣装にメイクばっちり決まって超キレ~イ。芸能人オーラ爆発してた。取材に来てるプレスに営業スマイル連発する姿を見て芸能界って『水商売』なんだとつくづく思った。しかし,1mの位置で井川遥を見れた~幸せ。実は,先々週,彼女が出ている舞台のチケットを仕事のおかげでフイにしていたので,2倍嬉しかったのでした(なにこれ,映画の感想じゃないじゃん…バカ)。とにかく,各作品のレビューはそのうちきっと。

あ,そうだ。ファン繋がりで言うと,やっぱりファンの松たか子観たさに先月『ラ・マンチャの男』を観てる。これもいつかレビュー書きたいな。

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2005.07.02

離婚弁護士Ⅱ~ハンサムウーマン(最終回)

1st.シーズンで一等のお気に入りだったこのドラマ,相当に期待してた。が,視聴率は初回は好調だったが,その後は下降の一途を辿り,ついに最終回は,延長もなく通常の時間枠で終了。その次の『曲がり角の彼女』でも延長拡大版でやっていたのに。そんなに人気なかったのか。間宮貴子(天海祐希)ファンにとっては寂しい結果だ。この不人気の原因は,『間宮貴子という視聴者の中で完全に確立されているキャラが,予想外のこと(=恋愛)に体重を大きく預けてしまい,弁護士としての仕事の話が軽くなって,貴子がクールに格好よく事件を解決する姿を楽しみにしていた旧来のファンの期待を外してしまった』と言えるのではないだろうか。とくに中盤までの展開はそう。それに,今回ライバル弁護士役に佐伯絵里(瀬戸朝香)を用意しておきながら,二人の対決は序盤の数回で終わり,その後,共同戦線を張るようになったかと思えば,なんと絵里は貴子の事務所に入って貴子の部下になってしまう。これって,確実に話の膨らみを潰してるよね。その後,貴子が絵里の親権問題を解決したり,絵里が貴子の不倫騒動を担当したりしてちゃんと二人の協力関係は描かれているのだが。でも,貴子の不倫問題だって,結局決着をつけたのは貴子自身だったし,もっと佐伯弁護士のキレる仕事ぶりが観てみたかった。最終回の前の回では,三神(宇梶剛士)の妻から不倫問題で追求され,仕事が手につかず,魂の抜け殻になってしまった貴子の姿が延々と続く。そんなの間宮貴子じゃないやい。そんな画観せるなって。でも,良い話もいくつかはちゃんとあった。それがこの作品の本来の良心だとは思う。

エンディング,自分らしく三神ときちんと別れ,背筋をピンと伸ばしヒールをカンカン鳴らして笑顔で立ち去る貴子の姿に,これこそ間宮貴子!と胸を撫で下ろす。宇梶さんが相手役としてふさわしくなかったとは思ってない。貴子個人の恋愛に対する感情と,貴子が仕事として扱う依頼人達の持つ恋愛感情を対比したかったのだろうけど,それは失敗している。僕達の中でキャラが確立した貴子は,恋愛などでは動じないし,それが仕事に影響したりしない。現に,恋愛が仕事の障害になったのはラスト2回に渡って描かれた2回分だけだ。それも,迷いはしたが,貴子らしいすっきりした明快な考え方でクリアしている。しかし,これが見せ場ではないのですよ,僕達にとっては。痛快に事件を解決する貴子の姿が観たいのだから。

最終回の事件解決の決め手は『インサイダー取引』。あれはあれで,勝ち誇った敵を叩きのめす姿は痛快だったけど,ちょっと工夫が足りなかった印象。法律問題的にはかなり初心者的なミスで,なぜ最強の弁護団が指摘しなかったのか,失笑。やっぱりこのシリーズは身の丈にあった人情話を扱うのがベターだったと思う。正直,ものすごく期待していたので,今クールでは少々消化不良気味。もしあるとしたら,SPや3rd.シーズンに期待しよう。『キレイで優秀な弁護士』,間宮貴子にもう一度会ってみたいから。

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タイガー&ドラゴン(最終回)

春クールで一番面白かったドラマがこれ。キャストも演技も脚本も文句なし。金曜10時という在宅率が低い放映時間が本当にもったいなかった。まず,落語というテーマ。『なぜに今落語なの?』と最初は思うが,それを落語本来の時代劇と現代劇を重ねて本当に巧く観せている。その重ね方のパターンが毎回味付けが違うのがまたよろしい。いや本当に面白い。それに主役の長瀬智也他,それぞれの豪華な脇キャラもちゃんと立っていて,笑わせたり,泣かせたりしてくれる。これは脚本&演出に拍手だ。なにより驚いたのが,長瀬智也の演技。こんなにしっかりしたクセのある役柄をこなせる力量があるとは思ってもいなかった。高座で聞かせる落語(現代劇にアレンジ版)も面白いし,噺も巧くてすんなりと飲み込めたのには拍手を贈るしかない。毎回,噺のサゲが絶妙に決まった瞬間は本当に自分が高座で鑑賞している気分でTVの前で『面白れーじゃないか』と感心。最終回の1話前,虎児(長瀬)が逮捕されて,こんなに話をぶっ壊して最終回はどう纏めるんだろう,心配したが,そんな心配は無用の最終回だった。虎児は3年間の服役中も落語を忘れてなかった。そして,ヤクザよりも噺家の道を選んだ。それも,竜二(岡田准一)やどん兵衛(西田敏行の励ましや助けによって。3年なんて月日では,落語の魅力・面白さは変わらない,っていう説得力があった。西田敏行の噺は上手かったねえ。僕は,関西圏のTVが観れる地方で育ったので,小学生の頃から(当時はアフロヘアの)笑福亭鶴瓶を観ているが,ちゃんと高座(セットとはいえ)に上がって古典落語やってる姿は初めて観た。そしてちゃんと演じている。ちゃんと落語もできたのね。そういうサプライズな部分も嬉しい。

ラストシーン,寄席の観客との掛け合い,『タイガータイガ~!』(小虎),『じれっタイガ~!』(観客)のシーンはジンときたし,巧い落とし方だなあ,と感心。もうこのドラマは,キャラ,世界観とも立派に確立しているので,是非続編が観てみたい。出来れば,このキャストのままで。1話完結の話を繋いで,こういう立派なドラマができるのだから,次回もきっとできる。SPでもいい。この噺の続きを是非聞いてみたいものだ。

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2005.06.28

エンジン(最終回)

何度も途中でリタイアしようかと迷いながら,ビデオを頼りになんとか最終回まで辿り着いた。その結果がこれなのか。もうがっくし。やっぱり『レーサー』と『児童養護施設のお兄さん』を同時並行に視聴者に理解させようとして失敗してしまった。結局,両方中途半端で描ききれてなかったよ。次郎は何のためにそれほどまでにして走ろうとするのか,勝とうとするのか。自分のためなのか,子供達のためなのか,結局分からなかった。『レース』か『子供』か,どっちかに絞ってほしかった。『子供達と同じ目線』で子供達と接することができる『子供のような大人』の次郎には好感が持てたのにな。『レーサー』の次郎には引いてしまう。最終回のレースのシーンって,可能な限りお金かけて作っているのが良く分かって,それは『月9』なりの贅沢なのだけど,そこまでやる必要があったの?ファイナルラップでライバルを抜き去り,最後の直線,ウィニングランになるはずが,なんとリアウィングが突然外れるというアクシデントでマシンはスピンして最下位になってしまう。素人なんでよく分からないのだが,ストレートでぶっ飛ばすフォーミュラーカーのリアウィングが外れたら,スピンなんかですむか?マシンごと空にぶっ飛びそうだけど(きっとレースに詳しい人にはツッコミどころ満載なんだろうなあ)。そこはドラマ,この後,次郎はリタイアせず,なんと自分でマシンを押してゴールを目指す。確かにそのキムタクの姿は格好いいよ,画になってるよ。でも,それで何を学べと?最後まで諦めるなとでも?その主張が僕には意味不明だった。もっと引いたのが,その後の朋美先生(小雪)との絡み。なんで最終回になってそんな急接近・ベタベタな訳?『おい,お前ら目つぶって十数えろ』ってまさかその間に朋美先生にキスとかするんじゃあ…おいおい,やっちゃったよ。これほど恋愛感情の欠けた(ように見える)男女関係って,寒いよね。最後のホームでの全員揃った晩餐のシーンでも感動を得られず。朋美のナレーションで,1年8ケ月後に風の丘ホームが再開されたことが語られ,ラストになるわけだけれど…て,それじゃあ,子供達の成長を描いていないじゃん。せめて次郎のレースを観て,どういう心情変化があったかくらい見せとけよ。本当,中途半端だよ。で,ラスト,次郎は(子供達の励ましに応えて)レースを諦めてなかった。1年8ケ月後も『レーサー』だった。ただ乗っている車がフォーミュラーカーではなくて,ラリーカーだったという『オチ』がついて物語は終わる。ああ,ここに至っては怒りを通り越して笑ってしまった。ホンマ,無茶苦茶な話やな~。製作側の確信犯ですか,これは。

あと,豪華な脇役がもったいなかった。松下由樹とか最後まで全然キャラ立ってないじゃん。いなくてもいっしょ。堺雅人ももったいない使われ方してたよな。主要キャラなはずの小雪なんてどこが魅力的で次郎がホレたのか,微妙。

ドラマ前半戦はどこかクセ残しながら絶妙に子供達と絡んでほど良い新しい味を出していたキムタクがいたのは確かなだけに,その新しいキャラクターを『レーサー』という足枷に引っ張られて確立できなかったのは痛い。キムタク的にはこのドラマは失敗でしょ。さて,これが長く続いてきたキムタク伝説の終焉の予兆なのか。(てか,こんな長々とレビュー書くほどのドラマではないでしょ)

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スター・ウォーズ エピソード3 シスの復讐

新宿プラザ。ユアン・マクレガー,ナタリー・ポートマン,ヘンデン・クリステンセン他出演。

共和国と分離主義者の戦争は全銀河に拡大。そんな時,分離主義者軍が突如コルサントを急襲,共和国元老院のパルパティーン最高議長を拉致してしまった。無数の宇宙船が飛び交い,激しい戦闘を繰り広げる中,ジェダイの二人の騎士,オビ=ワン・ケノービとアナキン・スカイウォーカーがパルパティーンの救出に向かう。そこに待ち受けていたのは…。

久しぶりに目覚めが良かった土曜日の朝に,思いつきでSWの先々行上映を観に行こうと決める。指定席制の映画館に何館か電話してみたが,やはりどこも売り切れ。そらそうだわな,当日思いつきで観るならやはり並ぶしかない,と覚悟を決め,ホーム・新宿歌舞伎町の新宿プラザに向かう。到着時上映4時間前の僕は係員の人によると『399人目』らしい。なんと東京の人は並ぶのが好きな人達だ。普段の僕なら行列なんてごめんだが,今日は『お祭り』。イベント好きの僕は,日本で一番早く(正確に言うと他の映画館が若干早く上映するのだが)SWが観たい!そう考えると4時間待ちも苦ではない。3時間半が経ち,映画館に入れた。新宿プラザの定員は1000人超。僕の順番,更に一人なら席の確保は楽勝。ど真ん中やや前目に陣取る。すると,まわりにSWグッズを嬉しそうに広げている人々が…。ライトセーバーとかダース・ベーダーのマスクとかかぶっている人もいる。ロビーのグッズ売り場は黒山の人だかりで,グッズはほぼ売り切れ状態。2回目の人の分ないな,これは。いろんなキャラのコスプレの人もいた。だが,期待していた『全身ダース・ベイダー』の人はさすがにいなかった。残念。そして,上映が始まる。場内に無数に光るライトセーバー,そして割れんばかりの拍手と大歓声。いよいよ28年越しの壮大な物語のフィナーレが始まる…。

まず,冒頭からの何千機もの宇宙船が入り乱れる空中戦の迫力とその画のクオリティの高さに惹きこまれる。VFXのクオリティが本当に素晴らしい。1作毎にそのクオリティを上げてきたSWだが,その出来栄えはシリーズ最終作を飾るに相応しいもの。背景の細かいところまでCGで丹念に描き込まれている。ストーリー展開は良くも悪くも『SW基準』。話の進め方はやや軽いし,ストーリー自体には重みが少ない。淡々と進んでいくが,役者が大根ではないのでそれでも観れる。やはりSWの見所はその素晴らしいVFXを駆使した戦闘シーンにあるのだ。何も考えずにそれをひたすら堪能する。今回はいつもより更に戦闘シーンが多い。どれもが違った演出パターンで想像力豊かな戦闘シーンを魅せてくれる。そうこうしてるうちに,アナキンは割とあっけなくダークサイドに堕ちてしまう(しかし,ダークサイドを『暗黒面』と訳した人はかなり名訳だと一人感心)。そして,クライマックスでは,シスとなり,ダース・ベーダーと名付けられたアナキンとオビ=ワンの壮絶なラストバトルが展開されるのである。この二人のライトセーバーを使った殺陣は,その視覚効果も含めて迫力満点。普段,時代劇の殺陣を見慣れている日本人の鑑賞にも十分に堪えうる,いや十分に満足できるレベルに仕上がっている。超かっこいい『チャンバラ』。マジすげえ。このシーンがこの作品の最大の見せ場。その特殊効果の素晴らしさに感嘆。映画史に残る殺陣による決闘シーンかもしれない。

(もうみなさんラストは分かっているので,ここからネタバレ)

その激闘の末,アナキンはオビ=ワンに敗れる。しかも,左手と両足を切り落とされ,全身を溶岩の炎に包まれて半死の状態に。その死の間際を皇帝が駆け付け,手術を施す。機械の腕と脚が接合され,呼吸のために漆黒のマスクが装着される。アナキンは半ばサイボーグと化して,辛うじて命をとりとめる。ここに真のダース・ベーダーが誕生した瞬間だ。このシーンは本来なら悲しい場面なのだが,SWファンにとっては拍手したくなるような高揚感が湧く。しかし,愛する人を救いたいがためだけにダークサイドに堕ちる道を選んだアナキンの想いは報われない。全てを失ったアナキンには,ダース・ベーダーとして生きる道しか残ってなかったのである。悲劇のヒーローの誕生である。

この作品は,『アナキンが暗黒面に堕ちてダース・ベーダーになる』という鑑賞前から誰もが知っている筋書を,誰もが納得する素晴らしい映像技術を駆使して,我々の予想を遥かに超えた壮大な物語に非常に上手く膨らませている。この作品は28年という途方もない時間をかけた全6作のラストを飾るに相応しい出来栄えだ。シリーズ物の物語としての感動度の高さは,『ロード・オブ・ザ・リング』にやはり譲るが,その細部にまで凝った作り込みは『ロード…』を上回り,何度も何度も観たくなる。観る度に新しい発見があるマニアックな作品だけれども,その明快なストーリーから客層を選ばない。それが,SWシリーズの素晴らしいところだ。エピソード3でシリーズは終わったはずなのに,エピソード4でまた新たな物語が始まる。そして,そのフォースの輪は永遠に輪廻する。SWシリーズは,末永く世界中の多くの人々から愛されるだろう。

悲劇の物語を観て爽快な気分になるとは変なものだな。この『お祭り』に参加して本当に良かった。エンドマークで賞賛の拍手の嵐。エンドクレジットでも,キャストやスタッフの名前が出る度に拍手喝采だった。SW万歳!(俺ってホントお祭り大好きね)

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2005.06.24

ミリオンダラー・ベイビー

品川プリンスシネマ・プレミアム館。クイント・イーストウッド,ヒラリー・スワンク主演。

フランキー(C・イーストウッド)は小さなボクシングジムを経営している。ボクサーのトレーナーとしての腕は一流だが,選手が失敗し挫折することを恐れるあまり,タイトルマッチに臨むことを意識的に避け,そのために有望な選手達は彼の元を去っていった。ジムの雑用係のスクラップ(モーガン・フリーマン)はそんな彼の唯一の理解者だった。ある日,マギー(H・スワンク)という女性がフランキーにトレーナーになってほしいと申し込んできた。『女を育てる気はない』とフランキーは相手にしないが,マギーはジムに入会し,練習に打ち込むようになり,スクラップも彼女を応援するようになる。そんなフランキーも彼女の初試合で彼女を受け入れ,マネージャーを引き受けることになる。それからのマギーは負けなしの快進撃。ついに100万ドルのタイトルマッチに挑戦することになった。試合はマギーが優位に進めていたが…。

実は会社に一番近い映画館の品川プリンスシネマだが,会社帰りに観るにはなぜか番組時間が中途半端で,一度も行ったことがなかった。たまたま仕事が暇で定時で帰れた日に初めて観にいくことに。この作品を観ると決めていたが,まさかプレミアム館(椅子とかすごく立派でゆったり観れる)が2500円もするとは…。いや,かまわない。週間文春の映画評で全員が五つ星をつけた『傑作』であろう作品を観るならば。

前半は割と淡々と話が進む。正直,少々眠いくらい。32歳のマギーがプロボクシングに挑戦する。これって,『ロッキー』の女性版?等と少々ツッコミを入れたくなるくらい。しかし,リング上のマギーが自分の予想以上に強く,素晴らしい女性だと悟ったフランキーは思わずリングサイドでゲール語を呟く。『モ・クシュラ』と。この感嘆の呟きがラストの感動に繋がるわけだけれども。H・スワンクはこの作品のために鍛えた筋肉質な身体とその身のこなしから,完璧に『強い』ボクサーを演じている。話は,迫力あるタイトルマッチを頂点に俄然面白味を増してくる。が,しかし…。この作品はボクシングを描いた作品ではなかったのだ。女性版『ロッキー』などではなかった。突然のアクシデントとその後の物語の急展開に,予想を裏切られつつも,ぐいぐい引き込まれる。そう,ボクシングは前振りでしかなかった。ここから語られる後半の物語が,イーストウッドが描きたかった世界なのだ。この後半の表情だけで全てを表現しなければいけなくなったスワンクの演技が本当に素晴らしい。前半のボクシングでの躍動感の両極にあるからこそ,その痛々しい演技が一層際立つ。ここにきて物語は,ボクシングを通じた『師弟愛』から,『父娘愛』,いや『年齢さを乗り越えた対等な男と女の純愛』に昇華するのである。二人の別れ近くの場面で,フランキーは『モ・クシュラ』というゲール語の意味をマギーに伝える。なんと愛情溢れる言葉なのだろう。愛おしい笑顔で応えるマギー。魂が震える感動的な場面。そして,その後にやってくる非情の結末。しかし,二人にとっては約束された結末。しかし,その代償として,フランキーはボクシングを捨てることになる。このラストで提示されるこの物語の真のテーマ(あえてここでは書かない)の評価は難しい。そこには救いはない。受け手によって評価が分かれるだろう。いや,救いはあった。ラストシーン,フランキーとマギーがおいしいレモンパイを食べた思い出のカフェの窓越しに浮かぶ人影…あれがフランキーであってくれたら。いや,そうであってほしい。切なる願い。あのカフェこそが二人の約束の場所なのかもしれないのだから。

直球で感動して,涙ぼろぼろ流して,鑑賞後に『いい映画だった~』などと気軽に言える映画ではない。勘違いしないで観てほしい。僕は『星五つの傑作』とまでは言えない。序盤がダルかったのがマイナスだったし,やはり救いのないラストをがっちり受け止めることができなかったからだ。だが,主役3人の演技はやはり魅せる。うならせるだけの作品であることは間違いない。こういう作品は観ておくべき。

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2005.06.16

クローサー

新宿ジョイシネマ3。マイク・ニコルズ監督。ジュリア・ロバーツ,ジュード・ロウ,ナタリー・ポートマン,クライヴ・オーウェン主演。

ロンドンの街。不思議な運命の糸に手繰り寄せられて出会う4人の男女,アンナ(J・ロバーツ),ダン(J・ロウ),アリス(N・ポートマン),ラリー(C・オーウェン)。その運命の糸は4人の間を複雑に絡み合って,出会いと恋愛と別れを繰り返す。果たして4人の求める結末とは…。

この作品は奥が深い。正直,鑑賞後に『面白かった』というような感想が言える類の作品ではない。それでも,『大人の恋愛模様』を静かに,絶妙に描いた快作ではある。とにかく心理描写が『深い』のである。その深層心理の駆け引きの描写は,もはやこの歳になって独身でしかない僕の経験能力を遥かに越えている。正直,理解不能の部分もあるかもしれない。とにかく4人の愛する者を得ようとする心の戦いが凄いのである。嘘八百当たり前,その先を見ないと相手に勝てない。というか,恋愛は勝負なのか。男と女,男と男,女と女。複雑に絡み合う心理構造。あなたの言う『愛している』とは誰に言っている言葉なのか。その言葉には嘘はないのか。ここまで来ると,恋愛上級者とは言えない僕にとっては,『恋愛って怖い』とさえ思えてしまう。この時点で,この作品は『勝ち』である。老若男女を問わず,全てのカップルに観てもらって,鑑賞後にお互いのことがどれだけ好きか,真剣に話し合ってもらいたいと思えるくらいだ。果たして,あなたはその恋愛の『勝者』なのか?

(以下,ネタバレつつも,徒然に)

ジュリア・ロバーツは僕と同世代だけど,素敵に歳をとっているなあと思う。そのスクリーンいっぱいに広がる華やかさ・可憐さ・清々しさは『プリティ・ウーマン』の頃から何も変わらない。その存在感に拍手。しかし,今作では,一番脆くて,臆病で,ずるいところで『女性』という武器を使う一番情けない存在。ジュリアにこんな台詞言わせていいの?って場面連発。確信犯的にこの役をジュリアにやらせているのだから,この作品は物凄く贅沢だ。

ジュード・ロウ。一番モテそうな外見とは裏腹に,子供じみた執着心の強い性格のダメ男を好演。4人の中でダンに一番感情移入できた。相手のこと思っているようで,実は自分の目先のことしか考えてない,っていうのは,自分の性格にかぶるところが大いにあり。だから,僕も今でも独身なんだけどね。僕がまだ幸運なのは,愛してる女性に目の前で逆切れされて,三行半下されたことがない,ってとこだけでしょうか。

ナタリー・ポートマン。SWでは分らなかったけど,こんなにしっかりとした大人の演技ができるように成長していたんだとひたすら感心。一番気持ちに正直で,ちゃんと自分を持っていて,一番大人なのが,彼女が演じたアリスだったというオチは説得力十分だ。彼女がストリッパー役ができるとは思ってもみなかった。今作ではジュリアに勝ってるよ。

クライヴ・オーウェン。鑑賞中,『キング・アーサー』の人という感想。役柄上,下品な役を渾身の演技でこなしている。しかし,心理的駆け引きに関しては一番の大人。いろいろと迷走するが,最終的には下品な手段を使っても,アンナを取り戻しているし,ダンには致命的なダメージを与えているし。人間て,欲に関しては恐ろしい生き物だ。なぜ,こんな下品で策略的な男にアンナが惹かれるかはなぞ。お子様の僕には分からない。

当たりでもハズレでもない。たまにはこういう映画で息抜きするのもいいものだ。

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2005.06.14

電車男

アミューズCQN。村上正典監督。山田孝之,中谷美紀主演。

22歳にして彼女いない歴22年の秋葉系ヲタク男(山田孝之)は,ある日,電車内で暴れる酔っ払いの中年から美しい女性を助ける。そのことを2ちゃんねるの掲示板に書き込むと,無数のネットの住人達から返信が…。一人のヲタクが男に成長して恋愛を成就するまでの,彼と彼女と彼のネットの友人達との物語。

血液検査の結果,『水痘(=水疱瘡)』ではないことが判明。発疹の原因は未だ不明だが,感染性はないとの診断で,会社に行ってもよいという許可をいただく。熱も下がったので,顔やら身体やら発疹だらけだが,明日から会社にいくことにした。そのため,2週間のはずの休みも今日までとなったので,映画でも観にいこうと休日は混みそうなこの作品をチョイス。平日の昼の回にも関わらず,20前後のカップル又は女の子同士の比率高く,キャパ200人の6割程度埋まっている。明らかに,この中で30代後半のサラリーマン(背広にネクタイ)は僕一人だ。なんか絶妙に浮いた感じ。たまらん!

なんでこの作品が観たかったかというと,原作(と言っても,僕は本は読んでおらず,ネットの簡略サイトしか読んでないのだが)のあの独特の世界観をどうやって映像化したのか,興味があったのと,撮影期間1ケ月,編集期間1ケ月という超タイトなスケジュールで一体どんなレベルの映画が出来上がるのか,確かめてみたかったからだ。原作の電車男には特別な思い入れはないので,わりとニュートラルな気分で観れたと思う。

で,感想。思ったよりヲタク色が薄く,万人がライトな感覚で楽しめる予想外の『純愛』映画になっていたのではないだろうか。『予想外の純愛映画』とまでなったのは,何と言っても電車男役の山田君の熱演の賜物だ。今作での,彼の成りきり演技ぶりは本当に素晴らしい。服装とか髪型とかそういう見た目の部分ではなくて,しぐさとか目の動きだとか,そういう部分の細かい心配りが本当に素晴らしいのである。その一般大衆から見た『痛さ』(という感覚)が電車男をこれ以上ないくらいストライクに表現できていた。そこに拍手を贈りたい。正直ね,この作品にはこんな熱演はいらんのですよ。それを彼はあえて電車男に自分の役者としての実力を全力投球した。だから,観る者全てが,電車男に知らず知らずに感情移入し,自らもネットの住人達といっしょに彼の恋の応援をしてしまうのである。ここまで観客を乗せることができたら,この作品の『勝ち』である。もちろん,僕は『乗った』方であるので,この作品の『勝ち』を素直に認めよう。そして,山田君の熱演に。

ちなみに,エルメス役に中谷美紀本人を持ってきたのはスタッフのグッドジョブだが,22歳の電車男に実年齢29歳の中谷が恋人役というのはちょっと苦しいが,中谷美紀も丁寧に柔らかくエルメスを魅力的に演じているので,こういう彼女がいたらなあ,と自然と思わせてくれるので,この問題もクリア。製作期間が短かったことによる粗もそんなに気にならなかった。

(ここから少しネタバレ)

原作は,ただのヲタク男からネットの住人達が電車男を一人前の男に育てていく過程,やりとりが魅せてくれるのだが,そこは映画では綺麗に整理されている。地下鉄のホームを挟んで対峙する電車男とネットの住人達という構図は映画的。告白の場所を秋葉原にして,恋愛成就後の周りのネオンの電飾をアスキーアートで彩るあたりの味付けは心憎い。この告白のシーンの山田君の演技が絶品。こんなに涙と鼻水にまみれながらの情けない告白って普通格好悪いよな。でも,山田君があそこまでやると許せてしまう。あれだから,ハッピーエンドになるわけだし。不思議だけど,僕も勇気をもらえました。電車男に感謝!

僕は劇中,ほとんど声に出して笑うことはなかったのだが,まわりの20前後の女性達はところどころで爆笑し,鑑賞後は『感動した~』,『おもしろかった~』という声が多く聞こえた。彼女達には,これくらいの作品がストライクゾーンなのだろう。ようはネタが面白ければ過剰な美術・演出は不要ということか。映画の作り手側には衝撃的な作品になるなあ。

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2005.06.06

交渉人 真下正義

新宿コマ東宝。本広克行監督。ユースケ・サンタマリア主演。

クリスマス・イヴ。大都会・東京の地下鉄の最新鋭実験車両『クモ』が何者かに乗っ取られた。折りしも地下鉄の自動運行システムはダウンしており,200万人の乗客を乗せた200車両が衝突の連鎖を引き起こす恐れがあった。犯人は警視庁に挑戦状を送り,交渉相手に『警視庁初の交渉人』真下(ユースケ・サンタマリア)を指名してくる。地下鉄の司令室に陣取った真下とその部下達と犯人との息詰まる駆け引きが始まる…。

大ヒット作『踊る大走査線』シリーズのスピンオフ作品。正直,本家の『踊る~1』と『2』は映画と呼ぶには少々恥ずかしい2時間ドラマの枠を出ない出来栄えで,笑いも泣きもできなかったのだが(と言いながら2本とも広島の映画館で2時間並んで観たイベント好きは僕なのだが),この作品もそういう流れに乗って観ることに。何気に40分前にコマ前に行くとそこには長蛇の列が…ま,マジで。この作品でも並ぶのかよ,俺。ちょっと頭がクラクラした。本当にヒットしてたんだ。なんとか立ち見とまではいかなかったようだ。ほっとしてスクリーンに見入る。で,作品。以外とそこそこ面白かった。少なくとも,『1』と『2』よりは楽しめる(本作はパニックムービーだが)娯楽映画として成り立っていたように思う。ドラマではキャラの薄い三枚目の真下がきちんと交渉人としてクールに犯人とネゴしてる。しかし,少々設定が粗い。それないだろう,というツッコミどころ満載。地下鉄パニックに徹すればよかったのに,無理に話を膨らませようとし過ぎて,ツジツマとか道理とかが合わなくなっている。なんで,爆弾1個爆発させるのに,そんな手間かけるか~。という感じ。交渉の舞台を地下鉄の司令室という密室に限定したのはよいアイデアだと思うが,犯人からの仕掛けが軽いので,交渉の緊迫感が薄いのが残念。そういうのをツッコミながら,観る楽しさ(?)はあったのが不思議。

(以下,少しネタバレ)

200万人の命が懸かる地下鉄パニックから,急に標的が真下の恋人,雪乃(水野美紀)とデートするはずだったコンサートホールになってしまうのは盛り上がり的にはいかがなものかと。地下鉄に爆弾積んどけ。それでドカンとやる方が怖いでしょうが。結局,犯人の動機や犯人像は語られないまま唐突に犯行は終わってしまうし,せっかくのプロファイリング・データよりも『勘』で勝負するなんて…。そこが現場主義の『踊る~』本編へのオマージュなのだろうが,少々不満が残る。もう前半のパニック部分なんてどうでもよくなってしまっていたのが不思議。そこを腹立たしいとまで思わせなかったところが,この作品の良心だろうか。たぶんそういう気持ちにさせたのはドカジャン(だよ!)着て強烈なオーラ放ちまくっていた木島警視(寺島進)のおかげかもしれない。もし,続編があるのなら,是非次回も登場してほしい。

事件は真下が解決したわけではなく幕を閉じる。で,エンディングの雪乃との掛け合いが本来の真下らしく愛嬌があって笑わせてくれる。やっぱこうでしょ,交渉人さん。エンドロールの最後の最後に二人の恋の行方にちゃんとオチをつけてくれてるので,観にいった人は最後まで席を立たないように。

あと,このテイストを『容疑者 室井慎次』を求めないように。こっちは大コケの恐れかなり大と診た。とりあえずこれでこのダメそうなスピンオフも観にいく責任ができてしまったようだ。こうしてフジテレビの戦略にハマル愚かな者がまた一人…。

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2005.06.03

コンスタンティン

新宿ジョイシネマ1。フランシス・ローレンス監督。キアヌ・リーブス主演。

ジョン・コンスタンティン(K・リーブス)はエクソシスト。いつもの悪魔祓いの儀式の途中で,言い知れぬ恐怖を感じる。長い間保たれていた天国と地獄のバランスが崩れ始めているという予感。そして,彼の期待とは裏腹にその予感は現実となろうとしていた…。

もう1ケ月半も前に観た映画で細かいところは印象が薄れている。感想だけ簡単に。この作品は観る前は全く期待してなかったんだけど,良い意味で裏切られた。そこそこ面白かった。キアヌが,『マトリックス』のネオのキャラをどう拭い去るか,そこがポイントだった。魅力的なネオの面影を残しつつ全く違ったキャラの構築に成功している。ヘビースモーカーであるが故に陥った末期の肺がんという現実に苦しみつつも,タバコをやめないとか,過去の自殺歴のため地獄に堕ちるしかないという現実に向かいつつも,その罪を償うため,エクソシストを続ける姿とか。オカルト過ぎない味付けも一般大衆でも観れる作品になっている。しかし,地獄と天国の描写とか,CGの使い方が結構ありきたりで,この辺りをもっと工夫できていたら,もっとパンチの効いた作品になったかもしれない。映像的に驚けるのは,アンジェラがビルの壁をどんどんと突き破って地獄に連れ去られるシーンだったが,あれでは人間は死んじゃうでしょう,というのが,もう片側の冷めた自分が思っていた印象。とは言いつつも,コンスタンティンのキャラが立ったので,続編があってもいい雰囲気。小道具やサイドストーリーが凝っているだけに,広がる可能性がある世界観を感じる。続編があったら,観てもいいかな,という出来栄え。でも,これでキアヌのキャラが固定されないことを望む。40越えてキャリアはこれからですぞ,キアヌ。

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2005.05.31

Shall we Dance?

新宿グランドヲデオン座。ピーター・チェルソム監督。リチャード・ギア主演。

弁護士のジョン(R・ギア)は妻と2人の子供に囲まれた幸せな暮らしを送っている。しかし,彼自身は心のどこかで空しさを感じていた。そんなある日,ジョンは通勤電車の中からぼんやりと外を眺めていた時,社交ダンス教室の窓辺にたたずむ美しい女性の姿が目に留まる…。

日本発傑作コメディのハリウッド版リメイク作品。主演のリチャード・ギアはもちろんだが,日本版の舞役にジェニファー・ロペス。そして,なんと言っても,ジョンの妻役にスーザン・サランドンという豪華な配役が魅せる。オリジナルの持つコメディ色はかなり薄れているが,オリジナル版の出来栄えを観なかったことにすれば,十分鑑賞に値する家族愛賛歌のドラマに仕上がっている。とにかくオリジナル版に基本的に忠実なので,ハズレであるはずがない。しがない中年サラリーマンというオリジナル版の主人公をR・ギアが演じるのは無理で,設定が成功をおさめた弁護士という上流階級の設定になるのはいたしがたがないか。その分,コメディ色は影を潜めている。オリジナル版はそのコメディとドラマ部分の絶妙のバランスも魅力的だったのだが。しかし,その分,オリジナル版では専業主婦だった妻のキャラをキャリアウーマンに仕立てたのは成功している。山場の妻の職場にジョンがタキシードをバシッと決めて,赤バラ一輪を手にエスカレーター上ってくるシーンは,R・ギアの面目躍如にハマっていて格好いいシーンだったし,その赤バラを妻に渡し,変わらぬ愛を告白し,ダンスを踊ろう,と誘うシーンは,自宅の庭で妻と踊るオリジナル版とは違ったハリウッド的盛り上げ方の味わいで泣かせてくれた(実際に涙が出た)。

結局,本作では,ジェニ・ロペの役割はオリジナル版の舞ほど重要な役割とは置かれておらず,ジョンと妻の夫婦愛を軸に構築したドラマだと気付く。妻役のスーザン・サランドンが素晴らしい演技を魅せてくれる。そこを深くえぐったところが,本作の良心ではあるし,反対に少し物足りないところだとも思う。日本人の好みで言うと,ジェニ・ロペはセクシー系でアクが強すぎると思うし,日本人が好きなのは結局,オードリー・ヘプバーンのような凛とした(オリジナル版の草刈民代のような)女性だと思う。そこがオリジナル版を知った者には引っかかったところだとは感じる。別に本作のジェニ・ロペが悪いというわけではないけど。ダンスシーンもオリジナル版の方が『下手なりに綺麗』に感じたのは確か。リメイク版の『そつがない出来栄え』もさすがとは思うけれど。でも,本作はコメディと考えて観なければ,十分感動できる佳作だと思う。

これだけ忠実にオリジナル版をハリウッドがリメイクしてくれるのは嬉しい。今後もこういう魅力のある作品がどんどん出てきてくれることを期待したい。(ホラー映画だけではなく)

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2005.05.24

バタフライ・エフェクト

シネマミラノ。エリック・ブレス,J・マッキー・グラバー監督。アシュトン・カッチャー主演。

エヴァン(A・カッチャー)には幼少時代から心神喪失癖があった。突然,ある時点の記憶が欠落してしまうのだ。大学生になり,その病気も影を潜めていたのだが,ある日,幼少時代の日記を読むとなんとその時代にタイムトリップしてしまった。自分の超能力に気付くエヴァン。そうしてタイムトリップを重ねるうちに,自分に過去を変える超能力があることに気付く。エヴァンは少年時代のガールフレンド,ケイリーと再会するが,そのことが彼女の過去のトラウマに触れてしまい,ケイリーは自殺してしまう。愛する彼女を取り戻すために,彼女の人生を書き換えるために,エヴァンは再び日記を手に少年時代へタイムトリップする…。

この作品は面白い。邦画では味わうことができないであろう,アメリカ的味付けの極上のサスペンス・スリラー。ダイヤの原石を見つけたような喜び。この驚きは『SAW』以来かもしれない。多額の予算をかけなくても,プロットだけで魅せる映画の素晴らしさ。久々の快作だ。アイデアがとても斬新で,前半の伏線部分で『このシーンがなんかポイントになるのだろうな』と認識させておいて,そこに予想外のパンチが飛んでくる。『その手で来るか,そう来るか~』と驚きの連続。『過去を書き換えられる能力』,そんな超能力があれば,普通は幸せになるはずなのに,エヴァンもケイリーも友人達も母親も,そんな微妙な『バタフライ・エフェクト』のために幸福から不幸への超絶のジェットコースターに乗せられることになってしまう。

『バタフライ・エフェクト』とは『ある場所で蝶が羽ばたくと地球の裏側で竜巻が起こる』というカオス理論のこと。

真にこの物語はそういう微細な過去の書き換えが人生の竜巻を巻き起こす物語。過去を書き換える度に思わぬ不幸に襲われるエヴァン。あちらを立てればこちらが立たず。誰かが不幸になる。行き詰ったエヴァンが選んだ『最良の選択』とは…。この選択こそ真に人生の『バタフライ・エフェクト』。この切なさいっぱいの選択には心を震わされる。哀愁の選択。この選択がエヴァンを幸福にしたのか,不幸にしたのかは,最後まではっきりとは語られない。

(最後だけちょっとネタバレ)

ラストシーンは,8年後の大都会の街角。無精髭もばっさり剃り,エリートビジネスマン風に成功した社会人と成長したエヴァンは街角でケイリーとすれ違う。そうか,こうして二人は再会して愛が成就するのか。そういう淡い期待を持たす場面。しかし,それはあっさりと裏切られてしまう。二人はお互いのことを気付かない。すれ違い,離れていく二人。エヴァンは幸福な人生を送れているのだろうか。すれ違ってしまった現在のケイリーが幸福であることを願わずにはいられない。彼女の幸福な人生のために彼は自分の人生を捧げたのだから…。

前半の伏線部と第一の過去の書き換えでケイリーと幸福な時を過ごすあたりのテンポがややゆるいので,それだけが欠点。だから『傑作』とまでは言わずに『快作』としておく。ディレクターズ・カット版では全く違う,もっと非情なエンディングとなっているらしいのだが,そっちの方も観てみたいなあ,と普段DVDなど全く観ない僕が珍しく感じた作品だった。さて,DVDリリースはどっちバージョンになるのだろうか。

主演のアシュトン・カッチャーのことは全く知らなかったのだが,なかなか良い演技をする。髭面ではそうは思わなかったのだが,ラストシーンで髭を落とした美青年ぶりに驚き。これからブレイクする俳優かもしれない。

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2005.05.21

今日の『タイガー&ドラゴン』に

ビデオで観てたら,なんと,薬師丸ひろ子が出てました。しょっぱなから高座にあがってます。笑えた。いや,僕の中学・高校生時代の青春時代は薬師丸ひろ子抜きでは語れません。人生で一番最初の『アイドル』です(ヲタの域に入ってました)。熱狂的なファンでした。映画は全部通ってましたし,関連本もせっせと買っていた。その頃は広い自室に住んでたのですが,部屋中,薬師丸ひろ子のポスターでいっぱい。親からは,そんな状況をかなり煙たがられました。10代の薬師丸ひろ子の輝きは素晴らしかったなあ。今は渋い演技するようになりましたねえ。今でも密かにファンですよ。応援してます。

で,『タイガー&ドラゴン』,かなり面白いです。金曜10時という時間枠が本当にもったいない。最終回レビューはきっと書こうと思ってます。

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2005.05.19

ここは映画ブログでもあるはずだが

年が明けてから,さっぱり映画のレビューが書けてない。全然観れてないから仕方ない。GWに広島で『阿修羅城の瞳』観てからさっぱり映画館に行けない。2月頃からずっと体調悪くて,平日なんとか働き抜いて,週末にぶっ倒れて動けなくなる,の繰り返し。それでも,サンフの試合関連は,気合でかの地へ赴くのだが,翌日はもうダウン(こんな時,独り身は辛い)。だから,僕のホームタウンの新宿歌舞伎町の映画館街までいく気力が湧かず,なかなか辿り着けない。もう4ケ月目だが,改善の兆候なし。こりゃ医者いった方がいいのかな。去年会社のミスで人間ドック受けてないしな。またひとつ歳とって40が更に近づいたし,やっぱもう歳なのかも…。かなり弱気な最近の僕。

他の方の映画ブログをチラリ見して,新作がアップされているのを見て,『う,読みたい』という感情を抑えて,読まないようにしてます。これが辛い,ストレス。実はGW前に『コンスタンティン』を観ているのだが,まだアップできてない。僕はサラッと書き流せないんだな。サンフの観戦記もそうだが,僕のスタイルは理詰めじゃなくて,感情系。だから,気が高まっていないと書けない。ちなみに『コンスタンティン』は予想よりもずいぶんと面白かったです。キアヌがあっさりと『マトリックス』のネオをきれいさっぱり脱ぎ捨てたキャラを立てていたのに驚きでした。よし,今週末までに『コンスタンティン』のレビューをアップするぞ,目標と。あと映画2本観にいく。頑張れ,週末の俺の身体,と。

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2005.05.07

春クールドラマ雑感(序盤・残り)

この春クールは結構ドラマ見逃してる。個別にアップしていない残りをなんとか…観れてない証拠だけど。

『曲がり角の彼女』

33歳独身のキャリアウーマンの仕事と恋を描く物語。稲森いずみが主人公のこのドラマ。同世代の女性が観ると共感できるのだろうか,しかし,その世代の女性の心がキャッチできず,未だに独身の僕にはそのハマリ具合がよく分からない(ダメだ,こりゃ)。てことで,僕的には残念ながらあんまり面白くない。堅物上司役の要潤との絡みがこれから面白くなるのかもしれないけど,おそらくリタイアです。

『anego~アネゴ~』

『曲がり角の…』とほとんど同じ設定。こっちは32歳独身キャリアウーマンで篠原涼子が主演。しかし,どうして同じクールでわざわさ狭いゾーン(30代前半の女性)をターゲットに絞ったドラマで勝負するかねえ。ま,こっちの方がラブコメ色が強く,普通の男でも何とか受け入れ易いかも。しかし,『曲がり角の…』とどっちが面白いのかな。女性の御意見聞いてみたいものです。おそらくリタイアです。

『夢で逢いましょう』

歯食いしばって2回みたが,ダメだ。矢田ちゃんを初め,役者がみんな魅力的に描けていない。長塚京三なんて,持ち味が全然出ていない。矢田ちゃん自身もそうだが,絡む男達が全く魅力がないので,話がふくらまない。はっきり言ってつまんない。リタイア決定。

『アタックNo.1』

1~3話観てません。4話から観たが,『エースをねらえ!』の二番煎じとはいかないような雰囲気。『エース…』は子供の頃,マンガもアニメも観てたけど,こっちはどっちも観てないから,思い入れが少ないからかな。上戸彩がバレーボール選手ってのは,やっぱり無理があるかなあ。もうちょっと観続けてみます。

『汚れた舌』

実は飯島直子に食わず嫌いで1回目からパスしてる。しかし,世間の評判では相当面白いらしい。確かに牧瀬里穂怪演(おそらく炸裂)には惹かれるが…。でも,乗り遅れているし,たぶん観ません。

『恋におちたら~僕の成功の秘密~』

1話,2話,4話見ましたが,これって会社を舐めてませんか。そんな甘ちゃん(草なぎくん)が社会で成功するわけないでしょう。観ていて腹が立つ。ヒロインとの繋がりも良く分からないし,木村佳乃使われ方すご~くもったいないし,僕らの世代のアイドル,和久井映見は世話焼きおばちゃん扱いだし…。『お金がない!』みたいなスカッとした成り上がりっぷりが観たかった。リタイアします。

『タイガー&ドラゴン』

実は連ドラ化前のSP見逃しているせいもあって及び腰で1回目を観なかった。でも,2回目から観ても全然OK,ついていける。1話完結なので,定番化されたプロット。落語の噺を一度聞かせて,それに合わせて現代劇をアレンジしてもう一席で,オチをつける。むむむ,単純明快でなかなか面白い。主演で今が旬の長瀬智也,岡田准一を起用し,これまでとは全く違った破天荒な役を見事にハマり演じている。その他,脇キャラも豪華で個性的。間違いなく,春クールで万人受けする一番面白いドラマです。いろんな世代の人に観てほしいんだけどなあ。金10は厳しいよ…。

『雨と夢のあとに』

2回観ました。悪くはないです。だが,テンポがゆるい。この時間帯はやはりもっと凝ったつくりのプロットを希望。もともとこの時間帯はTV観てない確立が低いのだが,リタイア決定。

『瑠璃の島』

ビデオに録ったまま,まだ一回も観てません。でも,評判がものすごく良いので,絶対に観ようと思ってます。速報Jとかぶると,やっぱあっちとるよなあ。どうでも,いいけど,ファン(だけれど最近露出の少ない)の井川遥も観たさに。

実は『エンジン』も『離婚弁護士Ⅱ』もここにきて微妙な状況。ひょっとして完走できそうなのは,ひょっとして『あいくるしい』と『タイガー&ドラゴン』だけ??

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Shall we ダンス?

TV地上波鑑賞。周防正行監督。役所広司,草刈民代主演。

ジェフ戦の記事アップしながら,横目で観てた。僕,劇場公開時に観てないんですよね。この時期,役所広司が食わず嫌いで,邦画自体も敬遠していた時期だったし。でも,観てよかった。地上波で映画を滅多に観ない僕にとっては画期的快挙です。リメイク版を今週末に観にいくつもりだったので,是非観ておきたかったのですよ。

いや,文句なく面白い。TVのCMカットがなかったら,どんなに面白かったかと。劇場の大画面と音声で観てみたかった。役所さんの演技,最高です。こんなサラリーマン,いてもおかしくないよ,ホント。家族を愛しながら,舞い(草刈民代)に憧れ,ダンスに夢中になる中年サラリーマン杉山を熱演。とにかく油がのっていていい味だしてるんですよ。中年の男の色気が良く出てました。ダンスシーンがバツグンに格好いい。草刈民代もいいよねえ。演技初心者とは思えない絶妙な味を出してました。あんな美しいたたずまいの人が電車の窓から見えたら,そら一目で恋にも落ちますわな。不覚にも,TV放映にも関わらず二度も涙を流してしまいました。娘の仲立ちがあって,それまでの妻とのわだかまりを解いて,家の庭で妻とダンスを踊るシーンと,ラストの舞とのダンスのシーンに。やっと現れた杉山に当然のように『Shall we dance?』と言う舞の台詞の響きにはシビレました。もう最高。脇役のキャラもそれぞれ立っていたし,十分にエンターテインメント足りうる作品でした。こんな佳作を9年も観ていなかった自分に後悔です。こりゃしまったな。リメイク版を先に観とけばよかったかも。これより面白い作品であることは考えられませんから。しかし,日テレ,これで2時間40分も引っ張るか。だから,地上波の映画は嫌いだよ。

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2005.05.01

阿修羅城の瞳

広島東洋座。 滝田洋二郎監督。市川染五郎,宮沢りえ主演。

時は文化大政の江戸。江戸の町には『鬼』がはびこり,幕府は鬼達を退治するために武者集団『鬼御門』を結成し,日々容赦なく鬼を斬り倒していた。出門(市川染五郎)は,今は町の人気舞台役者だが,5年前までは鬼御門の副長として『鬼殺しの出門』と恐れられる剣の達人だった。だが,ある日,鬼退治の最中に出会った不思議な少女と出会い,出門はその少女の放つ恐怖に怯えるあまり,その少女を斬り殺してしまう。初めて人を斬った出門はこれをきっかけに鬼御門を抜け,今の芝居一座に入ったのだ。そんな出門は,ある夜,つばき(宮沢りえ)と偶然出会う。『おめえとはどこかで会ったことがある』…どこか懐かしい不思議なつばきの魅力に次第に惹かれていく出門。そしてまた,つばきも出門に惹かれていくのだが…。

祝,映画ブログ復活!てゆうか,前回アップしたのは『パッチギ!』で,あれからもう2ケ月半。この間には他のサイトを読むと結構佳作が多かったようで,ビデオやDVDを観ない僕には,これからそれらの作品を観る機会は限りなく少ないわけで,かなり残念なのですが,それはもう諦めるしかないかと。佳作はもちろん,駄作と評判の作品(『○ーレ○イ』とか)も勉強のために観ておきたかったな。今回は,広島で空き時間で観た映画を,広ビに出発前の時間潰しに入った紙屋町のネットカフェでアップ。

で,作品。人気舞台の映画化らしい。こういう作品はある意味で舞台的要素をどう巧く排除できるかで出来が決まる。舞台を意識した構成にすれば,映画になると失敗するからだ。それに舞台版はおそらく3時間近くはあるはず。これをどう2時間で表現するか,難しいところだ。で,出門ら主要人物の登場のシーンまでのツカミはまあOK。殺陣はTVドラマの時代劇風の演出だが,まあ許そう。なかなか判りやすくて面白いかも,と期待して観ていく。宮沢りえ,いいですねえ。今回は,ちょっと可愛げの残る可憐な女性を演じているのだが,目がいい(これが題名に繋がる訳だが)。TVドラマの脇役でしか観たことのない市川染五郎は,もっと大根かと思っていたら,意外と芝居も殺陣(といってもTV時代劇風)もできる。敵役で渡部篤郎とか出てるし,役者の演技で魅せる要素はある訳ですよ,普通にやれば。

(以下,久しぶりですが,いつもどおりネタバレ)

でもねえ,中盤からどんどん話とか設定とかがおかしくなっていっちゃうんだもん。邪空にさらわれ,鬼のアジトに連れていかれたつばきを出門がすぐに駆けつけて見つけてしまう,ってどうよ。あんたなぜ鬼のアジト知ってるの?出門とつばきが愛し合い,つばきの中の阿修羅が目覚め始めて逃げ走った先は,5年前に出門が少女を斬った館で,そこで二人の運命の記憶が繋がる,というのはいいが,その館を出るとそこは,冒頭から何度も出てくる鬼御門の本拠地で,それって場面設定が安直で世界が狭すぎない?おまけにここでつばきが巨大な阿修羅に変身。その阿修羅が昔TVでやってた孫悟空のお釈迦様のイメージそっくりで,それを宮沢りえがやると浮いた画になっていて,苦笑。いや,もっと表現方法なかったの?続いて,阿修羅城復活。なんですか,このCGは。安物のゲームからの流用ですか?トドメは阿修羅になったはずの宮沢りえの顔デカ姿。ああ,ダメだ,前半のまだ観れたドラマの部分がこれらのVFX処理の幼稚さでぶち壊し。なんでもデカくすれば,迫力が出るってもんじゃないでしょ。この前のシーンで出門は斬られて全身血まみれの大怪我を負ってしまうのだが,次のつばきを阿修羅城へ取り戻しにいく場面では,傷も癒え元気ハツラツ。阿修羅城を駆け上がり,鬼達をバッタバッタと斬り倒していく。あんた右肩斬られてたのによく刀振れるね。脚斬られたのになんで走れるの。とくに不満なのが,そこまでの場面場面の繋ぎの悪さ。盛り上げて,盛り上げてなんか面白いぞ,と思ったら,場面が変わったら急にテンションダウン。それまでの盛り上がりはリセットされ,またイチからゲーム開始って感じ。出門と邪空の対決シーンなんて,最後にはまだやるのかと見飽きてしまっていた。最後,出門と阿修羅になったつばきは,なんと剣で対決する。しょぼいぜ,阿修羅王。なんか魔力とかないのか。エンディングもこうなってしまえばよう分からん。なんで出門がつばきの簪で阿修羅になったつばきの肩(しかも紋様がない方の肩)刺したら阿修羅城が崩壊したの?いやもうこの時点では呆れてぼーとなっていたので筋をちゃんと追っかけれてなかった僕も悪いのだが…。

結論。舞台的演出を意識しすぎ。舞台でできないことを豪華にやろうとして,逆に失敗している。美術とかVFXとかがそう。海沿いの鬼御門の本拠地が話の重要な場面でいつも出てくるのは舞台的演出で分かるけど,それを映画でやられちゃあねえ。あの『宮沢りえ巨大化』が全てをぶち壊してしまった感じ。ただデカいだけで阿修羅を表現しようとしたことが大失敗。ギャグにしかなってなかったよ。あそこの表現方法をもっと違った形で見せてくれていたら,きっともっと心地良い鑑賞感になったに違いないと残念に思う。でも,役者は皆良かった。これだけが救いか。

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2005.04.19

離婚弁護士Ⅱ~ハンサムウーマン(第1回)

去年の1st.シーズンで一等お気に入りだったこのドラマ,もちろんこの春クールの一番の期待作である。でも,去年?(だったっけ)のSPでは,ちょっと話が広がりすぎて,間宮先生もプライベート入って売りのクールさにちょっと熱血漢入りすぎて,1st.のライトさとかがちょ~と薄れていた感じ。それに,1st.独特の画質のドライ感というかチープな映画っぽい画の作りがなくなっていたのはちと残念。あのチープさも売りだったはずなのだが。

で,始まった2nd.シーズン。やっぱり『間宮貴子』は天海祐希のハマリ役ですよ。クールになりきれない正義感旺盛の女性弁護士。その前に,弱い立場の依頼人を黙って放っておけず,どんな窮地に追い込まれていても諦めず,法律という唯一の武器を最大限に使って突破口を見つけ出し,依頼人の人生に明かりの灯った道をつける。超カッコいい~!1st.はその小じんまりした家族のような印象だった事務所の仲間達は主要なところはほぼ健在。忙しいはすの渉外弁護士としての仕事はあっちへおいて,『本業』に励んで下さい。

今回は,ライバル役として,検事上がりのヤリ手女弁護士『佐伯絵里』に瀬戸朝香が登場。これが冷徹なロボットのような感情を廃棄したキャラ付けで,貴子と正反対に描かれる。絵里に追い詰められる貴子。だが,まだ勝機が。依頼人の悔しい気持ちを『私が晴らす』とタンカを切る。しかし,『それを決めるのはあなた(依頼人)よ』と依頼人に人生の階段を一段上がるかの選択を選ばせる。その結果,依頼人は悔しさを晴らし,新しい自分を発見する。その変化が爽やかで微笑ましい。面白い。貴子先生,スペシャルにハンサム!その一方で『六科神経痛(って書くんですか?)』に悩まされるご多忙の貴子先生,もうちょっと,あとワンクール頑張って(笑)

1st.のような身の丈にあった人情話にプロットが戻っていて安心。ただ佐伯先生を登場させたからには,この後も彼女とのバトルが続くわけで,それはラストまで1話完結で続くんでしょうか。更に,もちろん主役である間宮先生が勝ち続けるのでしょうか。これからの瀬戸朝香の演技次第だが,貴子はキャラが確立されているが,彼女が同じキャラで通すと見飽きてしまう恐れが…。プロットも凝ったものになると,本来のシンプル(てか,チープっぽさをこよなく愛す)さが薄れていくわけで…。ネタの弾が尽きるのも怖い。

ま,第1回は及第点。次回以降に不安を感じつつも,やっぱり期待して観ます。

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エンジン(第1回)

キムタク1年ぶり主演の『月9』と話題のドラマ。僕は基本的にミーハーなので,こういうイベントものには必ず飛びつく。世間ではあまり評判のよろしくなかった前作『プライド』も結構楽しんで観てたし,アンチキムタクでもないので,とっつきも悪くない。ただ,僕的にはキムタクはやはり『ビューティフル・ライフ』の頃がベストだった。女性誌『an・an』で12年連続で『好きな男,第1位』に選ばれ続ける,常にトレンドの先を行く男が選んだのは『児童施設の子守役』(いや,TV的にはとりあえず元レーサー役,たぶん2,3話で忘れられるだろうけど)。キムタクがお子様と絡む時代が来たよ。これまでマスコミを事務所が強制操作して,『2児の父』である事実から目を背けるようにして来たのに,自らそこに飛び込んでいくか。さて,どうなることやら…。とりあえず『お子様系』が苦手な僕は既に引き気味。

しかし,これが予想外になかなか観れる。キムタクが果たしてレーサーに見えるかどうかは何だが,子役達との絡みは予想以上に上手くできていた。キムタクの『子供みたいな大人』ってキャラ設定がかなり絶妙でハマっている。その子役達も,一番上の上野樹里から下は僕の知らない子までそれぞれキャラもしっかり立っていて芝居も上手い。キムタクが独身で『子供嫌い』なのは,僕自身とかぶってすんなり感情移入できるし,大人の目線で説教くさいオヤジになっていないところもさっぱりしてて鼻につかない。

それにこのドラマは,実際のキムタクのアイデンティティを実に気持ちよく砕いてくれている。『あなたはもう終わってるのよ』とか『その髪もう切りなさい』とかズバズバ刺されるキムタク。それをドラマで言ってしまってはいかんのではないの…TVのこっち側でくそ微笑む僕ら好かれない男達一同…て,これ確信犯!?このスタンスで最後までいけるかが,逆にキムタクファンを引き付けるちょっとした調味料になってたりして。

それにしても豪華な共演陣だ。中でも高島礼子が施設の食堂のオバちゃん!(しかも台詞少ない)をやってるのって贅沢すぎない?お江与の方であらせませるぞ。逆に大奥繋がりのキムタクの姉役,松下由樹は残念ながら第1回ではキャラが立っていない。その他,堺雅人の保育士役とかもったいなすぎる配役なので,今後のキャラの味付けに期待。

しかし,今後,子役達とどう絡んでいくのか,第1話では存在感のなかった小雪との関係はどうなっていくのか,レーサーという肩書きはどうなるのか(これはかなり見えてますが)とか,第1話を観た限りでは,この先がさっぱり読めないので,そういう意味では楽しみなドラマになるかもしれない(さっぱり読めないまま終わるという恐れもあるが…)。とりあえず,続けて観ます。

冒頭の『an・an』ネタでいうと僕と同世代の福山雅治が7年連続第2位というのはちょっと嬉しい。ましゃは俺達の希望の光だあ~~!でも,僕がモテないという現実には何の影響もありませんが(泣)。ああ俺も『息だけは福山雅治』になっとくかーと。

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あいくるしい(第1回)

本日,年度末・始め業務がひと段落し,有休取得してお休み。午前中は免許の更新(しかし,5年前の俺の顔,ひでえやつれてて顔色悪っ。あの頃の仕事地獄を思い出すなあ)ともう1年も洗っていない(スキーに行ったので激汚れ状態の)車の洗車(東京に来てから1ケ月に一回乗れるかどうかだよ)。天気も良くて気持ち良い。午後から久しぶりに映画でも観にいくか,とも考えたが,容量パンクしたHDDレコーダーの整理と録画したままたまっている春ドラマを観ることにした。絶対に二度と観ることのない番組を片っ端から消去し,当分の間は心配しなくても大丈夫な容量を確保。ようやく落ち着いて春ドラマを観だす。

その一本目がこれ。この番組はですね,神木隆之介くんが準主役というだけで僕にとっては最後まで観ることはMustなわけで,あんまり出来栄えはどうでもよかったんですけど…。これが期待以上にかなり魅せてくれる。最初はドタバタコメディ調な掛け合いもあったので,これってコメディ?,って勘違いしたけど,そこからはしっかりと情緒たっぷりな心情深いドラマを観せてくれる。なによりも,幌(神木くん)の目線で物語が進むのが良い。これって,『神木くん主人公のドラマ』?って感じるくらい。また,いつもどおり神木くんの演技が素晴らしい。神木くん以外の役者も,脇役含めみんなしっかり演技のできる人達ばかりで頼もしいばかり。お互いを愛し支えあう深い『家族愛』をしっかりと描いてくれそうな期待が高まる。第1回で良いと思ったのは,おじいちゃん(杉浦直樹)が生まれてから一度も泣いたことがないという幌に聞かせる『心の中の木』の話。人はその心の中の木が折れた時に『泣く』という。そして,幌の心の中の木は太く強い幹でなかなか折れないんだと。その代わり,その強い幹で『多くの人を支え,世界中の人を救うことができる』と言い諭す。う~ん,こういうやんわりとした温かい愛情って,本当に心地良い。誰でもキャッチできるスローボールは真にストライクゾーンど真ん中。その丁寧な作りに安心して身を委ねられる。田舎を舞台としていることもあり,どこか時間の流れが穏やかで,ゆっくり浸って観れるのも良い。

お母さんが病気で余命幾ばくもないことが最初から暗喩されており,これからこの家族がどういう物語を紡いでいくのか,目が離せない。春クールで絶対に観て損はしない一本。神木くんファンならずとも観るべし。(てか,あなた,これが1本目ですけど…)

『幌が初めて流す涙』とはどういう場面で流されるのか?それが,このドラマの最大の『泣ける山場』と思っていたら,第1回の最後のシーンであっさりと幌が泣いている。あれ?予想外れ?と思ったら,さにあらず。それは,おじいちゃんが授けてくれた『目薬』(おじいちゃん,優しすぎる~)によるうそ泣きだったとさ。ああ,予想がいきなり外れなくてよかった。幌をはじめとする真柴家の面々のエピソードも期待大なのだが,僕的には萩原聖人演じる謎な男がどう絡んでくるかで,話の奥行きがぐっと深まるものと密かに期待しております。さて,第2話も観ますか。

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2005.04.05

冬クールドラマレビュー(残り)

来週から春クールが始まるので,残りのレビューを簡単にアップ。結局,個別にアップできなかったってことは,観れてないってことなんだけど。

『不機嫌なジーン』
うーん,このドラマは第1話が観れなかったことが全てですね。乗り損ねた。結局,中途半端に環境問題なんかを持ち出して,ラブコメに徹することができなかったように思う。観ていて,『面白い,次も観よう』と思わせる何かが希薄だった気がする。『ランチの女王』では,あの豪華共演陣を向こうにまわしても超スペシャルキュートな光線出しまくりだった竹内結子が,このドラマでの輝きの鈍さはどうしたことか。相手役の内野聖陽さんがバツグンに良かっただけに惜しい。内野さんに食われた感じ。でも,最終回の教授と別れることになって,独りぼっちになってただただ泣きつくす姿の男心をくすぐる愛おしさには,これぞ竹内結子!と感じたのは確かだが。ラストシーン,車のラジオで耳にした二人の思い出の曲に涙ぐむ,って終わり方はいただけないと思った。

『みんな昔は子供だった』
中間レビュー後,リタイアです。でも,運よく22時台に帰宅できた時は途中からでもなんとなく観てた(最終回も観たし)。全体の雰囲気作りはとても温かく,好感が持てたのだが,脚本のパンチが弱すぎた。ワンクール引っ張るのは難しかった。こういうドラマは一般大衆に対する引きが弱いので,視聴率が上がらないのは残念。やっぱり僕は『お子様ドラマ』は苦手。次の月9のキムタク主演『エンジン』もお子様系。ついにキムタク様もお子様と絡む御歳に…観ないかも。

『優しい時間』
裏の『H2』に予想外にハマって,結局1話も観れずリタイア。ごめんなさい。

『3年B組金八先生』
ぎゃあ~,最終回4時間SPを録画予約していたのだが,HDDレコーダーの容量がオーバーして録画エラーになっていた。せっかく中間レビュー後,持ち直してまた観るようになったのに,金八最大の感動の卒業式を観れないとは(本当に泣)。『しゅうと3Bの最後の授業』は見応えがあった。本当,最終回観たかったです。これに懲りて,もう二度と観ないであろう再放送ドラマとかもう二度と観たくない去年のサンフの試合とか,かたっぱしからHDDから消去してます。TBSさん,4時間SPの再放送ってあるんでしょうか??

『特命係長 只野仁』
中間レビュー後,観るように。高橋克典ってすごいよな。40過ぎて,あの鍛え抜かれた身体,ありえねえだろ。もちろん,観せるために鍛えていて,だからそういうシーンもあるのだが。アクションシーンも手抜きがない。ちょっとスケベなテイストがあるところは,さすが原作マンガがオヤジ週刊誌連載だけのことはある。そんなオヤジ(もう俺もストライク入っているよ)の心をくすぐる作りはなかなか魅力的。おそらくPART3もあるでしょう。

『ごくせん』
最終回視聴率32.5%だって。そんなに世間の皆様はこのドラマの『水戸黄門テイスト』がお好きなわけ??僕は初回を観て,PART1(この時は面白いと毎回観てた)と全く変わっていないプロットに飽き飽きして,結局続けて観ることができなかった。なんか日テレは映画化を狙っているそうな。そんなもん,誰が映画館まで観に行くかよ。2時間でヤンクミに何回タンカ切りとケンカと説教させるつもりだ?視聴率とは真逆に面白いとは思えなかったドラマだった。

『Mの悲劇』
このドラマにも予想外にハマりました。いやあ,次が読めない展開の連続,全然期待していなかっただけに,余計に面白かったあ。中間レビューの予想どおり,衛が苦難を経て美沙の復讐心を癒し,美沙は人としての優しい心を取り戻すことになりましたね。しかし,後半の佐々木蔵之介のキレっぷりはすごかった。いやもう前半のテイストぶち壊す(笑)くらい衝撃的だった(で,どこが『Mの悲劇』って意見も)。最終回をすぐに観れなかったので,個別でのアップができなかったのだが,僕的には冬クールでは『H2』と1位を争うくらい面白いドラマだった。TBSのこの枠はオリジナル脚本で当たりが結構ある。次のクールはファンでもある神木君が準主役だし,楽しみ~。

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