いつまで経っても鑑賞後のレビューが書けないので,仕方ないので短評に纏めてみた。
僕は批評する上で,採点するのはあまり好きじゃないけど,短評なので,視覚で出来具合を理解していただくために,五つ星=満点,で評価してみた。
『マッチポイント』…★★★★
『運』,『勝者と敗者』,『野心と愛欲』について,絶妙のウィットを効かせながら描いた作品で,引き込まれる。ラストの展開とオチが最高。S・ヨハンソンが絶品に色っぽい魅力的な女性から全く不快な女性へ堕ちていく姿が男には怖い。
『紙屋悦子の青春』…★★★★
戦時下でも日常の生活に溢れているユーモアと敗戦が迫る厳しい世相を対比させ,どちらも殺さずに絶妙のバランスで描いた反戦映画。『大切な人のために生きていく』という当時の人々の人生の選択に感動。役者がみんないい味出している。急逝された黒木監督にご冥福を申し上げます。映画職人の魂を感じた。
『涙そうそう』…★★
妻夫木聡が大熱演。本当巧くなったねえ。長澤まさみも頑張ってた。兄妹が別れる場面では泣けた。しかし,その後の脚本が最悪で,それまでの役者の努力を全てぶち壊し。おまけに『泣け,泣け』の超過剰演出。逆にどん引き。これがヒットしてるなんておかしいよ。
『フラガール』…★★★★★
笑いと感動と涙に溢れたとてもベタな作りの作品。でも,演者の熱は伝わる。後半はもう蒼井優の演技に泣かされっぱなし。彼女は天才だ。ラストのダンスシーンも素晴らしく,感動。今年の邦画では『ゆれる』と並んでお気に入りの作品。
『イルマーレ』…★★
ラストは予想していたオチと良い意味で裏切られ,ハッピーエンドなラブストーリー。キアヌはこういう誠実な役が似合うね。プロットは好感持てたんだけど,サンドラ・ブロックにあまり魅力を感じないので,★ひとつ減らした結果に。
『トンマッコルへようこそ』…★★★★
ファンタジックに描いた珍しい反戦映画。山奥の平和な理想郷を舞台に利益相反する敵国の兵士達が,戦争の道具としてではなく,次第に人間として大切なもの,国を超えた信頼関係を築いていく姿を感動的に描いた作品。素晴らしいのは,最後の戦闘シーンでさえ,どこかファンタジックな画で仕上げてあるところ。戦争なんてものは本当に不毛だという人間の愚かさを再認識させてくれる作品。
『カポーティ』…★★★★★
重厚な演出に彩られた主演のフィリップ・シーモア・ホフマンの演技が絶品。カポーティが自分の執筆欲のために,人格を偽りながらひとつの事件に深く関わっていくうちに,次第に人格が崩壊していく様を丁寧に,丹念に,残酷に描いている。相当にヘビーな仕上がりだが,映画好きにはたまらない鑑賞感。文句なしの五つ星。
『かもめ食堂』…★★★★
ヘルシンキののんびり感とかもめ食堂の雰囲気がたまらなく良い。小林聡美が背筋がピンと伸びた自立した女性を好演。片桐はいりももたいまさこも強烈なスパイスで効いている。鑑賞感がとても良い。女性に人気があるのも納得。
『手紙』…★★★★
邦画には珍しく重厚な作りの作品。犯罪者ではなく,その家族に対する差別がテーマになっているのだが,安易に差別から逃げずに『向き合えって生きていけ』ときっぱり言い切る作り手のメッセージに拍手したい。泣きの演技をさせたら山田孝之は絶品。玉山鉄二がとても頑張っていた。この作品では沢尻エリカも良かった。差別に負けず,幸せな家庭を築いてほしいと祈らずにはいられないラストだった。
『ただ,君を愛してる』…★★★★★
作品としての出来は星二つくらい。途中で不要なシーンやだるいシーンもある。しかし,クライマックスの写真展でのシーンが僕のツボにハマりまくり。もう泣いた,泣いた。一枚の写真の持つ力を存分にスクリーンで表現していた。そこだけのオチにころっとやられてしまった。玉木宏がこんなに演技ができると思ってなかった。そして,宮﨑あおいの演技が最高。可愛い少女から大人の女性へ脱皮する瞬間を演じきっていた。素晴らしい。他人にはお奨めできないけど,僕的には満足度の高い作品。
『虹の女神~Rainbow Song』…★★★★★
『ただ,君を愛してる』と比べれば,こちらは正統派でしっかりした作り。脚本も演出もこちらの方が上。ストーリー自体も引き込まれるものがある。これも僕のツボにハマった作品。文句なしの五つ星。上野樹里がもう抜群にいい。こういう女の子を男は好きになりやすいのに,市川隼人演ずる智也は最後の最後まで自分の気持ちに気付かない。告白できない想いと気付かない本心のすれ違いが切なくて,いい味出している。そして,妹役の蒼井優の存在がとても効いている。こういう演技も出来るのか。本当に彼女は天才だ。またしても,岩井俊二ワールドに魅せられたなあ。
『父親たちの星条旗』…★★★
戦闘シーンは『プライベート・ライアン』とは違ったアプローチで,迫力ある,悲惨さも前面に出した映像になっている。しかし,英雄に仕立て上げられた主人公達の内面の描き方が不十分で感情移入できなかった。やはり戦勝国側から描かれた物語になっていて,日本人には受け入れ難い。ラストシーンで,年老いて臨終の床にある主人公は,息子に硫黄島での戦闘のことは一切語らず,星条旗を立てた後,仲間と海で遊んだ話をする。それがラストシーン。これがイーストウッドの反戦メッセージだと理解したい。
本当は1本ずつ丁寧にレビューしたかった。自分でも残念。